January 13, 2019

Daily Oregraph: すゐとんの話

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   そろそろ生存証明写真を載せなくてはいけないころである。

 どうしたわけか、読書は比較的順調にはかどっている。要するにインターネットなどに割く時間を減らせばわけはない。スマホ中毒のみなさまも、たまには正気に返ってみてはいかがであろうか。

 ぼくはアカウントを持っていないから、人様のツイッターをのぞいて見るだけなのだが、あちこちで政治向きの記事を拝見すると、某首相や官房長官の写真が多いのには閉口する。飯がまずくなるから(笑)、あんなつまらぬ写真はできるだけ減らしたほうがよかろうと思うのである。

 さて悪相を見て減退した食欲を回復するには、うまそうな食べ物の話題が有効だし、もりもり食べて元気になれば、次の選挙にはぜひ投票しようという意欲もおのずと湧くにちがいない。

 そこで今日は「すいとん」を取り上げてみた。

 夜は通りに種々な食物の露店が出た。鮨屋、しる粉屋、おでん燗酒、そば切りの屋台、大福餅、さういふものが小さい私の飢(うゑ)をそそつた。中で、今は殆どその面影をも見せないもので、非常に旨さうに思はれたものがあつた。冬の寒い夜などは殊にさう思はれた。それはすゐとんといふもので、蕎麦粉かうどん粉をかいたものだが、其の前には、人が大勢立つて食つた。大きな丼、そこに入れられたすゐとんからは、暖かさうに、旨さうに湯気が立つた。そこにゐる中小僧(ちゆうこぞう)が丼を洗ふ間がない位にそのすゐとんは売れた。-田山花袋『東京の三十年』より

 はっきり年代は書いていないけれど、たぶん明治14~15年ころの話だろうと思う。当時花袋は東京に出てある本屋の小僧として働き、腹を空かせながら、重い本を背負って町々を歩き回っていたのである。

 
ずいぶん昔からある食べ物なのに、「すゐとんといふもの」というからには、田山少年はそれまですいとんを知らなかったらしく、そこがぼくの興味を引いた。

 「今は殆どその面影をも見せない」とあるが、すいとんそのものは庶民に食べられつづけていたわけだから、すいとんの屋台が町から姿を消したというのだろう。

 けっしてぜいたくな食べ物ではないし、天下の美味とまではいえないけれど、腹を空かして金のない小僧にとっては、初めて目にした「すゐとんといふもの」がいかにもうまそうに見えたらしい。ちょっとホロリとさせられるところである。

 ぼくはすいとんによだれを垂らしはしないが、おでん燗酒の屋台にはふらふらと引き寄せられそうな気がする。そこへすいとんの湯気が流れてくる。汁粉の甘い匂いも漂ってくる。あとで子どもの土産にと、大福の屋台をちらっと横目に見て免罪符を買ったような気分になる。

 ぞろぞろ歩く人々の靴音や下駄の音にまじって人力車が通る。馬車が走る。さっきの小僧さんは、なけなしの小銭を握りしめて散々迷った末に、すいとんを求める人の列に加わったようだ。

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December 24, 2018

Daily Oregraph: ひと切れの Stollen

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 不信心者にも平等に盆、クリスマス、年の暮れはやって来る。

 クリスマスだからシュトーレンを食べるのではなく、麦穂亭が送ってくれたシュトーレンを食べるからクリスマス。

 このお菓子は雪に見立てた粉砂糖をたっぷりまぶしてあるので、雪かきをしてから食べなくてはいけない。最近運動不足ゆえ、たくさんはいただかない。たったひと切れである。

 ずいぶん以前のことだが、イギリス人にクリスマスのケーキをごちそうになったことがある。ちょっと固めで、みかけはドイツのシュトーレンそっくり(あるいは親戚なのかもしれない)。

 ところが一口ほおばったとたんに頭がキーンとするくらい甘いのには閉口した。砂糖をさらに濃縮しているんじゃないかと思ったほどで、涙をこらえて完食したのである。それ以来、申し訳ないけれど、イギリス人の味覚にはいささか不信を抱いている。

 麦穂亭謹製のシュトーレンはほどよく上品な甘さである。シュトーレン一般がそうなのか、日本人向けに甘さを調節しているのかはわからないが、たいへん結構なお味であった。

 というわけで人並みにクリスマスを迎え、めでたし、めでたし。

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December 06, 2018

Daily Oregraph: 風邪払い

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 昨日まで鼻水が止まらなかったから、風邪対策にはこれだろう……というわけで、鮭のアラを買ってきた。今夜は石狩鍋である。ビール、酒、ウィスキーをひととおり飲むつもりだ。

 なにしろ予報では今夜から明日の夕方まで雪。雪かき必至である。うまいものを食って精をつけなくてはいけない。

 つまらぬ記事で申し訳ないけれど、一応は決意表明である。やれやれ、雪かきか……

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October 08, 2018

Daily Oregraph: こんな日には落花生

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 どんよりとした曇り空。気温も低く、うすら寒い。とても散歩に出る気分にはなれなかった。

 こんな日には落花生の塩茹でがよく似合う。相模原のAさんが送ってくださったのを茹でたのである。今年は天候に恵まれず、出来が悪かったのだという。

 カリカリしたバターピーナッツとはちがって、ゆっくりポクポクと噛む柔らかい落花生からは、かすかに土の匂いを感じる。

 これはうまいものだ。当然一杯やりたくなるのだが、ウィスキーよりは芋焼酎だろうか。そうだ、両方試してみるとしよう(笑)。

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June 23, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 6月23日

