Daily Oregraph: ウィスキーのはかどる話

遅くなってしまったが、ノートを読み終えたお祝いのケーキ。どうも妙なクセがついてしまったようである(笑)。
さて金持ちの好男子エドガー・リントンの求婚に応じたものの、心の底ではヒースクリフを愛するキャシーは、自分を無理にも納得させるため、使用人ネリーの賛意を求めようとする。しかしキャシーをよく知るネリーは、"Why do you love him (=Edgar), Miss Cathy?" と問答式に問いつめる。
この場面は法廷を思わせるきびしさにあふれ、ネリーは「それはようございました」というようなおべんちゃらはいわず、キャシーの答をひとつひとつ徹底的に論駁する。なんとなく好きなの、という一切のあいまいさやごまかしを赦さないのである。エミリ・ブロンテの性格の一端がうかがわれるような気がする。
やがて真情を吐露したキャシーのセリフがすごい。彼女が実はヒースクリフを愛しているのは、ハンサムだからではなく「彼は私よりも私(he's more myself than I am)」だからなのだという。ヒースクリフと私の魂はひとつなの、というのである。もし舞台で演じたら、観るものみな圧倒されて、場内シーンと静まりかえるところだろう。
それならヒースクリフといっしょになればいいのに、という当然の疑問は、文庫本をお買い求めの上(笑)解決していただきたい。ちょっと手前勝手ながら、キャシーにはキャシーの言い分もあるのである。
さてこういう究極の恋愛が地上で成就するとは、ぼくには到底想像もつかない。ヒースクリフとキャシーのような男女が、いわゆる幸福な家庭を築いてめでたしめでたしという結末などありえないことは、物語の最初から予感されるのである。
この世では結ばれぬふたりが天国でいっしょになるという少女マンガ風の空想もまた、この小説にはそぐわない。このふたりはキリスト教の天国には入れてもらえそうにないから、キャシーの幽霊がそうであったように、荒涼たるヒースを永遠にさまようしかないにちがいない。19世紀半ばに牧師の娘がこういう小説を書いたというのは、ぼくには驚きである。
それにしてもいい年をしたおじさんがこの空前絶後の大恋愛小説を読むとなれば、とてもシラフではいられない(笑)。ウィスキーのはかどることといったら……
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Comments
>ノートを読み終えたお祝いのケーキ
本当にまあ奇妙な御習慣。でも、脳味噌を酷使した後の甘いものはおいしいものでしょうね。
私などは最近あまり脳味噌を使わないものだから・・・甘いものあちょいと・・・
Posted by: 三友亭主人 | April 13, 2013 07:39
>三友亭さん
お勉強するときはアルコール、一段落したら甘いもの。ちがいのわかる男はこうでなくちゃ(笑)。
三友亭さんが甘いものを召し上がらずアルコール一筋なのは、ひと休みせずに学問をおつづけになっているからにちがいありません……とまあ、ここまでよいしょすれば、一杯おごってやろうという気になるでしょう?
Posted by: 薄氷堂 | April 13, 2013 08:54