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February 28, 2021

Daily Oregraph: うっかり捕物帖

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 本日の最高気温はプラス1.9度。朝はまだ寒く、裏庭の雪もそっくり残っておりますが、日中はポカポカしてまいりました。二月も今日はつごもりでございます。

 -薄氷堂さん、道路の雪もだいぶ融けましたな。

 -やあ先生、いらっしゃい。まあどうぞどうぞ。

 -ではご免。ところで昨日はお留守でしたな。

 -いえね、米櫃が空なもんですから、ダメもとで神社の境内に出かけたら、思いのほか商売になったのです。試験の出来を占ってくれという若い者が多くてね、学問を志す者が占いなんぞに頼っちゃいかんだろうと思うんですけど、稼ぎにはなるからありがたい。ヘヘ、まあごらんなさい。

 ああ、薄氷堂の狭い台所に一升徳利が置かれているのは何日ぶりのことでしょうか。おまけに立派なスルメも一束並んでいるのだから豪勢です。

 -しかし薄氷堂さん、占いが外れたらどうなさる? 受験生に恨まれますまいか。

 -なあに、当たるも八卦当たらぬも八卦、苦情は天に持ちこんでもらいますよ。それよりも、さっそくスルメをあぶって一杯やりませんか。

 -相変らず懐には冬の風ゆえ手ぶらで申し訳ないが、先日拝借した『ウィスタリア荘(Wistaria Lodge)事件』をお返し申します。

 アチチと顔をしかめながら、丸く反ったスルメをひっくり返した手で受取った草紙を、薄氷堂はパラパラとめくってみるのでした。

 -先生、このお話はどうでした?

 -うむ、なかなかの力作でござった。はじめは単に奇妙不可思議なる殺人事件であったにすぎないが、調べを進めていくうちに、だんだん過去の複雑な事情が明らかになってくるという……ちょっと入り組んだ筋立てですから、二部構成になっているんですな。なかなか読ませる作品ですよ。

 -こいつはドイルさんにとっても自信作だったんですね。ご本人がちゃっかり自慢しているんだからまちがいありません。

 -はてな、自慢しているところなどありましたかな?

 -ええと、最後のほうに……ああ、ここ、ここ。ホームズ探偵がワトソン先生にこういってます。「こみ入った事件だからね、ワトソン君、君好みのコンパクトなかたちに話をまとめるのは無理だろうな」とね。

 -ああ、そこですか。実際に書いたのはワトソン先生じゃなくてドイルさんだから、これこのとおり、混沌を整理してコンパクトな小説にまとめ上げたおれの手際はどんなものだ、というわけですな。なるほど自慢になりましょうね。

 -鼻高々というところでしょう。さて、スルメも焼けたし、燗のほどもよし。さあ先生、まず一杯どうぞ。

 みなさんとっくにご存じのとおり、燗酒から立ちのぼる湯気のツンとした刺激に混じったスルメの匂いというのは、実にこたえられないものであります。ウソだとお思いならやってごらんなさい。もっともエゲレス人なら鼻をつまむかも知れませぬが……

 -ところで薄氷堂さん、この短編には筋立てのほかにも異色なところがあります。お気づきになりましたかな?

 -もちろんですとも。ベインズ警部の登場でしょう。田舎でくすぶっている、一見冴えない無骨者なんですが、意外や意外、ホームズ探偵も感心するほどの切れ者であったという設定になっています。しかも話の途中までは、スコットランドヤードの警部連同様の凡庸な人物であると思わせるところは、ドイルさんも芸が細かい。

 -ベインズ警部を主人公にしたら、松本清張風の小説が出来上がるかも知れませんな。

 -おっと、先生、松本清張は時代がずっとあとですよ。それでなくてもこのブログの時代設定はいい加減なんですから(笑)、うっかりしたことはおっしゃらないほうがいい。

 -いやどうも、これは大失敗。

 -失敗といえばね、この事件が起こったのは「1892年3月末頃」と明記されているんですが、ホームズ探偵は「1891年5月4日」にライヘンバッハの滝壺に転落したことになっています。死んだはずの探偵が『空家事件』で再びロンドンに姿を現わしたのは「1894年の春」ですからね、どうも勘定が合いません。

