May 13, 2022

Daily Oregraph: 本の重さに……

 本日の最高気温は11.8度。曇り時々雨。

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 これは一昨日近所で撮ったものだが、黄色い花はたぶんレンギョウだろう。

 先日日本文学の歴史(角川書店版)全12巻を読み終えたのだが、車で通りを流しながら商店の看板を眺めた程度にすぎないので、どこまで頭に入ったやら。最終巻は昭和43年発行だから、なんと半世紀以上も昔、高橋和巳の名前はちらりと登場するだけである。ほんとに time flies だ!

 読むべきなのに読んでいない本の多さに押しつぶされそうな気がする。日本文学に限っても、その重みでペチャンコにつぶされるんだから、さらに外国文学が加わればどうなるのか、考えるだけで恐ろしい。

 どうせ今からじゃ間に合わないし、気分転換するために P. G. ウッドハウスの『ウースター家の掟(The Code of the Woosters)』を読むことにした。ウッドハウスの小説では、以前『ピカデリ-・ジム(Piccadilly Jim)』というのを読み、腹を抱えて笑った記憶がある。しかしウッドハウスは口語・俗語を駆使しているから、案外手ごわいのである。辞書を引く手間がかかるので、笑うのも楽じゃない(笑)。

 これからどうするかは、ウースター家のあとで考えることにしたい。

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February 10, 2022

Daily Oregraph: 裏庭画報 冬の笹刈り

 本日の最高気温は-0.8度。晴れ。

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 夏の間は雑草にはばまれて手の届かない場所にあるササを刈った。これで全部ではないが、見た目はかなりスッキリした。

 ササがはびこりはじめたのは四五年前からだと記憶している。こいつは恐るべき繁殖力の持主だし、手で引っぱったってビクともしない。鎌で刈っても根が残るから、根絶するのはむずかしい。まったく困ったやつである。

 さてかなり読み進んだ『二都物語』だが、素人目にもいつもと筆致がちがうという印象を受けるのもあたりまえで、フランス革命という血なまぐさい事件を扱っているからなのであった。

 過酷な圧政が革命を招いたのは当然といえるが、革命後の混乱の最中には、革命派の手によって道理に合わぬ残虐行為が行われたこともまた事実である。こういう気の重くなるような事件が背景だから、まともな神経の持主ならとても気楽な文章を書くわけにはいくまいし、読み手もまたスラスラと読み流すことはできず、つっかえつっかえしながらページをめくることになるわけだ(実力不足といわれれば否定はできないが……)。

 ついでにどうでもいいことを一つだけ。

 例の悪名高いギロチンだが、本書の巻末注によれば、フランス革命期に新発明されたものではなく、すでに中世後期にはスコットランドで同様のものが使用されていた。だからこの装置の名前のもととなった(英語読みで)ギロチン博士(DrJ.I. Guillotin)は発明者ではなく、1789年に苦痛のない処刑具として使用することを提案し、それが1791年に採用されたのである。

 フランスで使用された最初のギロチンはドイツ人のシュミット(Schmidt)が製作し、1792年に政治犯ではなくある追い剥ぎ強盗の処刑に初めて使われた。なおギロチン博士自身がこの装置で処刑されたという俗説は作り話で、彼は76歳のときベッドで息を引き取った。

 なおルイ16世(Louis XVI)は1793年1月21日、マリー・アントワネット(Marie Antoinette)は同年10月18日にギロチンで処刑された。

 こういう陰惨な話題を取り上げるつもりはなかったのだが、昼間の笹刈りが多少影響しているのかも知れない。

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January 15, 2022

Daily Oregraph: またしても19世紀

 本日の最高気温は4.4度。晴れ。一日中暖かかった。

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 こんなしょうもない写真を撮るようでは焼きが回った……と笑うのは素人の浅はかさで(笑)、ものもいいよう、何気ない日常風景を切り取ったわけ。

 さて『ウォールデン』の最終章より……

  愛よりも、金よりも、名よりも、真実を我に与えよ。

 今どき顔を赤らめずにこんなセリフをいう人はいないと思うが、ソローは大まじめである。金や名はともかく、愛もいらないというのは、ソローが群れない人つまり徹底した個人主義者だからだろう。たとえ思想的に近い人々であっても、彼はつきあいはしても一切の組織には属さなかった……というよりそれは性格的に無理だったにちがいない。

