Daily Oregraph: 秋霜烈日
本日の最高気温は17.6度。雨。
-雨のせいもあるのだろうが、この気温の低さはどうしたことか。どれ、般若湯でも温めましょうか。
-おっと和尚さん、おいらにも一杯。
-これは吾作どん、相変らず鼻がききますなあ。
-へへへ。ところで例の国葬ですが、どう思います?
-ああ、あのお方の葬儀ですか。ご葬儀ならもうすんどるから無用かとは思いますがな、お上がどうでもやるとおっしゃるならおやりになるがよろしかろう。
-だってさ、おいらの年貢も使われるんだからね、納得できませんぜ。やるんなら金持のお仲間で工面してやるがいいんです。たかが葬式に何万両も使って越後屋を儲けさせようとは正気の沙汰じゃねえが。
-まあそういわず、吾作どんも世間に生かされていることに感謝して、要らぬいさかいは起こさぬのが無事の道ですぞ。丸く、まーるく生きるのが賢明というもの。
-ちえっ、長いものには巻かれろですかい。こないだ手習いの先生が、坊主は舌先三寸で貧乏人の不満をそらす幕府の味方だからけしからんといってましたぜ。
-あの先生は西洋の危険思想にかぶれておられますからな、あまりおつきあいせんほうがよろしかろう。
-そうですかねえ。
-それにな、大々的に派手な葬式をしますと、閻魔庁でもさすがに忖度して見過ごすというわけにはいかんのですよ。秋霜烈日といいましてな、あのお役所のお取り調べは奉行所よりもはるかに厳しいんですぞ。
-へえ、シューソーレツジツですかい?
-さよう、この世ではお裁きを免れても、閻魔様のお調べはそうはいきませぬ。もちろんあの方はご立派で生前ひどいウソはおつきにならなかったから、心配はございますまいが。
-なるほどね、たしかに悪いことをしていなけりゃ舌を抜かれることはねえだろうが、あの人はずいぶんウソをついてたんじゃありませんかねえ。
-これこれ、めったなことをいってはならん。岡っ引きの耳に入ったら大変じゃ。ごらんなさい、あの閻魔様のありがたいお像を。必ずや公正なお裁きをつけてくださるとは思いませんかな。
-おや、いつの間に九品仏から運んで来たんですかい? それにしても怖いお顔だねえ。
-因果応報ということばもありますでな、あとは天のはからいに任せるがよろしい。南無阿弥陀仏。ありがたい、ありがたい。
-やっぱり和尚さんは口が達者だね。いつもうまくごまかされたような気がしてならないのさ。
-ハハハ、丸くおさめるのが坊主頭の仕事でしてな。さあ、般若湯でも召し上がれ。
Comments
本日の最高気温は17.6度。雨。
こちら、連日の30度超で、8月になってもおらぬというのに、もう「今年の夏は越えられるのやら…」なんて思ってしまいますが。
先日の我が県で起きた惨劇にまつわる諸々のニュースが巷にあふれておりますが、。これが一段落したとき、女将のほうがどちらの方を向いているのか…何やら恐ろしいものが感じられて仕方がないのですが…
Posted by: 三友亭主人 | July 25, 2022 06:16
女将→「お上」でした。
Posted by: 三友亭主人 | July 25, 2022 06:17
>三友亭さん
まさか越えられまいと思っていても、たいていのことは知らぬ間に越えてしまうから、世の中はいろんな意味で怖いですね。
> 女将→「お上」でした。
たぶん女将さんもお上も、向いている方向は同じだと思いますよ。右向け、右!
Posted by: 薄氷堂 | July 25, 2022 12:22
賛否両論ある国葬でございますが、
あるお方は歩留まりが良いとおっしゃいました。
海外からの弔問客が国内で落とすお金が
半端ないのだそうです。私ですか?
どちらでも結構でございます。
Posted by: しょうちゃん | July 25, 2022 14:23
>しょうちゃんさん
> 私ですか? どちらでも結構でございます。
法的根拠があろうとなかろうと、どうせ意地でもやるつもりなんでしょうから、ぼくは閻魔大王のご判断に任せることにしました。お裁きの結果がわからない(笑)のは残念ですけど。
Posted by: 薄氷堂 | July 25, 2022 21:12