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 本日の船上セキュリティ・チェックポイント。

 う~む、今日は役者がそろいすぎたようだ…… カメラを構えるのが遅すぎたな。われながら未熟なり。

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 本日のランチ。ビューティフルである。こういうコックさんがいれば、乗組員もハッピーにちがいない。

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 夕食はこちら。ランチよりもやや質素だが、味は上々である。

 ライスの隣は鶏の唐揚げ。右側の料理はツナ缶をアレンジしたもののようであった。見た目は今ひとつだが、こいつをライスにかけて食べると……うまい! パラパラ飯との相性抜群。コックさん、いいセンスをしている。

 まあ、たまにはこういういいこともある。どうもありがとう。

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June 22, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 6月22日

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 ひさしぶりのメスルーム(messroom = 飯ルーム)。船の夕食は早い。まだ17時である。

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 本日はポークと(たぶん)チンゲンサイ。

 本船のコックさんは腕がいい。野菜にかかったソースはなかなか美味。ポークは上品な塩味だったので、キッコーマンをかけていただいた。ごちそうさま。

 う~む、たべものの話は万人向けだし、今回はこの手でいこうかな(笑)。

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June 21, 2018

Daily Oregraph: 裏庭画報 チンゲンサイと雑草と

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 はじめてのチンゲンサイ。低温つづきであることを考えれば、まずまずの出来だろうか。

 小松菜に比べると、極端に虫食いの穴が少ない。ありがたいといえばありがたいけれど、虫の分際でえり好みするとはけしからんじゃないか。

 今日も小雨模様で寒いけれど、そんなことにはお構いなしに雑草がのさばっている。なにしろ反知性主義植物なものだから、まるで聞き分けがない(笑)。取っても取っても取りきれないのだ。

 バカでもなんでも、敵は兵力において圧倒的に優勢である。おのれ、いまに見ておれ、といいたいところだけれど、一向に有効な作戦が思い浮かばない。う~む……

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April 28, 2018

Daily Oregraph: ラーメン日和

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 ネタのないときには食い物の話題にかぎる……というわけで、近所にある評判のいいラーメン屋さんへ初めて入ってみた。

 正午少し前、客の入りは三分の二ほどだったが、やがて若い労働者諸君がドヤドヤと入ってきて満員御礼となった。うわさに聞いていたとおり人気があるらしい。

 注文したのが野菜ラーメンだったからか、サヤエンドウが浮かんでいるのは珍しい。サヤエンドウ入りのラーメンは、今は昔東京で一度お目にかかったきりである。

 チャーシューではなくブタのバラ肉入りなのは、釧路のあちこちで見られる家庭ラーメン風だが、これ案外うまいからおすすめ。

 スープの味つけも伝統の釧路風でサッパリしている。えらそうな能書きをたれて凝りすぎのスープでないところがいい。

 ラーメンはこれでいいんだよといえば、ちょいと孤独のグルメ風だけれど、ほんと、これでいい。安心の味である。

 風はまだ少し冷たい。ラーメンを食うぶんにはいいのだが、昨日野菜の種をまいたのは少し早すぎたかもしれない。

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March 22, 2018

Daily Oregraph: カシワにしとこう

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 -おや、親分、いらっしゃい。モリですかい?

 -いや、カシワにしてくれねえか。

 -へえ、夏冬かまわずモリばかりの親分にしちゃめずらしいですね。

 -うむ、今日はうすら寒いしな、なんだかあったけえものが食いてえのさ。それにな……

 するとそこへお供の八五郎が割り込んで、

 -わかっておりやす。時節柄モリとカケは遠慮してえというわけで……

 -ハハハ、八にしちゃあ察しがいいじゃねえか。おめえも好きなものを注文するがいい。

 -ヘヘ、そいつはかたじけないね。親分のおごりなら……親爺さん、海老天を頼まあ。

 -へえ、合点。いつもはカケ専門の八五郎さんも出世したもんだ。補助金があるてえと強気だね。

 -ちえっ、余計なこというない。

 無駄話をしているうちに、熱々のソバが出来上がります。歌の文句にもありますように、ソバを啜る人の群れはだれも無口で、ただズルズルという音だけが聞こえてくるのでした。

 -ああ、うまかった。八、おめえは若いから一杯じゃ足りねえだろう。なにか頼みな。

 -おっと、そりゃありがてえ。ところで、親分はこのところ食が細いですね。

 -ああ、おれも年を取ったものよ。十年前なら、とてもこれっぱかりじゃ足りなかったんだが……

 おれもお迎えが近いのか……親分はふっと淋しい笑いを浮かべるのでした。窓の外を見ると、どんより曇った空からはいまにも雪が降り出しそうな気配でございます。

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March 15, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 3月15日

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 本日の船上セキュリティ・チェックポイント。

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 最近体重がなかなか減らないので食事を控えめにしているのだが、たまにはよかろうと食堂に入り、広尾町名物(?)の麩入りラーメンを注文した。

 わかりにくいかもしれないけれど、海苔の右手にある丸いのが麩。麩入りのラーメンは釧路ではめったに見かけない。

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 ……それでやめておけばよいものを、チャーハンとのセットにしたら、量の多いことといったら! これまでの苦労が水の泡となってしまった。

 失恋した女性が大食いするのは同情を誘うけれど、ジジイの大食いはみっともない。まことに遺憾である。

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