 たとえ相手が国家や法律だとしても、悪しき法や制度には黙って従わないと彼は明言している。自分が従うものはより高い次元の法なのだというのである。つまり宗教でいえば、教会という制度にではなく神にのみ従うわけだ。だから千万人といえども吾往かんというやつで、同調圧力には絶対に屈しない。彼の『市民的不服従(Civil Disobedience)』はのちにガンジーやキング牧師などにも大きな影響を与えたし、非暴力とはいえ権力側からすれば十分に危険思想だろうね。

 たとえほんの数年にすぎなくとも、この風変りな人物が湖畔の粗末な小屋に住んで粗衣粗食に甘んじたことを立派だと評価する人もいるだろうし、その一方で好きで貧乏しているわけでもなければ高等教育を受ける機会にも恵まれなかった人々にとっては、所詮はインテリの気まぐれな「実験」じゃないかと苦々しく映ったかもしれない。高邁な理想を並べ立てられて一歩退く人もいるだろう。

 しかし繰り返しになるけれど、『ウォールデン』の自然描写は見事というほかなく、読者の思想的立場のいかんを問わず、一読の価値はあると思う。

 税金の使い途に異議を唱え、人頭税の支払いを拒否して一晩投獄された彼が、コロナ禍によって失職し税負担力ゼロになった人々からも(!)容赦なく取り立てる消費税にどんな反応を示すか想像してみたくもなるけれど、残り時間の少ないぼくはさっそく次へ進まなければならない。

 ふたたびディケンズに戻って『二都物語(A Tale of Two Cities)』を読むことにする。やれやれ、またしても19世紀である。

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January 01, 2022

Daily Oregraph: 元日の言い訳

 本日の最高気温は-4.8度。晴れ。

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 この年になると元日だからといって特別な思いを感じることもないけれど、昼間からおおっぴらに酒を飲めるのはうれしいことだ。

 -なあんだ、たった一合じゃないか。

 -いや、おれはふだん日本酒を飲まないからね、これでも正月に敬意を表しているのさ。

 さてソローはウォールデン湖(または池)の水深を冬期間に実測している。凍結した湖面に穴を開けて測ったのである。測量術を心得ていたらしく、写真に見える地図を作成しているから、その緻密な仕事ぶりには驚くほかない。

 -へえ、とても隠者の仕事とは思えないね。

 -そうなんだよ。1846年といえばソローは29歳だからまだまだ血気盛んな頃だし、東洋風の白髪の隠者と同じにしちゃいけない。ふつう隠者が池の測深なんてするものか。

 ときどき混じるお説教調にはちょっと閉口するけれど、自然観察の正確かつ細やかな描写には舌を巻くものがあり、それだけでも『ウォールデン』を読む価値は十分にあると思う。すばらしい。

 ……と、えらそうにほめているくせに(笑)まだ読み終えていないのは、ところどころわかりにくい文章が待ち構えているからである。ときどき神吉先生の翻訳を拝見すると、頭が痛くなるような日本文も混じっているから、ははあ先生も苦心されたんだなとわかる。まことに失礼ながら、「先生、それちゃうやんけ」と申し上げたい部分もまったくないわけではない。

 名のある先生が時間をかけて翻訳された文章を、凡才がいいかげんに読み流しては失礼にあたる。一合の酒をチビチビ飲むように少しずつ読むにはわけがあるのだ……と言い訳しておこう。

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December 11, 2021

Daily Oregraph: 枯れた生活

 本日の最高気温は4.4度。晴れ。

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 万物が枯れてしまった……わけではなく、背丈こそ伸びてはいないけれど、畑の表面にはまだ雑草が青々と生えている。しぶとい連中である。

 さて『ウォールデン』を少しずつ読み進めているが、作者は奇人というより相当の変り者といっていいだろう。実にすがすがしい人柄なのは確かだけれど、金もいらねば邸宅もいらんという主義だから、本など書かずに湖畔でひっそりと暮していればともかく、朗々たる声で自説を発表するからには、なにかと世間と衝突を起こしそうでもある(そうだとしても、決してへこたれそうにないところはえらい)。

