Daily Oregraph: イヌホオズキ事件
マイナーであることの恍惚と不安……いや取材費の欠乏と不安こそ当ブログの泣きどころなのであるが、
-ばかやろう、金がなけりゃ歩くんだよ。どこぞのお坊ちゃまじゃあるまいし、記者は足で稼ぐものだ。
というのが鬼の編集長の口癖である。
だから京都の紅葉を取材するなど夢のまた夢、ましてや戦場カメラマンになるために(笑)アフガンへ出向くなど、十万光年待っても実現しっこない。靴底をすり減らして近所をうろつき回るのが関の山なのである。
-編集長、スクープです!
-ほんとかよ?
-ごらんください。社の近くにあるイヌホオズキなんですけど……
-おまえ、バカに磨きがかかってきたな。そんなマイナーな記事が受けるとでも思っているのか。まったく、イヌホオズキだと!?
-まあ、そうおっしゃらず、写真をごらんなさい。どちらも同じ個体なんですけど、今日撮った写真を見ると、実がひとつ減って、そのタネらしきものが葉っぱの上に残っています。事件ですよ、これは。
-おまえがもいだんじゃないのか?
-ご冗談を! いいですか、話はここからおもしろくなるのです。
なぜ実がひとつ失われたか、みなさまはどう推理されるだろうか。
(1) 自然落下説……ノー。実は完熟していないし、かりに重力によって落下したとすれば、コロコロ転がって地面に到達したはずだから、タネだけ葉の上に残っているわけがない。
(2) 動物によって食べられた説……ノー。犬も食わぬイヌホオズキを、たとえばカラスなどの鳥が食べるとは考えにくい。かりにそうだとしても、タネが3個だけ残るというのは不自然である。
-ふん、おまえはどう考えるんだ?
-これは人のしわざにちがいありません。実を一粒もいでつまんでみたら、ぐしゃりとつぶれた拍子にタネが三つ飛び出して葉の上に残ったのでしょう。彼あるいは彼女はしばらく観察したあとで、実をどこかに捨てたのだと思います。
-で、犯人の目星は?
-おやおや、犯人とはまたおおげさですね。まあ、実の扱い方から見て、たぶん博物学者ではないでしょう。大胆な推理を申し上げますと、薄氷堂ブログの読者でしょうね。西港にイヌホオズキがあると知って、犯行に及んだわけです。
-まさか!
いやいや、案外その可能性少なからず、心当たりがおありの方は正直に名乗り出ていただきたいと思う。ご一緒に観察しようではありませんか(笑)。
この分布図(注:釧路港要覧より作成)はきわめて不完全なものだ。調査が不徹底だからである。
さてここ数日のうちに、さらに実がいくつかもがれるんじゃないかと期待したいところだけれど……そんな物好きが釧路市内にはたして何人いるものだろうか(笑)。
The comments to this entry are closed.
Comments
犯人は私じゃあありませんよ。
なんてたって遠すぎる。移動費が高くつきすぎる・・・
Posted by: 三友亭主人 | November 09, 2011 22:46
>三友亭さん
> 犯人は私じゃあありませんよ。
まあ、ふつう犯人はそういいはるものです(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | November 09, 2011 23:04