 -やや、ほんとうですな。それは気づきませんでした。しかし普通の読者はそんなことは気にせんと思いますぞ。

 -世の中にはホームズもの専門の暇人がいましてね、合わぬつじつまをむりやり合わせようと苦心しているらしいけれど、ワトソン先生の奥さんだって忽然と姿を消しているのに一切説明はないし、ドイルさんは案外無頓着な人なんですよ。

 -ハッハッハ、とうとうドイル先生ご自身が酒の肴になってしまいましたな。

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February 27, 2021

Daily Oregraph: 転落注意

 本日の最高気温はマイナス1.1度だが体感上はプラス。穏やかな一日だった。

 さて船は鉄のかたまりだから、ぶつかると痛い。床の出っぱりに向こうずねをぶつけようものなら、思わず涙がぽろりと出るだろう。まして頭を打っては一命にかかわるので、ヘルメットは必須である。命が惜しければ必ず着用するものだ。それがいやだというなら荷役作業中の船に乗ってはいけない。

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 デッキのあちこちにはさまざまな注意書きが張ってある。もちろん保護帽着用というのもあるけれど、一番ストレートでわかりやすいのがこれ。一見して意味がわかるので、グッドデザイン賞ものだと思う。ホールド内に転落したらまず一巻の終りだから、ぼくたちは用心の上に用心を重ねている。

 いくら気をつけていても事故は起こるものだ。世の中に万全ということはありえないのだが、それだけにせめて用心を徹底するのが常識というものだろう。

 おつむがよろしくないから質問に答えられず、人の意見には耳を貸さず、虚勢を張っていばりくさる人物を首相に選ぶのは、用心の足りないうっかり者を乗船させるようなものだ。船内、いや国内の規律が乱れすぎているせいだろう。

 危ないよ、落ちるぞ。ほら! だから、いわんこっちゃない。

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February 24, 2021

Daily Oregraph: コロナ対策オンデッキ

 本日の最高気温はマイナス1.7度。しかし日中は割と暖かく、道路に残る雪も融けていたが、早朝はツルツルで運転が怖かった。

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 本日の船上セキュリティ・チェックポイント……といっても、本船はデッキの通路が狭いからデスクはない。担当者が着ているのはコロナ対策の防護服(?)だろうと思う。

 さすがに乗組員は全員マスクを着用していた。船によって異なるようだが、本船は外部の人間を居住区の中には入れてくれず、出入口付近にセットした自作テーブルで対応していた。船内でクラスターが発生すると一大事なのでやむをえないけれど、正直いって仕事はやりにくい。幸い風がなかったからよかったものの、天候が悪いときはどうするのだろうか?

 コロナによって景色が一変したのは陸上だけではないということだな。

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February 20, 2021

Daily Oregraph: 油断大敵捕物帖

 本日の最高気温はプラス4.1度。毎日コツコツと崩している雪の壁も残りの長さ4メートル弱となり、今日もスコップをふるって作業したのだが……

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 -おや、薄氷堂さん、そいつはなんですな?

 -ハハハ、掘り出し物ですよ。雪の中から出てきた氷の板です。

 -へえ、そんなものが自然にできるとは不思議ですな。

 ここで説明を加えておきますと、この板氷は最大の長さ43センチ、幅30センチ、厚さ7センチほどもございました。

 -まともにはスコップの刃が立ちませんから、回りを掘り崩して取り出すしかないんですよ。おっと、もう昼じゃありませんか。どうです先生、餅でも焼いて食いませんか?

 -おお、それはありがたい。

 二人が安倍川を食べたのか納豆餅にしたのかは、あいにく記録に残っておりませんが、とにかく簡単な昼飯をすませまして、出がらしの番茶を啜りながら、例によって呑気な捕物話をはじめたのでございます。

 -いやどうもご馳走に相成りました。さて『第二の血痕(The Second Stain)』事件は、大事件も大事件、公になれば大戦争がはじまろうという機密文書が紛失したという話ですな。

 -依頼者が首相と欧州担当大臣というんだからすごい。たまにこういう依頼もあるから、貧乏人から頼まれた仕事を引き受ける余裕があるんでしょうな。

 -話としてはなかなか面白く出来ておりますな。円満に事件を解決したホームズ探偵の手腕もみごとです。もっとも偶然都合よく殺人事件が起こらなければ、解決の糸口を見つけるのは難しかったはずですがね。

