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July 30, 2020

Daily Oregraph: 7月も終りかよ

 いくら引きこもりが得意だとはいえ、たまには遠くへ行きたい。もちろん当分は行きたくても行けないから、家の近くをうろうろ歩くしかない。

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 似たようなコースをうろついているうちに、いつの間にか7月も終りになり、影が少しずつ長くなってきたように思う。

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 しばらく忘れていた裏庭のグースベリをチェックすると、ほんのり色づきはじめていた。かくして時間はどんどん過ぎ去っていく。

 ぼちぼち小説の世界に復帰しようと考え、ジャック・ロンドンの The Sea Wolf (1904年)を読了。たいへん面白い冒険小説なのだが、後半ではインテリ美女の登場する純愛物語が入り混じるところはやや不満であった。インテリじゃなくて野性的な女ウルフを登場させれば、まったくちがった展開になったと思う。

 次は本棚に30年間以上眠らせていたサミュエル・バトラーの Erewhon (1872年)に取りかかる。このタイトルをご存じの方も多いとは思うが(たぶん……)、これは nowhere のアナグラム(綴り換え)、つまり「ドコニモアリマヘン国」を意味する。

 なにしろ30年ものだから紙も黄ばみ、相当熟成が進んでいるんだから、おもしろくないはずはないし、やっと19世紀に戻れたのがなによりもうれしい。

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July 27, 2020

Daily Oregraph: 函館ブルース?

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 本日の最高気温は17.9度。人間歩かなくては体がなまるから、夕方散歩に出た。

 ぶらぶら歩いていると、通りの向う側で三人のおばさまが立ち話をしていた。あたりをはばからぬ大声である。なんでもどこぞのご夫婦が離婚したのだという。

 -あれまあ。

 -旦那さんは女が出来て函館に行ったのさ。

 -アハハ、元気だねえ。

 -ほんと、元気だよ、ハハハハハ。

と、大笑いしている。いや、元気なのはあなたたちのほうでしょう。

 残酷なおばさまたちの笑い声を背中に聞きながら、ぼくは女と一緒に函館へ行ったという旦那のその後を想像せずにはいられなかった。案外すでにその女とも別れ、暗い顔をして一人函館の町をさまよっているのではあるまいか。

 いつの間にか彼は函館港を歩いていた。次第に霧が濃くなってきた。沖では船が汽笛を鳴らしている。カモメの糞で白くなった係船柱に腰を降ろし、煙草をくわえて火を点ける。溜息とともに煙を吐き出し、さて、これからどうしようか。

 いかん、いかん。これでは歌謡曲の世界ではないか。もっとマシなことを考えなあかん。これというのも、マクベスの冒頭に登場する魔女のような、あの三人のおばさまのせいである。

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July 25, 2020

Daily Oregraph: ミヤマニガウリ 2020年

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 数年前から観察している南大通のミヤマニガウリをチェックしたところ……今年はいやに数が少ないようだ。どうも草刈りをしたせいらしい。

 なんでも刈ればいいというものではないのだ。責任者出てこい! といいたいところだが、ミヤマニガウリに注目するような物好きは、まず千人に一人いるかどうかだろうから(笑)、文句をいってもしかたがない。でもね、これ以上余計な草刈りをしないでほしいものである。

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 もっとも、まだ開花していないし、去年も結局は大群落に生長したので、これからに期待しよう。

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 さて本日は思わぬ発見もあった。まだ花が咲きそろっていないから断定はできないけれど、これはエゾミゾハギだろうと思う。花の色はピンクに写っているが、実際はもっと鮮やかな赤である。今年はこいつも引き続き観察することにした。

