Daily Oregraph: 裏庭画報 チンゲンサイ
本日の最高気温は21.7度。雨。
ちょうど青物を切らしたので、雨をものともせずにチンゲンサイを収穫。今年は割と大きく育った。加里肥料を加えたのが功を奏したのだと思う。去年までは小ぶりもなにも、この半分ほどの大きさだったのだからお話にならない。
ぼくはたまに超零細農家を名乗っているが、もちろん自嘲をこめた冗談である。失敗しても困らないのだから、いわばお遊びだ。生活のかかっている農家の方から見れば、バカも休み休みいえ、ということになるだろう。
-君ね、たしかに自称農家はずうずうしいぜ。笑っちゃうよ。大型トラクターを走らせるような土地を持ってからいってほしいね。
-いや、面目次第もない。でもね、ボウフラみたいに湧いている自称なんとか連よりは罪が軽いんだから、大目に見てくれよ。
-ははあ、自称評論家のことだな。たしかに大勢いるな。
-最近目立つのが自称社会学者だよ。数学や物理学だったらすぐにボロが出るけど、社会学だったらおじさんおばさんを煙に巻けそうだからね。
-だけどさ、にせものってのはなんとなくわかるから不思議だ。どうもうさんくさいんだな。あれこれベラベラしゃべるくせに、まるで学者の風格がそなわっていないから、お婆さんに高い蒲団を売りつける訪問販売の口上としか聞こえない。
-政権の太鼓持ちをして食っている、自称ジャーナリストというのもいるな。面の皮が鉄板でできているらしい。おれの自称農家なんてかわいいものさ。
-ほかにもいるぜ。さっぱり観客の入らない映画を作る自称芸術家もいたな。それでも眉つり上げて威張っているんだからたいしたものだ。
-おれが笑ったのは自称文化人だ。気の毒だから名前は伏せるが、「私のような文化人が釧路に来て……」と本人がいったのをこの耳で聞いたときには吹き出しそうになったよ。無知蒙昧な田舎に乗り込んで啓蒙してやろうという意気込みだけは買ったがね。
-ハハハ、自ら文化人を名乗るとはいい度胸じゃないか。君の百倍はずうずうしいね。君ももっと農家として売り出しちゃどうだい?
-虫食いのチンゲンサイでかい? 無理無理。第一自称なんとかに共通しているのは芸を売ってたんまり稼いでいるところだが、おれはなにも得しちゃいない。消費税を取られる一方さ。
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