 -警官が規則を破って、無関係と思われる婦人を殺人現場に通したというのも、ちょっとありそうにないような気がします。しかしまあ、そこは話を進めるために仕方がなかったのでしょう。ただねえ、捕物以前の問題として、問題の文書の扱いが、てんでなっていませんな。

 -さよう。役所の金庫の中では心配だから、欧州大臣はそいつを自宅へ持って帰り、寝室に置いてある文書箱の中にしまいこむ。そこまではいいとしても、その箱を金庫に入れずに置きっぱなしというんですからな。挿絵をごらんなさい。

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 いくら箱に鍵をかけていたって、こんなちっぽけな箱じゃあ、そのまま誰かに持ち去られても不思議ではない。そのために戦争でもおっぱじまれば、切腹したって申し訳が立ちますまい。

 -それもそうですが、そもそも文書を懐に入れて持ち帰るというのが危険千万ではありませんか。

 -文書の存在を知る者は当然ごく限られていたとはいえ、それを嗅ぎつけたスパイがいたという設定になっていますからね。この種の文書を安全に保管する場所を確保していなかったというのは、まことにお粗末というしかありませんな。

 -でもね先生、権謀術数渦巻く欧州で鍛えに鍛えられた英国にしてこんな小説が書かれるとしたら、日本国はどうなのか、心配になりますね。

 -なあに、世界に冠たるわが国は官僚がきわめて優秀だし、政治家も信頼できますから、そんな心配はご無用。それでも不安なら、月間Hanada だの月間WiLL だのをお読みになればよろしい。おつむは多少おかしくなるかも知れんが、根拠なき安心は得られましょうからな。

 -ハハハ、冗談がきついですよ、先生。お茶を吹き出しちまったじゃありませんか。

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February 16, 2021

Daily Oregraph: お目こぼし捕物帖

 本日の最高気温はプラス6.0度。昨日から今朝にかけては雨が降りつづき、道路の雪はかなり融けた。

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 しかし強風が吹き荒れ、ふだん穏やかな港町岸壁の水面にも波が立っていた。沖は大時化にちがいない。

 -雪にならなくて助かりましたな、親分。

 -おや先生、これはおめずらしい。ほんとに助かりましたが、日本海側はこれから明日にかけて猛吹雪だてえから気の毒です。まあお上がりください。

 -景気が悪いから米櫃は空、たとえ金があったところで遠出はできん、どうも気分が晴れませんので、今日はひさしぶりに親分と捕物の話でもと存じましてな。

 -ほんとに、こういうときこそお上が米倉を開けてお救い米を配ってくださるといいんですがねえ。で、今日の捕物帖は?

 -『アビー・グレインジ(The Abbey Grange)事件』はいかがでしょうな。

 -あっしにはその「グレインジ」てえのがよくわからなかったんですが。

 -田舎御殿とでもいいますか、ここでは貴族の立派なお屋敷なんですが、もともとは穀物の倉をグレインジといったらしいから、米倉と関係がないこともないのです。倉に縁があるくらいだから、もちろん貧乏人のすみかじゃありません。

 -なるほどアビー館(やかた)ですかね。この館で起こった殺しの謎を解くてえ話ですが、なかなかよく出来ている。ひとつひとつ証拠を丹念に調べて進めるホームズさんの推理にも無理がありませんね。

 -例によってスコットランド・ヤードの警部さんがちょっと単純すぎるところなぞは、親分としてはおもしろくないかも知れませんがね。

 -ハハハ、まあこれはお話ですからね、腹を立ててもしょうがねえ。それをいうなら、かわいそうなのはワトソン先生ですよ。下手人の目星をつけたホームズ探偵と一緒に廻船問屋に行くあたりで、先生にもなんとなく察しはつくはずなんだが、あれじゃまるで大人しく散歩に連いていく飼犬みてえじゃありませんか。あんなに頭が悪いはずはねえと思いますよ。

 -この話でだれもが引っかかるのは、ホームズ探偵が最後に下手人をお上に引き渡さず、同情して見逃してやるところでしょうな。親分としては一言おありかと思うが……

 -うむ、おっしゃるとおり、そこはむずかしいところです。しかし実をいうと、あっしも目こぼししたことがまったくないわけじゃねえんです。もちろんこちとらとしても腹をくくってしなくちゃならねえことですが、人情のしからしむるところですからな、場合によっちゃわからないでもありません。

