Daily Oregraph: 古いアンプを引っぱり出す
本日の最高気温は-3.9度。上天気だが、寒い。散歩をさっさと切り上げて車に逃げ帰った。正月から根性なしである。
これまで使ってきた ONKYO のコンポーネントの音質にたいして不満はないのだが、電源を入れると表示される文字が限りなく薄くなって、いよいよ ON なのか OFF なのか不明になった上に、かなり前から入力セレクト・スイッチも接触不良気味である。不便きわまりない。
長年使ってモトは取ったから、そろそろアンプだけでも新調しようかと考えたけれど、今どきこの手の製品は昔ほど需要がないらしく、手頃な価格では気に入ったものがなかなか見あたらない。よさそうなものは、中古でもとんでもない値段である。
待てよ、中古? 納戸に眠っているプリメインアンプはどうだろうか……てなわけで引っぱり出したのが、1984年12月に購入したラックスの L-510 である。もう20年近く使用していないから完動するかどうか不安があり、恐る恐る30分ほど通電してみたら幸い異常はなさそうだ。
汚れに汚れたパネルをピカールで磨くこと約30分(笑)、やっと見られるようになった。なにしろでかいアンプで、重量は 17 kg もある。苦労して場所を確保し、スピーカーを繋いでスイッチを入れると……音が出ない!
背面を見ると、どうやら磨いているうちにプリとメインのジャンパー・スイッチを入れていたらしい。こいつを OFF にして再び電源を入れると、今度は無事音が出た。めでたし、めでたし。
肝心の音はどうかというと、最高級品とはとてもいえぬにしても、ほんのちょっぴり高級程度のアンプではあるから、当然普及品コンポーネントのアンプとはレベルがちがう。音の輪郭がハッキリクッキリして、だらしなさが消えた。安物スピーカーの格がいっぺんに2つは上がったから驚きである。クラシックもいけるし、ヴォーカルも実にすばらしい。
36年物のアンプ、トランジスタのくせに発熱がすごく、いつまで使えるかはわからないが、当分はこれでいこう。今夜も捕物帖はお休みにして、昔の歌謡曲を聴き直しながらウィスキーを一杯やることにする。
Comments
薄氷堂さん、こんにちは。
1984年といえばCDが出始めた頃ですので、
オーディオ熱気の最後期ではないかと思います。
1970〜85年くらいのオーディオブームは凄かったですね。
その時期のアンプはどのメーカーでも良いものだと思います。
無事に音が鳴ったのは良かったですね。
熱くなるということは中にヒートシンクがあって、
動作はAB級だと想像できます。
現在ではD級アンプも多くなっているそうです。
たまに通電してやると、長持ちすると聞いています。
Posted by: 只野乙山 | January 03, 2021 16:49
>只野乙山さん
これは 8W まではA級、それ以上 100W まではAB級動作という面白いアンプなんです。たぶん中クラスの製品でしょう。何十万円というアンプはいくらでもありますが、とても買えやしません。
しばらく愛用していたのですが、組合わせていたヤマハのスピーカーのウーファが経年劣化でいかれてしまったこと、レコード針が減ってしまったこと(交換針がまた高い!)、システムがスペースを取り過ぎるなどを理由にお蔵入りにしたわけです。
それを機に不経済なオーディオからは足を洗い、善良な市民として生きてまいりましたが、おかげでよほどひどい音でないかぎり音楽のエッセンスはちゃんと伝わるものだということを悟りました。
とはいえ……システムのレベルが上がるにつれて、音の広がり、奥行き、楽器や声の細かいニュアンスが段違いに伝わってくるのもたしかですから、実に悩ましいところですね。
しかし音質にこだわりすぎると、音楽を味わうつもりが、結局音そのものを聴くはめになりがちですから、ほどほどのところで楽しむのが賢明かと思います。
Posted by: 薄氷堂 | January 03, 2021 21:45
>昔の歌謡曲を聴き直しながらウィスキーを一杯
よろしいなあ、私にとって理想的な飲み方です。
こうした音響機器については若いころいくばくかの関心はあったのですが、ある時大阪の立派な機器の揃ったジャズ喫茶(確か「四分休符」と言ってたかな?)でチーズの盛り合わせでバーボンをいただきながら、迫力ある音を聞いていたら、家でこの音は絶対に無理だなと思った瞬間、家ではとにかく聞こえりゃいいか・・・なんて気分になりまして、今じゃあ、パソコンに小さなスピーカーをくっつけて聞くのが関の山です。
Posted by: 三友亭主人 | January 04, 2021 06:25
>三友亭さん
トランジスタラジオでは「いい音」は聞けませんが、音楽のよしあしはちゃんとわかるから不思議ですよね。シンフォニーだって聴けちゃいますから。
しかし本当にいい装置になりますと、たとえば(録音さえよければ)歌手が実際に目の前に立って歌っているように錯覚しますから、体がゾクゾクしてきます。高音がどうの低音がどうのという次元じゃないんですね。昔たった一度だけ、京都の某ジャズ喫茶でそういう経験をしました。ビックリ仰天でしたよ。
(自作は別として)市販の製品でそれを実現しようとすれば、当然べらぼうにお金がかかります。まず数百万円は必要な世界だと思います。しかもお金さえかければ絶対に実現できるかというと、そうでもないから困るんです。
部屋の広さや構造だのスピーカーの配置だのが音質に大きく影響しますから、お金があったとしてもセンスと根気がなければダメ。いくら金をかけて立派な装置を並べても「なんじゃ、これは」ということだってなきにしもあらずです。
そこですべての迷いを捨てて、トランジスタラジオで歌謡曲を聴くというのも選択としてはありだと思います。歪みだらけの音を流しつつ、小皿叩いてチャンチキおけさというのも悪くありません。達人の心境といえましょう。
Posted by: 薄氷堂 | January 04, 2021 09:35