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September 28, 2022

Daily Oregraph: 不信心のいいわけ

 本日の最高気温は19.1度。曇り。

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 『水夫生活二年間』の本編を読み終えた(まだ補遺が37頁残っている)。航海記の部分はだれが読んでも理屈抜きに楽しめると思う。

 作者はもともとまじめなインテリだから、最終章では自らの苦労を土台にして船員の待遇改善策などを熱心に論じている。その内容はおおむねもっともで理にかなったものだと思う。

 船員に対する宗教教育普及の必要を重視するのは、19世紀の敬虔なキリスト教徒としては当然なのだろう。しかしいかに高度な教育が備わっていても理非善悪を判断する基礎となる正しい信仰心がなければいかんという一点については、21世紀のバチあたりとして一言いっておきたい。

 一流大出身者のくせに間抜けな連中が少なくないことはだれもが知るとおりだし、豊富な知識が必ずしも正しい判断力を保証しないという点については、ぼくも作者に賛成する。しかし熱心な信仰が正しい判断力を保証するとは限らないことも事実だろう。

 だれもがデイナ氏のように穏当な常識を備えていればいいけれど、宗教はよく効く薬であるがゆえに毒と紙一重で、むやみに服用すれば世間に害毒を及ぼしかねないことも否定できないと思うのである。そういえば……きっと思いあたることがあるはずだ。

 ぼくみたいな不信心者にとっても、夜空の星や野に咲く花は美しく見えるものだ。ダメな男ではあるが、人並みの親切心くらいは持ち合せているんだから、どうかお手柔らかにお願いしたいものである。

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Comments

まあ、何事も程々ということでしょうか。コロナ騒ぎが始まっての最近でこそ回数は減りましたが…

かつて、先週は…〇〇寺、今週は✕✕神社と忙しく歩き…いや、走り回っていた私。

別に進行に熱心だったというわけではありませんが、ときおりそれらの寺や神社で一心不乱に祈りを捧げている方の姿を見ます。

ああ、なにかそうしなくてはいられないいものがあるんだなあ、と思いつつ、それはそれで尊い姿だなあなんて思っていたのですが、最近の世情を見ると、このような方々の祈りが一歩間違うと、なんて感じたりします。

Posted by: 三友亭主人 | October 01, 2022 07:27

>三友亭さん

 この世には人知の及ばぬことはいくらでもありますし、あってあたりまえですよね。台風や津波など災害の前では人間など虫けら同然ですし、なにか得体の知れぬ巨大な存在を仮定して神様に祭り上げたくなるのはごく自然のなりゆきだと思います。

 問題なのは、だんだん「整備」されていった宗教によって、あらゆる場面で人間が支配されること。風土によっていろんな宗教が生まれるし、十人十色というくらいだから、同じ宗教でもさまざまに宗派が分裂します。それぞれ自分が一番正しいと主張する以上、排他、分断、迫害なんぞという弊害も生じます。

 さすがに異端審問や魔女狩りのような狂気はおさまったようですが、少なくともごく最近までは宗教的少数派が差別され、宗派がちがえば結婚も困難という国がありました(たぶん今でも?)。そして21世紀になっても偏狭かつ危険な○○教原理主義などというものが幅をきかせていることはみなさまご承知のとおりです。ぼくなんかはバカバカしいと思うんですが、なにしろ信者はみなさん大まじめだから、場合によってはわが身に危険が及びかねず、そもそも議論などは成立しません。

 ぼくなんかも都会のオアシスとして神社を散歩しますし、お婆さんがお地蔵さんにお祈りしている姿を見るとほほえましく思います。しかしわれこそは救世主なりと、人間の分を越えた寝言を言い出して、世界征服をたくらむエックス団の首領みたいな教祖まで出現するに至っては笑ってすませるわけにはいきません。

 もちろん宗教を必要とする人々がいる以上、政治的・強圧的に禁止すればいいという話ではありませんよね。そんなことをしたってなんの解決にもなりません。唯物論者の側も自分たちの「力不足」を深刻に自覚する必要があると思います。

 かく申すぼくは、毎度申し上げるように、崇拝するのは太陽のみ。なぜなら神様を信じなくても細々と生きていけるけれど、太陽なくしてわれわれは物理的に存在しえないからです。ありがたや、ありがたや。……だからといって、新しい宗派の教祖におさまり、太陽の壺でも売って儲けようなんて考えちゃいませんよ(笑)。

Posted by: 薄氷堂 | October 01, 2022 10:14

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