Daily Oregraph: サバの思い出
いろんな食べ方があるけれど、ぼくはこいつを醤油・酒・味醂でじっくりと煮たのが好物である。塩分控え目など糞食らえ(笑)、冷蔵庫に入れておけば日持ちもするし、皿に一切れ載せて酒の肴にすればこたえられない。
昔京都でご馳走になったことのある、塩が吹き出て真っ白になった塩鯖も実にうまいものであった。最初に5センチ角ほどの小さな正方形の白いかたまりを見たときは、正体がなんだかわからなかった。恐る恐る口にしてまたビックリ。しょっぱいのなんの、ほとんど塩そのものなのだが、やがてじんわりと旨味が広がってくる。麻薬的な味である。
そうか、これがはるばる鯖街道で運ばれてきたという伝説の塩鯖か、と納得した。5センチというサイズにも合点がいった。京都人がケチなせいではないのである。なるほどこれは10センチ角ではまずい、生死に関わるかも知れない(笑)と思った。
5センチ角一切れで飯が何杯でも食える。血圧を気にする人なら卒倒しそうなぐらい「からい」塩鯖だが、機会があったらぜひまた食べたいものである。さすがに年だから、3センチ角でも文句はいうまい。
そういえば、学生時代はずいぶんサバ缶のお世話になった。スーパーではたしか一缶50円未満で買えたと記憶している。当時一個17円だった(!)マルシンハンバーグ(鯨肉使用)と共に、ぼくの命を支えてくれた恩人の一人(?)である。
英語では mackerel だが、OED によればフランス語由来なるも語源は不明だという。なんだつまらんと思いながら例文を眺めていたら、詩人イェイツの曰く、「サバはほとんどどんな餌にも食いつく」と。先生、海釣りをしていたのだろうか?
そのサバにガツガツと食いついた紅顔の美少年は、憐れむべし、今や頭に塩の吹き出た酔っ払いジジイとなりにけり。
Comments
見事なサバですなあ・・・
実を申せば、子どもの頃はサバが苦手で・・・家ではよく出ていたのですが、なぜか我が母親はサバと言えばサバみそのみで、私の子どもの頃の味覚ではどうにも受け付けられませんでした。
それが関西に来て・・・というよりは母親から離れて初めてサバの塩焼きなるものを食べて、一気にサバが好きになり、その余勢をかって今ではサバみそも好物の一つ。
そうそう、明日の朝もサバの塩焼きを食べようっと・・・
Posted by: 三友亭主人 | July 02, 2020 22:03
>三友亭さん
サバの塩焼きもうまいですよね。朝から召し上がるとは贅沢の極みではありませんか。
鯖街道のサバは、冷蔵輸送手段のなかった昔のことですから、徹底的に塩をまぶしたのだろうと思います。腐りやすい魚ですからね。しかしあれだけ塩をすれば、京都はおろか、滋賀・奈良・大阪方面まで運んでも腐らなかったんじゃないかと思います。
サバの味噌煮もなかなか人気がありますけど、もともと独特の臭みがありますから、ちょっと濃いめの味つけのほうがいいんじゃないでしょうか。
味噌煮のインド版がサバカレーで、ぼくも何度か船でご馳走になりましたが、やはり薄味のカレーだと、ちょっと生臭さが残ります。しかし逆にいえば、カレーに対抗しうる個性を持っているんだから、たいしたものです。
濃い味つけが合うサバは、高血圧患者向けの魚ではないのかも知れませんね。
Posted by: 薄氷堂 | July 02, 2020 23:13