今日は長野みやげもの編である。最後にはぼくの選んだ信州みやげものチャンピオンを発表するので、どうかお楽しみに。
まずは善光寺参道に並ぶ小さなみやげもの店の写真をごらんいただきたい。じっくり見ると、これがなかなかおもしろいのである。
いったいだれがかぶるのか疑われる笠や、非実用的な提灯も悪くないけれど、ぼくが注目したのはフィルム付きレンズ(レンズ付きフィルム?)や35ミリ・フィルム。これから何年後まで、こういう製品が店先に並ぶのだろうか?
みやげもの店の定点撮影も悪くないと思う。案外世の移り変わりがわかるかもしれないからだ。
さて数ある参道のみやげもの店の中でも、ひときわぼくの目を惹いたのはこのお店である。
渋い、実に渋い。観光地のみやげもの店にして、これほど地味な品ばかりを並べたお店はちょっと珍しいのではないか。
おみやげといえば、忘れてはならないのが食べ物。善光寺饅頭やせんべいはもちろん、最初の写真にも見える「そばまんじゅう」などはあちこちでホカホカ湯気を立てて、人々を誘っている。
しかし信州名物の食べ物といえば、やはりこの「おやき」であろう。ここと思えばまたあちら、おやここでも売っているという、まさにユビキタスな存在といえる。
実はぼくも写真のお店でおやきを買い求め、初めて味わってみたのだが、まことにふしぎなものであった。釧路あたりで「おやき」というと、いわゆる今川焼きのことなのだが、長野の「おやき」は異色の食べ物だと思う。
なんとなく中国の包子に近いような気もする。具も野沢菜、カボチャ、ナス、山菜など各種あって、もちろん小豆餡も選ぶことができる。
ビックリするほどおいしいとはいえないが、けっしてまずくもないという印象を受けた。つまりごく日常の食べ物のようなのだが、ほかの地方ではみかけないから名物として売り出しているらしい。その点でも、日本のみやげもの界ではめずらしい存在だと思う。
ではぼくの選んだ信州のみやげものチャンピオンが「おやき」かというと、さにあらず、信州といえばやはりソバだが、そのソバには欠かせない七味唐辛子こそ薄氷堂選定信州みやげなのである。
最初の2枚の写真をよくごらんいただくとわかるのだが、およそみやげもの店にしてこの唐辛子を置いていない店は一軒もないのではないか。ホームの立ち食いソバ屋でもみやげとして売っているのだ。
つまり長野駅に降り立った旅行者は、この唐辛子に迎えられ、知らぬ間に街中のみやげもの店に整列する唐辛子が記憶にこびりつき、あちこちのソバ屋でこの唐辛子をふりかけ、それでも買おうとしない鈍感なあなたは、帰りの新幹線をホームで待つ間、なにか忘れ物をしたような落ち着かぬ気分になるだろう。
なにげなくホームのソバ屋を見たあなたは、はっと気づくのだ。
-しまった、唐辛子を買っていなかった!
ご安心あれ。面倒見のよい長野市は、最後の最後まで機会を与えてくれるのである。
(長野市にて。2007年1月18日・20日撮影。最後の唐辛子の写真のみ本日撮影)
【1月23日 追記】
ルート38さんのコメントを拝見したので、記事中の写真から、七味唐辛子の部分だけ等倍で切り取って合成した一枚を追加したい。
奈良はよく知らないけれど、京都にも店先で七味唐辛子を好みに合わせて調合してくれるお店はあり、たぶんあちこちの町に古くからの唐辛子屋さんがあるのだと思う。
しかし驚いたことに、長野市内でぼくがみかけた七味は、すべて同じお店の製品なのであった。圧倒的なシェアである。ほぼ独占に近いのではないか。有名食品会社の唐辛子も、ここではまったく無力にちがいない。
38万市民と大勢の観光客が毎日ソバに七味や一味をふりかけ、家庭用あるいはおみやげとして買い求めるからには、来る日も来る日も、朝から晩まで大量の唐辛子を作りつづけているはずだ。
その唐辛子の粉の山を想像すると頭がクラクラして、これはなるほど「忘れられぬ信州の味」にちがいないと思うのである。
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