Daily Oregraph: 函館ブルース?
本日の最高気温は17.9度。人間歩かなくては体がなまるから、夕方散歩に出た。
ぶらぶら歩いていると、通りの向う側で三人のおばさまが立ち話をしていた。あたりをはばからぬ大声である。なんでもどこぞのご夫婦が離婚したのだという。
-あれまあ。
-旦那さんは女が出来て函館に行ったのさ。
-アハハ、元気だねえ。
-ほんと、元気だよ、ハハハハハ。
と、大笑いしている。いや、元気なのはあなたたちのほうでしょう。
残酷なおばさまたちの笑い声を背中に聞きながら、ぼくは女と一緒に函館へ行ったという旦那のその後を想像せずにはいられなかった。案外すでにその女とも別れ、暗い顔をして一人函館の町をさまよっているのではあるまいか。
いつの間にか彼は函館港を歩いていた。次第に霧が濃くなってきた。沖では船が汽笛を鳴らしている。カモメの糞で白くなった係船柱に腰を降ろし、煙草をくわえて火を点ける。溜息とともに煙を吐き出し、さて、これからどうしようか。
いかん、いかん。これでは歌謡曲の世界ではないか。もっとマシなことを考えなあかん。これというのも、マクベスの冒頭に登場する魔女のような、あの三人のおばさまのせいである。
Comments
>残酷なおばさまたちの笑い声
まあ、残酷と言えば残酷ですが、心理と言えば心理。元気がなくっちゃ、そうはいきませんからねえ。でも仰るようにその後の彼の人生が気になりますね。
Posted by: 三友亭主人 | July 29, 2020 22:13
>三友亭さん
いやあ、あの大声にはビックリしましたよ。近所中に聞かせるつもりだったんでしょうかね?
ぼくも(いや、お互いに?)気をつけないと、なにをいわれるかわかりませんね(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | July 30, 2020 10:04