Kyotorogy 2014: 十三徘徊 (1)
2014年10月6日、河原町から阪急の特急に乗って十三駅に到着。この駅で下車するのは初めてである。
西改札口を出て、まずは駅前をうろうろ歩く。
ここがかの有名なションベン横丁だとは知ったのは一時間後のことである。
この一帯のゴチャゴチャ感がたまらない。年がら年中はごめんだが、人間たまにはコッテリしたものを食いたくなるのと一緒である。
駅からあまり離れて道に迷ってはいけないから、同じ通りを何度もグルグル回り、
結局ふたたび駅の真ん前に戻って、「なにわ」という喫茶店に入り、約束した17時まで時間をつぶすことにした。
おお、純然たる昭和風の喫茶店ではないか。かなりの老舗らしいが、この時間客はほかにたった一人しかいなかった。
飾り気のないカップ・アンド・ソーサーがまたなつかしい。
壁に貼られたカレンダーには大阪府警のおねえさんがニッコリ。旅先の喫茶店の隅っこで一人コーヒーを啜っていると、なんだか自分が流れ者の指名手配犯であるような気がしてくる。
まさか北海道から大阪の十三まで、風に吹かれて流れて来ようとは夢にも思わなかった。
-なあ、あんた、よくよく事情があったんやろけど、その足で自首したほうがええわ。そのほうが身のためやで。
おねえさんの忠告にしたがって自首するまでもなく、それから間もなく、ぼくの身柄は十三駅前で淀川署の刑事、いや友人のI君に確保されたのであった。I君との再会は35年ぶりである。
-まさかおまえに手錠をかけるようなことになるとはなあ……
-なあに、君の手柄になるんなら本望だよ。
とまあ、これが映画ならなかなか感動的なシーンになるはずなのだが、男同士というのはごくあっさりしたもので、
-やあ、しばらくだなあ。
-すまん、待たせたな。じゃあ、行こうか。
途中買い物をすませて、I君は美女多数在籍のエステには目もくれず、スタスタと歩いてゆく。
彼の部屋は意外な場所にあった。十三も十三、駅から徒歩数分の路地裏である。こんなところにアパートがあろうとは想像もしなかった。
その晩 I君は駅の近くの店で鶏の刺身をごちそうしてくれた。
さんざん酔っ払った上、部屋でまた飲み直し、夜中過ぎまで硬軟両様の話が尽きなかった。35年も会わずにいれば、いくらでも話すことはあるものだ。
明日は休みだから、朝の内に用を足してから、日本橋までつきあってやるよ、という次第で次回へつづく。
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Comments
十三ですか・・・懐かしいなあ。
大学を出てすぐの職場が、十三からは一駅二駅の場所にあって・・・仕事に着いて初めて飲みに行ったのが十三でした。
・・・とにかく、安く飲める街だって印象でした。
子供の頃「てなもんや三度笠」で知られた藤田まことの「十三のねえちゃん」なんて歌でもこの町を知ってましたがね。
Posted by: 三友亭主人 | November 23, 2014 23:11
>三友亭さん
十三は歩くのが楽しいところでしたよ。京都からは特急だと一時間もかかりませんが、大阪はまるで別の町ですね。
> 藤田まことの「十三のねえちゃん」なんて歌
知りまへんがな(笑)。世代の断絶?
Posted by: 薄氷堂 | November 24, 2014 08:33