 背後にミヤマニガウリの葉が見えることに気づいたあなたはきわめて優秀であって、ともに風雅を語るべきもの也。

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July 22, 2020

Daily Oregraph: 港のキツネ

 十勝港。明日から連休だから天気が心配だったけれど、早朝雨が止んでくれたおかげで、半日で仕事が終った。

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 さてこのキツネだが、この港では何度か見かけている。たぶん以前船員が餌を与えたのだろうと思うが、だれもが食べ物を恵んでくれるわけではない。その証拠にこいつはひどく痩せている。体の一部は毛が脱落して皮膚が露出しているから、栄養失調なのだろう。人の情けをあてにする野生動物はみじめである。

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 こいつはしばらくねばっていたけれど、結局餌にはありつけず、やがてどこかへ消えてしまった。観光資源であるがゆえに餌を与えると美談になるタンチョウヅルと、野生動物だから餌をやっちゃいかんと叱られるしょぼくれたキタキツネ……人間様の勝手なダブルスタンダードによる格差社会だね。

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July 19, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 ベニイタドリ

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 ハコベが小さいほうの雑草の親玉だとすれば、大きいほうの代表がこいつ、(たぶん)ベニイタドリである。

 こいつの生命力には恐るべきものがあり、どうやら土中に少しでも根が残っていれば、そこからどんどん生長するらしく、どこからでも顔を出す。イタドリの若い茎は食用になるらしいが、ぼくはこんなずうずうしい植物を食う気にはとてもなれない。第一、見るからにむさ苦しく、いかにもまずそうではないか。

 画面下にちらと見える笹も困りものである。こんなものが生えて喜ぶのは越後の笹餅屋くらいのものだろう。思い切り引っぱっても根っこまでは抜けないし、切れば切ったで、大量の茎が半端に残って見苦しい。

 ハコベに腹を立て、イタドリに癇癪を起こし、笹に顔をしかめ……毎年いまの季節になると植物を相手にするのがいやになる。こいつらのしつこさといったら、まるで利権政治家なみだから始末が悪い。

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July 16, 2020

Daily Oregraph: 悪疫退散

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 すぐ近所の東栄小学校跡グラウンドから打ち上げられた花火。部屋の窓から見えたので、手近にあったコンデジでパチリと撮ったけれど、ピントが合っていないのはご愛敬。

 めずらしいこともあるものだと思って家人に聞いたら、厳島神社主催のコンパクトな5分間花火大会。ぼくは知らなかったけれど、事前にチラシが配られていた。ちょっと加工して一部だけ記録しておこう。

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 今年は御神輿を中止した代りに花火を打ち上げたのだそうな。短時間とはいえ、費用のかかる催しだから、厳島さんもなかなか思い切ったことをされるものである。悪疫退散、ついでにコロナ利権に群がる悪人どもも成敗していただきたいものだ。

 なお「釧路の夏の到来を告げる」とあるが、本日の最高気温は15度、う~ん(笑)。

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July 13, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 食えないサクランボ

 本日も昨日に引きつづき草むしりをしたが、目に見える効果がない。衆寡敵せずを絵に描いたようなもので、ほとんど徒労である。

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 エゾヤマザクラの葉の間にところどころ赤いものが見える。サクランボだ。しかしこいつは無毒だとは思うが、食用には適さないはずだ(試してみる勇気がない……(笑))。

 たとえ食えなくとも、実がなるのはうれしいものだ。空しい草むしりをしたあとだけに、大変豊かな気分になれるのである。

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July 12, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 ギョウジャニンニクとエゾノシモツケソウ

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 昨日撮影したギョウジャニンニク。花が落ちた姿はちょっと異様である。先端の「ふくれた3部分」は「さく果」なのだが、善良なる市民にはわかりかねるから、広辞苑(第4版)のお世話になると、

 乾果の一。複子房の発達した果実で、熟すと縦裂して種子を散布する。

 熟すると中から種が出てくるらしいのだが、その頃には他の雑草に埋もれてしまうので、まずみつけられないだろう。そこで解剖してみると、

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まだみずみずしく、プーンと独特の匂いが立ちのぼってきた。なるほどやがて種になりそうである。もしその頃に見つけられたら記録するつもりだが、むずかしいだろうなあ。

