Daily Oregraph: 裏庭画報 クサノオウあれこれ
クサノオウ(ケシ科)。決して珍しい花ではないが、名前がおもしろい。
(前略)元来有毒植物の一つであるが、薬用にも使われる。[日本名] 草の黄という意味で、草が黄色の汁を出すからといわれている。また丹毒を治すから瘡(くさ)の王であるともいい、また草の王であろうという説もあり、確かな定説はない。[漢名] 白屈菜。―牧野 新植物図鑑
日本名の説はどれもぼくにはピンとこない。キイロなんとかというならわかるが、黄がオウとは学者でもなければ考えつかないのではないだろうか。
得体の知れない花だけに、英語を調べて見ると、これがまたおもしろい。celandine(セランダイン)というのだが、語源欄を見るともともとはギリシャ語の swallow(ツバメ)だという。辞書を読むのは案外時間つぶしになるのである(それほどヒマを持て余しているわけではないのだが……(笑))。
なんでツバメなのかというと、OED によれば、昔の人が「ツバメの到来する頃花が咲き、ツバメの去る頃に花がしぼむ」と書いているそうな。また別名ツバメグサ(swallowwort)。なんでも年老いて目の弱ったツバメがこの草の汁で視力を回復したから、強力な視力回復薬であると信じられていたらしい
ツバメの視力回復などとはとても信じられない話である。汁が出るからだろうが、悪魔のミルク(devil's milk)という異名もあるから、うっかり使わないほうがいいと思う。
しかし一応薬草であることは確かで、
黄色い汁の主成分はケリドニュームアルカイロイドであるが、漢方では全草をかわかしたものを白屈菜といい、胃がんの薬に使われたことがあるが、鎮静作用だけで治療の効果はない。―増補 植物の事典(東京堂出版 昭和56年6月増補11版)
やっぱりヘンな植物である。
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