Daily Oregraph: 雪中泡盛
せっかく道路から雪が消えたというのに、降ったよ。降りやがった。しかも、どっさり。たっぷり水分を含んだ重い雪である。
-やあ、降りましたねえ。親分のいったとおりだ。
-春先はいつもこうだ。おれもだてに年を取っちゃいねえよ。
親分と八公、まだ三月なのに汗をかきながら、せっせと雪かきにはげんだことは申し上げるまでもない。しかしまるで楽しみがないわけではなく……
といったって、「旦那」となまめかしく婀娜な声がしたわけじゃないけれど、雪中にきらりと光ったのは、
-おっと、こいつは……?
-スコップ屋の旦那からいただいた泡盛よ。琉球の風で雪を追い払おうという趣向さ。
さすがは親分、だてに年を取っちゃいない。馬の鼻面には人参、八公を釣るにはアルコールと心得ている。八のやつ、猛然とスコップをふるいはじめたから、まずは作戦成功というところだ。
-しかしなあ、八よ、おれも焼きが回ったらしい。節々が痛くてかなわねえよ。
親分、嘆き給うな。泡盛が待っていますぜ。
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