観光客がいないのを幸いに、あちこちほっつき歩いている京都通信員だが、本日は三宅八幡宮へお参りしたそうな。
なんと狛犬の代りに鳩とは異色である。護王神社のイノシシもめずらしいけれど、鳩とは意外である。
アップにしたのがこちら。こんな巨大な鳩にははじめてお目にかかった。
鳩の餌は一皿わずか50円だから、おひまな方はぜひ ……といっても、当分行けないそうにないのは残念千万である。
さて三宅八幡宮の写真から、いっぺんに昔の記憶がよみがえったので、たまには思い出話でもしてみようか。
ぼくは一時期岩倉に部屋を借りていたから、この神社に行ったことはないけれど、三宅八幡という地名はよく覚えている。まだ鞍馬線を京福の電車が走っていた頃の話である。このあたりは当時は田舎も田舎、岩倉の駅前からして水田だらけ、下宿までの畦道の途中には小さなよろず屋が一軒だけという、「え~、うそ~」というような土地であった。
夜になれば全方向からカエルの合唱が聞こえてくる。便所へ行けばカエルが跳ねている。窓を開ければヤモリがどたりと頭に落ちてくる。友人は天皇の写真をかけてある部屋の天井から落ちてきたムカデに咬まれる。
それでも電車の便がいいからだろう、学生はかなりいたように思う。間借りしていた農家には、近くにある同志社高校の生徒もいた。こいつはチャッカリ屋で、大学生の知恵を借りて英語の教科書のアンチョコを作っては小遣い稼ぎをしていた。
余分な金など一銭もなかったぼくは、よく先輩たちにご馳走になった。ご馳走といっても、もちろん料亭でドンチャン騒ぎをするわけではなく、たまたまアルバイトで稼いだ先輩の部屋で宴会をするのである。修学院離宮にも連れていっていただいたし、わずかの期間ではあったが、京都産業大学の方々にはずいぶんお世話なったから、いまだに京産大に対する敬意は失っていない。
また当時京大工学部の6回生だった某さんには、特に親切にしていただいた。お部屋に何度かおじゃましたが、本棚には工学書が一冊もなく、仏教書が数冊だけというのには驚いた。「本はな、たくさんはいらんのや」というのである。
たしか彼は大学を中退されたはずである。「おれは土方をして金を貯めたら、彼女と一緒になってドライブインでもやろうかと思っている」とおっしゃっていたが、お元気でお過ごしだろうか? あるとき「今度実家に帰ったら、高校時代におれの焼いた茶碗を持って来て、君にやる」というので楽しみにしていたのだが、ついにその茶碗をいただく機会を逃してしまった。風貌が高橋和巳によく似た方であった。
当時岩倉でお会いしたみなさんはずいぶん年老いたはずだし、カエルやヤモリの数も激減したにちがいないけれど、三宅八幡宮の石の鳩は、見たところ当時のままらしい。
そんなことを考えながら、しんみりと一人で飲む酒も悪くはない。
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