Daily Oregraph: 人面樹と遊ぶ
本日の最高気温は12.8度。曇りのち晴れ。
点が三つあれば人の顔に見えることはよくある。こうした錯覚は、いち早く敵を発見しようという古い時代の警戒心の名残りなのかもしれない。
腕の細さからみて栄養不良と思われる衛兵が叫んでいる。
-おい、止まれ。止まらんか!
点が三つどころではない。目も鼻も口も備わっているれっきとした人の顔である。先日東栄小学校校舎跡でみかけたのだが、一瞬だれかが彫刻刀で木に彫り付けたのかと疑ったほどだ。しかしそんなことがあるはずもなく、もちろんすぐに錯覚だと気がついた。
第一位置が低すぎる。無理な姿勢を取って彫らなくてはこうはいくまい。だから自然のいたずらだとわかってはいても、なんだか気になる。
そこで本日ふたたび通りかかった際に、近寄って観察してみた。
ちょっと角度を変えて見ると、なるほど人の手は加わっていない。まったく偶然の産物にすぎないのだが、左目などはいやにリアルで、全体に昔大映の特撮映画で見た「大魔神」によく似ている。
映画で得た知識によれば、大魔神は(特に乙女の)涙に弱い。そこで(ぼくはあいにく乙女ではないが)ポロリと涙をこぼし、
-けっして怪しい者ではございませぬ。どうかお通しくださいませ。
かくして無事帰宅した次第である。
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