Daily Oregraph: 看看電視
本日の最高気温は8.7度。曇りのち雨。
おやおや、フクジュソウがこんなに増えていた。枯草の上にはクモがちょろちょろ這い回っている。季節は確実に進行しつつあるようだ。
本日はフクジュソウとはなんの関係もないけれど、ふとあることを思い出して吹き出しそうになったので書いてみよう。
1970年代後半だから約半世紀前、月に一度パプアニューギニアからウッドチップを運んでくる専用船があった。本船の乗組員はほとんど香港国籍で、何(Ho)さんという方が通信長だった。当時はまだ電報の時代だったので、無線局を中継して船舶と通信していたのである。
America の A、China の C……などとやっていたのだから(なお America が Africa でも、China が Charlie でも、わかりやすければかまわない)、いかに面倒だったかご想像いただきたい。しかも無線局経由なので返事が来るまでにずいぶん時間もかかる。電子メールを使う今から考えればウソみたいな話である。
さて通信長(通称局長さん)のホーさんはでっぷりと肥えた人で、顔はどことなく財津一郎氏に似ており、その日本語がまことに傑作であった。今でもときどき思い出すのは「見る見るテレビジョン」(笑)。これひとつで「テレビを見よう」という意味にも「テレビを見る」にも、場合によっては「テレビを見た」にも使えるから実に便利である。
最初はなんで「見る見る」と重ねていうのか不思議だったが、たぶん(中国語はよくわからないけれど)「看看電視」を直訳したものではないかと思う。たしかにちょっと変だけれど、意味は十分伝わる。言葉はやかましいことをいわずにまず使ってみるものだ。
ホーさんとは不思議にうまが合って、入港するたびにぼくを部屋に招き入れ、冷蔵庫からよく熟れたパパイヤを出してごちそうしてくれた。ニューギニアのでかいパパイヤをしばらく部屋に放置してから、入港予定日をみはからって冷蔵庫に入れていたらしい。パパイヤは腐る直前が甘くて柔らかくて美味なんだ、というのが彼の見解で、たしかにこいつはべらぼうにうまかった。
ぼくがうまそうにパパイヤを食べるのを、ホーさんはうれしそうにニコニコしながら見ているのだった。彼の「見る見るテレビジョン」式日本語とぼくの「ニーハオ」どまりの中国語ではまともな会話は成立せず、電報文風の英語でやりとりするのが精一杯だったから、どういう生い立ちの人かはとうとうわからずじまいだった。
当時のお年から考えて、もうとっくにお亡くなりになったはずだが、なつかしい人である。










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