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January 22, 2011

Daily Oregraph: 2011-01-22 弥生中学校~さいはての停留所

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 弥生中学校前の坂道を登りながら、こう考えた。

 地道に書けば目立たない。流行(はやり)に乗れば流される。Easy を通せば退屈だ。とかくに記事は書きにくい。

 書きにくさが高じると、田舎を出て旅をしたくなる。どこへ旅をしても書きにくいと悟った時、記事が生まれて、画が撮れる。

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 そう悟ったつもりになったところで、とても
霊台方寸のカメラ(≒魂宿る心というカメラ)に澆季溷濁(ぎょうきこんだく≒人情乱れて濁った世)の俗界を清くうららかに収め得ることなどできそうにないのである。

 しかしそんなことにはお構いなしに、澄み切った冬の青空の下、閉校になった弥生中学校の校舎はひっそりと眠っていた。

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 おや、体育館に真新しいアルミのドアができていた。「監視カメラ作動中」と標示されているドアの向こうには、PCB なる物騒なものが保管されているらしい。なるほどこれが澆季溷濁というやつらしい。

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 監視カメラの前にいつまでも身をさらすのはご免だから、いつものように校舎の脇を通って浜へ降りようとしたら、道がついていない。

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 やむをえず、いったん学校前の道路に出て、校舎裏をめざす。写真左上には、釧路埼灯台が見える。

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 ああ、ここだ、ここだ。やはり道はついていないけれど、雪はさほど深くないから、時々くるぶしのあたりまで埋まりながらも歩くことができた。

 写真に見える家は廃屋である。その右の建物は完全に崩壊している。木造のアッシャー家である。この眺めはちょっと気に入っている。

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 ここを下っていくと、浜への道に出る。足跡はあるものの、ほとんど人通りのないことがわかる。用事もないのにここを通るような人物は純然たる物好きにちがいない。

 このあたりは京都西陣の路地に匹敵する裏道ともいうべく、釧路の達人と自称してもいいんじゃないかと、ちょっと鼻が高い。

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 通りに出てアッシャー家を見上げる。つい数年前までは原型をとどめていたはずの二階が完全に潰れている。

 この建物を 1998年の8月に撮影した写真が残っているのでごらんいただこう。

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 窓がコンパネでふさがれているから、このときすでに廃屋だったのだろう。

 ぼくは嵐が丘とアッシャー家を足して2で割った孤高の建物として、ここが気に入っていたのである(どういいう趣味なんだ(笑))。

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 いつものコースに従って浜をめざす。毎度申し上げるように、天気がいいとデジカメの液晶モニタはほとんど見えない。カンに頼らざるをえないのだから、本当に困る。早く液晶ファインダを標準で内蔵装備してほしいものだ。

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 臨港鉄道沿いの道から太平洋を定点撮影。

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 今日の目的地である弁天ヶ浜停留所に到着。ぼくが勝手に「さいはての停留所」と呼んでいる場所である。

 踏切の手前には啄木の歌碑がある。啄木の行動範囲を考えれば、当然このあたりも歩いているはずだが、現在では浜の景色は大きく変わってしまった。当時の面影をしのぼうとすれば、もう少し東の知人(シリト、あるいはシレト)の浜まで行かなければならない。

 釧路を訪れるみなさまには、もし時間がゆるせば、ぜひこの停留所から知人の浜まで歩くことをおすすめしたい。足を伸ばすだけの価値があること請け合いである。ガイドがご希望ならご一報あれ。

(RICOH CX2 & Epson CP-500)

【1月23日追記】

 弁天ヶ浜バス停近くの踏切手前にある啄木歌碑の写真を追加しておく。

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(2000-09-13 撮影。Nikon New FM2 + AF 50mm F1.4D)

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Comments

いやあ~実に枯れに枯れきった道ですね
・・・う~ん、「侘び」といったらよいか「寂び」といったらよいか・・・見ているものの気持ちをいったんは陰鬱たるところに運んでいって、その果てに見えてくる知人海岸において一気に解放させる・・・・

そしてこの冷え冷えとした光景の中から温かい我が家に入り、かざすストーブの火が何とも言えないものでしょうね。なにかしら温かい「飲み物」があてばもっといいのだろうけれど・・・・

Posted by: 三友亭主人 | January 23, 2011 07:48

>三友亭さん

 さびれた道を枯れたおじさんが歩く……これはもう一幅の絵ですね(?)。

 さて飲み物ですが、家の中は暖かいので、意外にもオンザロックだったりします(笑)。

Posted by: 薄氷堂 | January 23, 2011 18:01

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