 同じく狭い小屋に住んだとはいえ、わが鴨長明先生とは大ちがいで厭世主義とはまったく縁がなく、自ら釘を打ってさっさと小屋を建ててしまうソローは体力に恵まれた行動派である。しかしだれもが森の生活をマネできるというわけもなければ、人生いろいろなんだからマネする必要もなし、彼の独特の主張には魅力を感じつつも、同時にいささか反発を抱く人がいてもおかしくはないと思う。

 なお神吉三郎先生の丁寧な翻訳を無料の青空文庫で読めるから、興味をお持ちの方はお読みになってはいかがだろうか。枯れた生活を送る爺婆がちょっぴり若さを取り戻すにはいい作品だと思う。

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December 05, 2021

Daily Oregraph: 冬本番

 本日の最高気温は3.2度。晴れ。

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 港町岸壁のあたりを少しだけ歩いてきた。

 風はそう強くはなかったが、ひどく冷たかった。水鳥たちがノンキそうにプカプカ浮んでいたけれど、鈍感といおうかなんといおうか、この連中はまるで寒さを感じないらしい。

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 もう昼も近いというのに水たまりに張った氷はまだ融けていない。いよいよ冬本番である。

 『カースタブリッジ』読了。本書のイントロダクションは大いに参考になった。考えようによっては、これもリモート授業の一種といえるかも知れない。ただし授業料を納めていないから、いくつか教えていただきたいところを先生に質問できないところがつらい。だから学校ではちゃんと勉強しておかなくちゃいけなかったのだ。

 うんと乱暴にいえば、この作品は性格がもたらす深刻な悲劇であって、シェイクスピアの悲劇と同様に、思わず涙がポロポロこぼれるような話ではない。ドライアイの治療薬としては、先日読んだ『荒涼館』のほうが効果的だろう(鬼の目にも涙……という場面がいくつもある)。

 しかし劣等生には長々と感想を述べる資格もなければ時間もない。すぐ次の作品に取りかかって、本棚にくすぶっている本を一冊でも多く減らさねばならないのである。

 お次は昔四分の一ほど読んで放り投げたソローの『ウォールデン(Walden)』に取りかかる予定である。これまたうんと乱暴にいえば、アメリカ版の合理的『方丈記』みたいなものだろうか(?)。まあ、コロナによる冬ごもりにはぴったりかも知れない。

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December 02, 2021

Daily Oregraph: 奇習の話

 本日の最高気温は5.6度。晴れ。昨日に引き続き風が強かった。

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 これは強風の吹き荒れた昨日、二階の窓越しに撮った太平洋。みごとに時化ている。雪にならなかったのは幸いである。

 The Mayor of Casterbridge は明日本文を読み終える予定。翻訳によって『キャスタブリッジの市長』や『カスターブリッジの町長』などとされているが、英国風に発音すると「カースタブリッジ」が最も近いと思う。小さい町だから町長でいいかも知れない。傑作だからぜひお読みになることをお薦めしたい。

 先日は本書からファーミティという小麦粥をご紹介したが、今回はスキミントン・ライド(skimmington-ride)という英国の田舎の奇習について、ちょっとだけ。

 たとえば亭主をないがしろにする悪妻の所行が目に余るとしよう。近隣の住民がそれをこらしめるため、というより笑いものにするために、わら人形に本人をすぐに特定できるような衣装を着せた亭主と女房の似姿を作ってロバなどに乗せると、行列を作ってそいつを引き回すのである。

 手近な道具や楽器をジャンジャン・ブーブーとやかましく鳴らしながら、行列は通りを練り歩く……というから、一種のリンチまたは村八分に近く、実に陰湿かつ残酷なものである。本書の注によれば、地方によっては loo-belling とか riding the stang ともいうらしく、さすがに1882年には法律で禁じられたけれど、1917年に一度行われたという記録があり、なんと1960年代にも似たようなことがあったらしい。

 歴史入門書には書かれていないからまったく知らなかったし、人間がいやになるような話だから、ちょっとショックを受けた。しかしこういうお上品な人々が顔をしかめそうなことを正面から書くところはさすがハーディだと思う。

