Daily Oregraph: 裏庭画報 キツリフネ
本日の最高気温は22.7度。曇り。
今日は40分ほど草むしり。残念ながら目立った効果はないのだが、放置しておけば半月後には悲惨なことになるから、黙々とむしる。だがこの空しい作業にも効用はあって、ほぼ無念無想、世間のいやな話題を束の間忘れることができるのはありがたい。
キツリフネ。おお、いつもの年とは花の場所が変っている。五月に土留めの工事をして広範囲の土を掘り返し、ナナカマドとユスラウメの木を切り倒した結果、環境が一変したのである。
これはスミレの仲間だが、こいつも去年まではここでみかけなかったから、今年越境入学してきたにちがいない。ぼくはどちらかというと園芸種には冷淡なのだが、まあ暖かく迎えてやることにしよう。
なんと、いままでは裏庭でみかけなかったムシトリナデシコが進出しているではないか。さては虎視眈々と機会をうかがっていたらしい。油断のならぬやつである。
だんだん虫も増えてきた。アリが身の丈に合わぬ大きな餌をかついで歩いている。雑草をなぎ倒すとクモが何匹も走り出てくる。蚊がプーンと音を立てて首の回りを飛び回る。だから今の時期は草むしりなんぞしたくないのだ。
さて推理小説はやめにして『1980年代アメリカ短編小説傑作選(The Best American Short Stories of the Eighties)』という選集を読みはじめた。1990年発行だから、たぶん30年くらい前に東京か札幌で買ったのだと思う。その昔は読みもしない(実は当時はろくに読めもしなかった)本をずいぶんと買いこんだもので、長年放置しているうちに紙に黄色いシミが浮いているばかりか、たまに開くとバリバリ音を立てて背が裂けてしまうものまで出る始末。こうして本も年を取るのだ。
1980年代の小説というと、ぼくにとっては超現代文学なので、ほとんど知らない作家ばかりである。本書に収録されている20人中、これまでに読んだことがある作家はジョン・アップダイク(John Updike)のみとは情けない。
ピーター・テイラー(Peter Taylor)という人の作品を一編読み終わったのだが、『白鯨』にくらべたら当然スケールはごま粒ほどに小さくなる代わりに、たぶん国はちがっても書かれた時代が近いせいだろう、共感をもって読むことができた。文章は……そりゃ1851年のしかも難解をもって知られるメルヴィルの文章にくらべたら読みやすいにきまっている。大体三倍速で読めると思う(笑)。
しばらく1980年代につきあってから、ふたたび19世紀に戻るとしよう。
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