 -ケチな盗みを働いた貧乏人が重い裁きを受けているかと思うと、悪事を働いた旗本のバカ息子が大手をふって通りを歩いていたり、賄賂を貯めこんだ不浄役人がのさばっていたりしますからなあ。上級国民が天下の法を曲げている。

 -ごもっとも。情けねえことにお上がだらしないから、怪傑黒頭巾だの桃太郎侍なんてのに人気が集まるんですよ。だけど、なんの権限もなしに人様の屋敷に侵入して、人をバッタバッタと斬り倒すんだから、いくら相手が悪人とはいえ、正義の味方というのはちと無理がある。ほんとは人殺しの無法者にちげえねえんですよ。

 -旗本退屈男さんなどは将軍家から殺しの免状を授かっているそうですがね(笑)。ところで、人殺しを請け負う仕掛人なんてのもいるらしいですぞ。

 -ははあ、先生、あなたも澄ました顔をしていなさるが、ひょっとしたら仕掛人の一味では?

 -ご冗談をおっしゃっては困ります。そんな稼ぎがあれば、明るいうちから一杯やっていますとも。

 -ハハハ、これは一本取られました。おい、八、聞いてのとおりだ。熱いところを一本持ってきな。

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February 12, 2021

Daily Oregraph: 4分の3捕物帖

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 本日の最高気温はプラス1.7度。街を歩いても寒さをまったく感じませんでした。

 さて例によって裏長屋の二人は無駄話に花を咲かせている……といいたいが、二人とも腕組みして首をひねっております。畳の上に置かれているのは『スリークオーター失踪(The Missing Three-Quarter)事件』。

 -先生は剣術の心得がおありでしょうけど、私は運動のほうはさっぱりいけない。スリークオーターってのはなんです? 「4分の3(three quarters)」じゃないことはわかるんですがね。

 -そういわれましてもな、拙者も鞠を扱う遊びはまるでわからんのです。字引を引くと「フォワードラインの後方、ハーフバックとフルバックとの間に位置する2~4人の選手の一人」てなことを書いてありますが、どれもチンプンカンプンでしてな。たぶんいくさの陣形に関係するのでしょう。

 -ハハハ、ホームズ親分のセリフじゃないが、アマチュア・スポーツマンとは「住んでいる世界がちがう」というやつですね。

 -さよう。とにかくケンブリッジ大学ラグビーチームの主力選手であるスリークオーターが、オクスフォード大学との大事な試合の直前に忽然と姿を消してしまったというのが、今回の事件ですな。

 -要するに大学対抗試合の勝敗に関わる行方不明の選手捜しにホームズ親分が乗り出したというわけで。

 -これが意外にも難事件で、親分は靴を磨り減らして歩き回り、大いに苦労するわけですが、全体に捕物話というより人情話風であるところがおもしろい。

 -さすがのホームズ親分も、苦労の末居所は突きとめたものの、失踪の原因は最後までつかめませんでしたね。しかしそいつはしかたがないと納得できます。

 -だからホームズ手柄話とはいいにくいのですが、登場人物にはなかなか味があります。「頭よりも筋肉のほうを使い慣れた」依頼主のチーム監督、大金持の貴族のくせに甥である選手の捜索にはびた一文金を出さんというケチな叔父さん、尊大に構えて捜査にはてんで協力してくれない大学のえらい先生。

 -そういえば、ホームズ親分とワトソン先生ですが、めずらしく親分みずから「ロンドンの中年紳士二人(a couple of middle-aged London gentlemen)」といってますね。しかし何歳くらいなのかははっきりしません。

 -さあて、字引を引いても「若くもなく年寄りでもない」としか書いていない。だが『4人のしるし(The Sign of [the] Four)』事件当時、ワトソン先生は30代後半だったと思われますから、この事件の頃は40代にちがいないでしょうな。

 -結局選手の居所がわかったときには試合は終っていたわけですが、新聞記事には主力選手が欠けた「the Light Blues の敗北」と書かれています。このブログの読者なら、辞書を引かなくてもその意味はわかりますね。