 さて本文を読み終えてもイントロダクションが控えている。本書のそれはなんと約50頁(!)もある。そんなに長い前説を読んだらゲンナリすることまちがいなしだから(笑)、先日も「けっして先に読むな」と申し上げたのである。

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November 19, 2021

Daily Oregraph: 粥に酔う話

 本日の最高気温は11.0度。曇りのち雨。

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 今年最後と思って裏庭に残った落葉を片づけ、ついでに笹を少し刈った。大きなポリ袋2つに詰めこんだけれど、もう半袋分ほど残っている。竹箒で掃き集めたのだが、湿った地面に葉が貼りついているから、うまくまとまらないのである。

 このあと畑の落葉と雑草に取りかかるつもりだったが、雨が降り出しそうになったので断念。雪が降る前にもう一度出動しなければならない。厄介なものだ。

 さて先日からトマス・ハーディの『キャスタブリッジの市長(The Mayor of Casterbridge)』を読みはじめた。おもしろい話が書かれていたので、簡単にご紹介したい(もっともぼくは妙なものをおもしろがるクセがあるから、あまり期待していただいては困る)。

 とある村に市が立って、いろんな露店が並ぶ。その中にファーミティを食わせるテントがある。このファーミティ(furmity)というのは別名フルーメンティ(frumenty)ともいって、脱穀した小麦をシナモンや砂糖を加えたミルクで煮るのだが、この小説では小麦粉やレーズンなんかも入っている。要するに小麦粥なんだが、そいつを店のおばさんが「おいしいファーミティだよ!」と大声を出して客を集めるのである。

 そこまではふつうだが、おもしろいのはここから。客が目配せすると、おばさんは隠し置いたラムを取り出して、鉢に盛った粥の中に投入するのである。どうして隠しておくかというと、このラムは密輸品なのだ。当時は税金が高すぎたから密輸が横行したらしい。

 ラム入りの熱い粥を食うんだからたまらない。たちまちアルコールが体内に回る。何倍もお代りすると、粥に酔ってへべれけになるわけだ。その挙句に泥酔した主人公がその場で細君を競りにかけて売り払う……という信じられない話がこの小説の発端である。

 まさかと思うかも知れないが、19世紀(たぶん中頃まで)の英国の田舎では、女房を金で売ったという実例がいくつも記録に残っているらしい。もちろん違法だから、あとになってやっかいなことも持ち上がったにちがいない。

 女房の売買にも興味はあるが、酔いが回るほどの酒を粥に混ぜるということは日本国でも行われた(行われている)のだろうか? 識者(笑)のご教示を待つ。

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November 14, 2021

Daily Oregraph: リンゴを食う話

 本日の最高気温は13.2度。曇り。

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 京都通信員撮影による大阪市内の某墓地(「何々家」というのが全部読み取れるから画像処理を施した)。列車の窓から本州の田畑の間にいくつかの墓が並んでいるのを見た記憶はあるけれど、こういうのははじめてである。

 Bleak House を読了した。本文を昨日読み終え、本日は Introduction である。いくつかわからんところは残ったが、自分の実力を考えればそれは致し方ない。とにかく読み切ったというところをほめていただきたい(笑)。

 なにしろ大長編だし、複雑きわまる内容なので、感想を聞かれても困る。ただ一応ハピー・エンディングで終ってはいるけれど、万事めでたしという感じはしないといってもいいだろうと思う。最後まで死者の暗い影が去らないのである。

 さていつも疑問に思うのだが、あちらの本はどうして巻頭に詳しい解説を置くのだろうか? イントロダクションを最初に読むな、というのはおかしいとおっしゃるかもかも知れないが、けっして最初に読んではいけないというのがぼくの変らぬ意見である。

 解説を担当するのはたいてい名のある大学のえらい先生である。なにしろ文学を飯の種にするくらいのえらい先生だから、実際読みが深い。だからこそ影響力も大きく、本文を読む前に先生の手ほどきを受けてはいけないのだ。まずは無心に本文を読むべきである(この点は美術も音楽も同じだな)。そのあとで解説を拝読して、なるほどと膝を打ち、ときには異議を唱えるのが読者の道(?)というものだろう。

