薄氷堂 Smoking Room

　思い切って取材を敢行した。といっても海外へ出かけるほどのヒマも金もないから、釧路駅まで行ってせめて旅行気分にひたろうという、涙ぐましき低予算ロケである。

　しかしこれがなかなか楽しめたので、まさに最低費用で最大幸福(笑)。その成果を３回に分けて、ノンキなレポートを掲載したい。


　まずは車を港文館裏に停めて、幣舞橋へ。橋の下の氷はこんなぐあい。気温は－6度だが、風がないから快適に歩くことができた。


　橋を渡ると……おや、案外人出があるようだ。いや、冗談ではなく、画面を拡大してチェックしたところ、歩行者を九人まで確認できたから、休日の北大通にしては少なくないのである。


　やはり歩くにかぎる。ふだん見過ごしているものを発見できるのだ。

　道路標識の片側に児童絵画らしきものが見える。かなりのサイズだから、原画を拡大したのだろう。おもしろい試みだが、意図のほどは測りかねる。


　取り壊されたビルの跡地が駐車場になり、偶然芸術の現れた場所。大通りからこういう景色がむき出しになっているところは、情けないといえばいえるけれど、世の中にはこういうのをおもしろがる変人もいるのである。


　これも上に同じ。こういう壁面を意図的に作ろうとするのは困難なのだから、偶然芸術の資格十分である。


　十字街にさしかかる。ここの標高が1.7メートルとは新発見であった。なるほど津波に襲われればひとたまりもあるまい。

　ふだんから町歩きをしていればいざというときに身を守れる、という好例である。


　信号を渡れば、釧路市民にはおなじみの景色。ああ、マチへ来たという実感が得られる、いまとなっては貴重な一角である。このへんから駅にかけて、人影はほとんど見あたらなかった。


　残念ながらその後偶然芸術には出くわさぬまま釧路駅に到着……といっても、実はこの写真は帰りがけに撮った一枚である。釧路駅編は明日掲載する予定。

　ついでながら……ちょっと見にくいかもしれないけれど、画面右端に一人のおじさんが写っている。このおじさん、ぼくが駅に到着したときはすっくと立って、朗々たる声を張り上げて古い歌を歌っていたのにはビックリ。その昔は新宿駅のフォークゲリラだったのかもしれない(笑)。

(Nikon D200 + Ai 35mm F2S)