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 さてこちらは本日撮ったエゾノシモツケソウ。開花したことはわかるけれど、花が細かすぎてどうなっているのかよくわからない。鯛のそぼろ(でんぶ)のようにも見えるのだが、少し接近すると、

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こんな具合である。ルーペを使ってまで観察する物好きなどめったにいないのに、ずいぶん手の込んだ細工をするものだ……と、たまには sense of wonder を味わうのもオツなものであります。

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July 11, 2020

Daily Oregraph: 北埠頭2020年

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 車では時々通りかかるのだが、あらためて見ると北埠頭はスカスカになってしまっていた……といっても、比較しなければ変りようはよくわからないだろう。

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 これは2011年11月10日に撮影したもの(方向は北→南)。矢印の公衆電話ボックスにご注目いただきたい。

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 こちらが本日撮影したものだが、電話ボックスが奇跡的に残っていなければ、どこがどこやら見当もつかなかったところである。

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 突端部から北を見たのがこちら。

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 やはり2011年11月10日に同じ方向から撮影したもの(実はこの時すでに倉庫がいくつか取り壊されていたのである)。

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 突端部の漁船用かき氷マシン(?)はそのままであるが、北埠頭全体としては見る影もないといったほうがよさそうだ。かつてはこの狭い埠頭には歩くのも怖いほどトラックやフォークリフトがひしめき合い、巻取紙の積荷や南洋材の揚荷などが行われていたことを知る人は、ジジイ確定である。

 おのれの姿もこのように比較すれば、たぶん見る影もないにちがいない。想像するだに恐ろしく、とてもそんなことはできない(笑)。

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July 07, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 エゾノシモツケソウ

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 エゾノシモツケソウ(バラ科)。まだつぼみだが、ほかにネタもなし、本日はこの花を利用したいと思う。

 シモツケソウの北海道版で、学名にも Filipendula yezonensis と「蝦夷」が織り込まれている。Filipendula(フィリペンデュラ) とは、牧野先生の図鑑によると、

 f.<l. filum(糸)+pendulus(吊り下がった)。基本種の根が小球を糸でつないだようにみえるから。

と、OED の語源欄よりも詳しい説明があって、至れり尽くせりである。なるほどペンデュラム(pendulum 振り子)の親戚らしい。ついでにいうと、filum(=thread) はフィラメント(filament)の語源である……といっても、最近では白熱電球がめずらしくなったから、「な~るほど」と納得するのは爺さん婆さんである可能性が高い。

 OED は filipendula は drop-wort(Filipendula vulgaris: ロクベンシモツケ) なりとしている。これは同じシモツケソウ属だが、花はなんとなく似ていても葉っぱがまるでちがう。エゾノシモツケソウに近いのは meadowsweet(Filipendula ulmaria: セイヨウナツユキソウ。『リーダーズ英和』は「シモツケ;シモツケソウ」とする)である。

 先日の ramsons を確かめようと引っぱり出した『野草の写真図鑑(Wild Flowers by Christopher Grey-Wilson の日本語版)』(1996年 日本ヴォーグ社)から図版を拝借してお目にかけよう。

Meadowsweet
 花の色がこちらはクリーム色である以外は、エゾノシモツケソウによく似ている。大変香りのよい花なのだそうな。メドウスィートという名前もいい。

 というわけで、本日の夏休み自由研究でありました。

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July 03, 2020

Daily Oregraph: ギョウジャニンニク―枯れたり咲いたり

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 この花を今年最初に撮ったのは6月15日。6月27日には上半分が開いて、下半分はまだつぼみの状態であった。

 満開になったところを撮るつもりだったのだが、本日見たらこの有様である。下半分は開花したけれど、上半分はごらんのとおり。たぶん6月30日あたりにチェックすればよかったのだと思う。うまくいかないものであります。

 3個の緑の球体と見えた部分は花が落ちても残り、ちょっと拳骨のようにも見える。牧野先生の図鑑には「さく果はふくれた3部分から成り」とあるから、たぶん割ってみれば種があるんだろう。花がすっかり枯れたらチェックしてみよう(忘れなければだが……)。

 さて学名の Allium Victorialis を頼りに OED を検索してみたが、ヒットしなかった。もちろん Allium(アリアム=ネギ属) はちゃんと収録されており、その仲間として名前が挙がっているのは、

  garlic, the onion, leek, chive, shallot, and
  the British wild flower Ramsons.

