Daily Oregraph: くすのき物語
4月11日に当社大阪通信員が撮影した十三公園の楠。最近ぼくは低調ゆえ、写真を送ってくれるのは大いに助かる。しかしいくら写真を提供してくれても、無給であることには変わりない。すべてアベノミクスのせいである(笑)。
たしかに堂々たる楠である。かたちもいいし、生命力に溢れている。一方の通信員君は枯れかかっている。緑の葉を茂らせる樹木と枯れゆく爺さん(失礼)との間に吹く風は、さわやかにはちがいないけれど、どことなくもの悲しくもある。
-ねえ、こんなに天気がいいのに、どうして悲しそうな顔をしてるの?
-う~む。それはね、君も大人になればきっとわかるよ。
ここで通信員のお爺さんは、かつて新聞でみかけた佛教大学の広告コピーを思い出すのであった。
人間は、
いつか
死ぬ。
-ほんとだよなあ。それに、この楠だって、いつかは枯れるのだ。
木は
いつか
枯れる
-だとすれば、
悪は
いつか
滅びる
ということになるな。いや、そうならねば困る。
-お爺さん、なにブツブツ独り言をいってるのさ。はい、これ。
そういって少年は、大阪のうるわしい習慣に従って、飴玉をひとつ差し出した。お爺さんは礼をいって、素直にそれを受け取った。賢そうな子だから、いずれあそこに見える北野高校にでも進学するのだろう。
お爺さんの相手に飽きた少年は、教会のほうへ駆けていった。その後ろ姿を見送りながら飴玉をほおばったお爺さんは、思わず口をすぼめた。酸っぱいレモンの味がしたのである。
-ああ、おれはこの味をすっかり忘れていた……
Comments
>木は いつか 枯れる
でも、多くの場合は私たちが死ぬ、ずっとあと。
問題は
>悪は いつか 滅びる
目下のところの最大の悪が自分の年齢に近く、ひょっとしたら自分よりも先に生き延びる可能性があること・・・
Posted by: 三友亭主人 | April 16, 2019 06:28
>三友亭さん
たしかにこの世に人のあるかぎり、悪人はのさばりつづけるでしょうね。
いくらなんでも、数の上では悪人のほうが多いとは考えにくいのですが、問題は善人(とはいわなくても、ふつうの人)がお人好しすぎることです(だから善人なのか……(笑))。
その「どんな目に会おうともすべてに感謝して、なにも疑おうとしない」お人好しが災いして、結果的に悪人に荷担し、大多数を不幸にしてしまうということに気づいて欲しいものです。
どうしたらいいのか、久延彦さんのお知恵を拝借したいところですね。
Posted by: 薄氷堂 | April 16, 2019 11:01