Daily Oregraph: おじさんの社会科見学
-おお、暑いねえ!
-天気よすぎるじゃないか。
たまにはドライブをしようと、T君とともにやって来たのは塘路湖。釧路市内からは、直線距離にして20数キロに過ぎないのだが、気温が全然ちがう。4~5度は高いんじゃないかと思う。
この湖は海跡湖だから、かつては海だったのである。たぶんいわゆる縄文海進と同時期だったんじゃないかと思うが、数十メートル陸地が後退したというレベルの話ではない。人類が細々と暮していた大昔にも、恐ろしく気温の高い時期があったのだ。
塘路湖のさらに北、シラルトロ湖も海跡湖。気温の低下とともに海面が後退し、あとに取り残されたのである。上がれば下がり、下がれば上がるのは自然の理、温暖化などといってむやみに恐れる必要はないと思う。
てなことを考えたのはいいが、空は快晴、気温は体感28度とくれば、
-ビールが飲みてえなあ!
と意見が一致した。もちろん二人ともじっと我慢、我慢。
さて本日の目的はここ、標茶町資料館(正確には今年の6月まで)である。この印象的な建物は、北海道集治監釧路分監の本館が移築されたもの。内部に各種資料が展示され、ぼくも何度か訪れたことがある。
ところが関係者以外立入禁止となっており、よくよく見ると「耐震工事中」だという。あきらめて戻りかけたところ、声をかけたくださった方に、「収蔵品なら隣の建物で見られますよ」と教えていただいた。
工事中一時的に収蔵品を仮置きしているのかと思ったら、そうではなく、
今年新しくできた「標茶町博物館ニタイ・ト」に、収蔵品すべてが移されていたのである。
入館料大人わずか210円也。中へ入ると、まだ新しい木の香が漂う、ゆったりとした快適なスペースであった。
せっかくだから展示物をゆっくり拝見し、
東釧路III式土器なるものにいたく感心した。これ、ビューティフルだよ。わが家の裏庭からこんなのが出土したら、天理参考館あたりに売り込むのだが……(笑)
この博物館の目玉は民間の昆虫学者(といっていいと思う)飯島一雄さんの昆虫標本コレクションである。
飯島さんの仕事机が再現され、壁にかかっている麦わら帽子にお人柄がしのばれて、とてもいい感じだ。このところTVでろくでもない連中のニュースばかり見せられていたから、無欲恬淡としてコツコツ勉強をつづけた民間篤学の士の仕事机には感銘を受けた。
まじめに博物館を見学したぼくたちは、このあと茅沼温泉へ行ってひとっ風呂浴びた。昼間の温泉は効く。ふたりともボーッとして、今日はもうなにをする気にもなれず、釧路に戻ってきたというおそまつ。
ああ、飯島さんの真似はできそうにない。情けないことである。あなたにもぜひこの博物館を訪れ、彼の仕事机を見て、おのれの不勉強ぶりを反省するようおすすめしたい。
Comments
>おのれの不勉強ぶりを反省するよう
お勧めくださりありがとうございます。でも、己の不勉強さは・・・もう、それを感じ始めてから何年になりますことやらと情けない気持ちにもなるんでしょうがねえ・・・
Posted by: 三友亭主人 | August 21, 2018 22:46
>三友亭さん
なにをおっしゃいますか。あと一世紀たったら、天理参考館に三友亭さんの勉強机が展示されているでありましょう(机の上には空の酒壜が……?)。
なお飯島さんは、一生独学で研究をおつづけになったそうです。まったく頭が下がります。
民間にはときどきこういうえらい方がいるというのに、わが国の政治家にはろくでもない人物が多いのだから情けないですね。
第一いくら学歴が自慢でも、東大-ハーバード-ハゲ~! じゃどうしようもない(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | August 21, 2018 23:14