 もうひとつ、えらい先生の解説というのは、頭がいいだけにたいてい立派な文章にはちがいないけれど、ぼくの乏しい経験によれば、作品そのものよりおもしろいということは決してない。リンゴを知るにはリンゴを食うにしかず、といったのはたしか毛沢東だったと記憶しているが、たしかに毛さんのいうとおりである。甘いの酸っぱいのという先入観を持たず、まずはリンゴを食おう。

 えっ、おまえ毛沢東主義者だったのか……などとトンチンカンなことをいうお方にはお引き取りいただくとして(本当にいそうだから困る(笑))、ただいま次に食うリンゴをどれにしようか思案しているところだ。もう余命いくばくもないから、深く研究なんてしているヒマはないのである。

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October 21, 2021

Daily Oregraph: 金貨を囓る話

 本日の最高気温は9.9度。雨。寒いし雨降りだし、とても外出する気分にはなれなかった。

 ネタがないので本日は Bleak House から金貨を囓る話でも……

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 上の挿絵をご説明すると、右側の少年は道路清掃人(crossing-sweeper)のジョー(Jo)君、左側の顔をベールで覆った婦人は正体不明の女性である。

 道路清掃人というのは道路を渡る通行人の前を箒で掃いてチップをもらったりする、浮浪児に毛の生えたような少年である。ゴミやほこりだけでなく、馬車の時代だから道路には馬糞がたくさん転がっていたにちがいない。こいつは雨が降って水たまりに混じっても厄介だが、放っておくと乾燥して風に舞うから始末に負えないのである。

 謎の婦人は入り組んだロンドンの裏町のいくつかの場所を指定して、駄賃をたんまりはずむからといって、ジョー君に道案内を依頼する。上の挿絵はある墓地の閉ざされたゲートの外から、ジョー君が「その人の墓はあそこ」と指さしている場面である。わざわざこんな場所に案内させるとは怪しい女性だが、読者にはなんとなくその正体の見当がつくようなつかないような、思わせぶりな書き方をしているのは作家の手際である。

 さてこの小僧、'But fen larks, you know!  Stow hooking it!' てなことをいうのだが、ベールの女性には意味がまるで通じない。教育のあるエゲレス人にわからんものが日本人のぼくにわからなくても別に不名誉ではないけれど、せっかくだから調べてみた。ちっとも受験対策にはならないが(笑)、ヒマつぶしだと思っておつきあいいただきたい。

 'fen larks' というのは、こどもたちの遊びの最中にだれかがなにか(たぶんルール違反を)しようとするのを「それはダメ!」と制止することば。'stow' は 'stop' で、'hook it' は「逃げる、ずらかる」という意味だから、 結局「いいかい、ズルしちゃだめだぜ。(駄賃をくれずに)逃げようなんてするなよ!」になるだろう。この中では 'hook it' は比較的よく使われるから、覚えていて損はないと思う。

 案内を終えたジョー君は約束どおり駄賃をもらえたのだが、ベールのご婦人が渡したのはなんと一枚の金貨であった! 一人になった彼はまず金貨の端っこを囓って金であることを確かめ、なくさないようにそいつを口中に含んで、貧民窟に戻る。そして建物前の通りのガス燈の下で金貨を口から取り出して眺め、もう一度囓って本物であることを確かめるのであった。

 金貨とはソブリン金貨(1ポンド=20 シリング=240 ペンス)だから、貧乏人にとっては大金である。ジョー君はそれから部屋代を支払ったり、就寝中に一部を盗まれたりして、その後警官に職質されたときの所持金は半クラウン貨2枚というから5シリング相当であった。

 ぼくの推定では5シリングは現在の4~5千円相当だが、警官の目には貧乏人がそんなに金を持っているのは怪しいと映ったのである。事実を申し立てても作り話としてまるで相手にされないし、まったく哀れを誘う話ではないか。

 そういえば金貨ではなく五輪の金メダルを囓ったどこぞの市長さんがいたっけ。人様の大事な記念の品を囓るとは下品もいいところだが、それだけではない、本物の金であるかどうか囓って確かめたとしたら(笑)二重の無礼といえよう。

 ジョー君の場合は夢のような幸運がとても信じられず、心配のあまり金貨を囓ったんだから、その気持はよくわかる。しかし日本国の大都市の市長さんがあれではなあ……

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