 -さよう濃い青がオクスフォードで、淡い青はケンブリッジというのは『三人の学生事件』に出ております。だから薄氷堂さんの屁のようなブログでも、まったく役に立たんというわけではありませんな。

 -ハッハッハ、「屁のような」はどうも恐れ入りますが、返す言葉もありません。

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February 10, 2021

Daily Oregraph: おれにも食わせろ

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 コロナもどこ吹く風と、まだオリンピックの中止を宣言しないのだから呆れているところにたまたまみかけたこの絵、へえ、西洋にもパン食い競争があるのかなと思いましたよ。

 いや、待てよ、すっかり商業イベントへと堕落したオリンピックですが、パン食い競争だの二人三脚だのを正式競技に採用すれば、みんなで楽しめる運動会として復活できるかも知れませぬ。

 「おい、おれにもあんパンを一口」って、あなた、爺さんのくせに意地汚いですな。見物席で大人しくのり巻きでも召し上がっていればよろしい。あ、会場を手伝ってくださるボランティアのみなさんにもたっぷりご馳走してあげなくてはいけませんよ。

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February 08, 2021

Daily Oregraph: 泣いてたまるか

 本日の最高気温はマイナス3.9度。しかし太陽の力は偉大である。

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  屋根に積った雪は見る見るうちに融けていく。ツララからもさかんに水滴が落ちている……ところを撮るつもりだったけれど、残念、うまくいかなかった。デジタル一眼の高速連写を利用するか、動画を撮って静止画を切り取るのが現実的な方法なのだろう。

 捕物帖はご無沙汰のまま。なんと半世紀前の1971年に発行された桂圭男著『パリ・コミューン』(岩波新書)を読んでいるのである。例によってなるほどもっともだと思ったところを引用してみよう。1871年3月25日に国民軍中央委員会が発した選挙公示宣言の一部である。

 市民諸君。
 諸君に最もよく役立つ人は、諸君の間から諸君が選ぶ。諸君自身の生活を生き、同じ困難に苦しんでいる人々であることを見失なってはならない。
 成り上がり者とともに、野心家を信用してはならない。両方とも自分の個人的利益しかはからず、最後には自分が不可欠な存在だと思いこむ連中である。

 多くの政治家が諸君自身の生活を生きず、同じ困難に苦しんでいないことは、コロナ禍の現在ますます明らかになりつつあり、ふだん呑気な人々もさすがに気づきはじめたのではないだろうか。

 成り上がり者と野心家は探すまでもなくすぐに見つかる。頭の中身が19世紀の段階にとどまり、社会に害悪をもたらす不要な存在なのに、自分が不可欠な存在だと思いこんでいる人物も、「ああ、あいつだ」とすぐに思いあたるのが悲しい。誰とはいわないけれど(笑)、つい最近も世界に恥をさらした失言ジジイがいたっけ。いったいどこの後進国だよ。

  しかしいくら情けなくとも、ツララみたいにめそめそ泣いているわけにはいかない。市民諸君、面倒がらずに次の選挙には投票所へ出かけようではないか。

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February 04, 2021

Daily Oregraph: 二月の港

 いつの間にか2月ももう4日である。本日の最高気温はマイナス4.2度。風がないせいもあるにせよ、昨日よりわずか2度高いだけでずいぶん暖かく感じる。

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 ひさびさに立ち寄った港町岸壁からの景色。海水オンザロックである。

 さて連日の雪壁崩しに疲れたので、捕物帖は一休み。宮崎市定先生のエッセイ集『中国に学ぶ』(中公文庫)を読んでいる。せっかくだから、ひとつだけ引用してみよう。

 偉大な指導者を出すためには、国民に人物を見分ける明察がなければならぬ。現在のわが国にとっていちばん大切な点は、政治界に限らず、何よりも本物かにせ物かを見わけることである。一億近い人口の中に立派な人のいないはずはない。それを見出せないのは国民の方が悪い。人物を見る目がないためだ。(「中国の人物と日本の人物」より)

 ほんとうに国民の方が悪いと思う。いそいそと桜を見る会なんぞに参加し、下等な政治家どもとツーショットを撮っていい気になっているようでは困る。もっとも金もいらん、名誉もいらんという高潔かつ有能な人物を引っぱり出して政治家にするのはむずかしいだろうね。門前払いを食うことまちがいなし。

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