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May 26, 2026

Daily Oregraph: 霧笛とバンシー

 本日の最高気温は11.5度。曇り。

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 5月20日の北海道新聞に掲載された記事によれば、釧路市の霧日数は「1941~50年の年平均が120.0日だったのに対し、2016~25年の年平均は81.0日」だったという。(どうして1951~2015年のデータが記載されていないのかは不明だが)「釧路地方気象台は(中略)20年に観測方法を目視から視程計という機械を使った観測に変更したこともあり、担当者は『以前と比較できず、実際に霧が減ったとは言い切れない』」といっているらしい。

 なるほど同一条件でなければ正確な比較はできないから、さすが専門家は慎重である。よろしい、それなら一貫して目視に頼りつづけてきた素人のぼくが太鼓判を押そうではないか。近年まちがいなく霧日数は激減している。給料をもらっているわけではないから、霧日数を記録してはいないが、この目で確かめたんだから(笑)確かである。

 原因としてはやはり温暖化が挙げられており、霧が減ればさらに夏の気温が上昇するじゃないかという指摘はもっともである。しかしあの地獄の底から響いてくるような忌まわしい霧笛の音を毎日のように聞きながら育ったぼくからすれば、減ったとしても文句をいう筋合いはない。

 さてアイルランドやスコットランド高地の田舎にはバンシー(banshee)なる妖怪がいて、家族のだれかが死にかけていると窓辺で泣き叫ぶ……ということを知ったとき、ぼくがまっさきに連想したのは釧路の霧笛である。

 釧路では2010年に霧笛は廃止されたが、それまでは夜昼かまわずさかんに鳴っていた。廃止された当時の霧笛はごく単調な音であったが、その一代前の霧笛は実に複雑な音色と独特の節回しがあり、ぼくがバンシーだというのはそちらのほうである。今となってはあの音を記憶している市民はごく少数だと思うが、絶望と悲しみと嘆きをいっしょくたにしたような、一切の希望を打ち砕く悲痛な音はとてもこの世のものとは思われず、まさにバンシーの泣き声にちがいなかった。

 もちろんぼくはバンシーの泣き声を聞いたことはないのだが(笑)、昔の釧路の霧笛をアイルランドのお年寄りに聞かせれば、必ずや「おお、これはバンシーだ!」といって、顔をこわばらせるにちがいない。夢疑うべからず。

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Comments

勝手に、釧路のイェイツと呼ばせていただきます!www。

Posted by: 相州蟻鍛 | May 30, 2026 09:06

>相州蟻鍛 さん

 なんと、イエィツですか? 名前はさすがに知っていますが、作品については無知そのものですので、まことにお恥ずかしいかぎりです。

 バンシー→アイルランド→イェイツという流れかと思いますが、ググってみますと、彼の自叙伝には「人々の話から,弟の死の前夜に母と使用人はバンシーが泣いたのを聞いたのを知った」とあるそうです(桃山学院大学学術機関リポジトリ PDF文書-日下隆平著『W. B. イェイツとフォークロア』より)。

 う~む、これもなにかの縁でしょうから、イェイツの作品のひとつも読んでみなくちゃいけませんね。詩は得意じゃありませんから、アイルランド妖精譚・民話集というのがありますので(バンシーも登場します)、いずれ挑戦してみます。

Posted by: 薄氷堂 | May 31, 2026 23:22

旧犬吠埼灯台のエアサイレン式という霧信号が釧路の旧型に近いのかどうかわかりませんが、
YouTubeで聞いてみました(笑)

Posted by: 相州蟻鍛 | June 01, 2026 08:46

>相州蟻鍛 さん

 お教えいただいた犬吠埼灯台の旧霧笛を聴いてみました。「釧路の旧型」の音によく似ているので驚きました。やはり単調なボーという音ではなく、独特の節回しがありますね。

 釧路の旧霧笛はもっと丸みを帯びた音色で、女性的であったと思います。バンシーは女怪ですから、泣き声は釧路型の音のほうに近いでしょう(オリジナルを聴いたことはないのに(笑)勝手なことを……)。

 実は釧路の旧霧笛の音は松竹の映画「挽歌」(1957年)で聞くことができます(残念ながら現在 YouTube では有料)。ただし映画中の霧笛の音はやや小さめで(たぶん調整しているのだと思いますが)、ロケ場所ではもう少しだけ大きく聞こえたはずです。

 わが家はわりと霧笛の音源に近かったので、家に一人でいるときなどは、気がめいることといったらありませんでしたよ。

Posted by: 薄氷堂 | June 01, 2026 20:27

土地が人に働きかけ、人も土地を意味づける、土地に染み込んだ悲しみ、釧路の風土に溶け込んだ霧笛のお話。
悲しみが土地にあるのではなく、人と土地の関係の中で悲しみが立ち現れるとでも申しましょうか。
薄氷堂さまが嫌われる半可臭いことを申し上げました、お許し下さい。
ありがとうございました。

Posted by: 相州蟻鍛 | June 01, 2026 21:25

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