 ガーリックとオニオンはおなじみ。英和辞書を見ると、リークは「ニラネギ」とあり、チャイヴはアサツキの仲間で、シャロットはワケギだそうな。せっかくだから、ネギ属の単語をイモづる式に覚えてしまおう。

 さて問題はラムソンだが、ひょっとしたらギョウジャニンニクの親戚じゃないかと期待したら、「広葉のニンニクの一種」(『リーダーズ英和』)とある。なんだか要領を得ないから本家 OED を確認すると、やはり「広葉のガーリック Allium ursinum;薬味として用いるその球根。主に複数形で。」とある。ついでながら、 wild chive は wild garlic or ramsons の意味として使われ、shallot は a small onion なりとある。

 ギョウジャニンニクも「広葉」だから、たぶん似ているにちがいないとは思うが、辞書でわかるのはここまで。こういう時頼りになるのが、Google の画像検索で……おお、やはりよく似ている。著作権の問題があるから、興味をお持ちの方はご自分で検索してごらんになるといいだろう。

 葉っぱもよく似ているし、花の色も白で付き方も同じ、花びらの形はちがうけれど、予想どおりイギリス版ギョウジャニンニクといっていいような気がする。

 ギョウジャニンニクでここまで引っぱれば、小学校の夏休みの自由研究は一丁上がり。しかしもちろん高校以上では通用するわけがなく、「顔を洗って出直してこい!」とチコちゃん先生に叱られることまちがいなし……(笑)

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July 01, 2020

Daily Oregraph: サバの思い出

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 みごとなサバなので、思わずシャッターを切った。

 いろんな食べ方があるけれど、ぼくはこいつを醤油・酒・味醂でじっくりと煮たのが好物である。塩分控え目など糞食らえ(笑)、冷蔵庫に入れておけば日持ちもするし、皿に一切れ載せて酒の肴にすればこたえられない。

 昔京都でご馳走になったことのある、塩が吹き出て真っ白になった塩鯖も実にうまいものであった。最初に5センチ角ほどの小さな正方形の白いかたまりを見たときは、正体がなんだかわからなかった。恐る恐る口にしてまたビックリ。しょっぱいのなんの、ほとんど塩そのものなのだが、やがてじんわりと旨味が広がってくる。麻薬的な味である。

 そうか、これがはるばる鯖街道で運ばれてきたという伝説の塩鯖か、と納得した。5センチというサイズにも合点がいった。京都人がケチなせいではないのである。なるほどこれは10センチ角ではまずい、生死に関わるかも知れない(笑)と思った。

 5センチ角一切れで飯が何杯でも食える。血圧を気にする人なら卒倒しそうなぐらい「からい」塩鯖だが、機会があったらぜひまた食べたいものである。さすがに年だから、3センチ角でも文句はいうまい。

 そういえば、学生時代はずいぶんサバ缶のお世話になった。スーパーではたしか一缶50円未満で買えたと記憶している。当時一個17円だった(!)マルシンハンバーグ(鯨肉使用)と共に、ぼくの命を支えてくれた恩人の一人(?)である。

 英語では mackerel だが、OED によればフランス語由来なるも語源は不明だという。なんだつまらんと思いながら例文を眺めていたら、詩人イェイツの曰く、「サバはほとんどどんな餌にも食いつく」と。先生、海釣りをしていたのだろうか?

 そのサバにガツガツと食いついた紅顔の美少年は、憐れむべし、今や頭に塩の吹き出た酔っ払いジジイとなりにけり。 

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