Daily Oregraph: 八月の終わりに
本日の最高気温は 23.6度。雨。
朝から雨。
-こんちは。へへ、よく降りますね。
-なんだ、あんたか。この雨の中をなにしに来たんだい?
-そいつはご挨拶ですね。しばらく音沙汰がないから、ご無事を確かめに来たんですよ。ボランティアの高齢者見守り隊ってやつだ。
-ふん、あいにくおれはまだポックリいってやしないぜ。これでもまるっきり家にこもっているわけじゃない。ウソだと思うんなら、証拠を見せよう。
-23日には街を歩いてきた。丸ト北村ビルの解体工事はこんな進み具合だったよ。案外時間がかかるもんだ。
-ははあ、なるほどね。わざわざ街に出かけたからには、なにかうまいものでも食べてきたんじゃありませんか?
-いや、食わん。
-う~む、失礼ながら手許不如意というわけで。
-いや、そのくらいの金はあるが、食わん。食い物にはたいして興味がなくなったのさ。
-へえ、年を取るとそうなりますかねえ……
-こちらは北埠頭だ。昨日ちょっとだけ歩いてきた。ひさしぶりに港の風に吹かれたくなったのさ。
-ちぇっ、キザなせりふだねえ。昔の日活映画を思い出しますよ。
-うっすら霧のかかっているところが釧路らしいだろう。
-あなたも釣りをお始めになればいいのに。
-イライラするから釣りはやらん。魚を捕るなら一網打尽にかぎる。
-無欲なようでいて欲が深いなあ。でもまあ、お元気そうでなにより。では。
……と、帰りかかるところを引きとめて、
-まあ、せっかく来てくれたんだから、雨の日の気晴らしに一杯やっていきなさい。
というわけで、八月も終わりを迎えるのでありました。
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