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May 31, 2020

Daily Oregraph: 阿寒大神のご神徳

 本日も上天気。最高気温は19.7度で、すこぶる快適であった。

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 ひさびさに厳島神社まで散歩。

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 厄割石というのは記憶にないが、いまさら厄払いの必要もないから、ふ~んといって通り過ぎるだけ。

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 しかし神社の「御由緒」というのを見かけたので、考えてみたらこの神社のご祭神もよく知らないし、どれどれと読んでみた。はて、「阿寒大神」とはなんぞや?

 阿寒は北海道の山だから、神様に昇格したのはごく最近にちがいなく、祀られていたのが確認されているのは、由緒書によれば18世紀末らしい。応仁の乱以前から商売を続けているという、今宮神社のあぶり餅屋のおばちゃんから見ても、阿寒大神さんは明らかに新参者である。兵隊の位でいえば二等兵であろうか。

 本州の古い町では万事につけて序列がやかましいから、(神様の葬式というのもおかしいけれど)本家や分家の集まる通夜の席では末席も末席、どうかすると座布団もあたらず、ゆっくり座るどころか、香典の受付係に任命される可能性さえある。

 すると、やはり受付に立つ古参兵の貧乏神がいうには、

 -あんた、どこから来はった? ええっ、北海道!? ロシアと変らんくらい遠いとこから、ようもまあ……

 それを耳にした古手の神さんたちから好奇の目でジロジロ見られるので、阿寒大神さんは恥ずかしくて顔が真っ赤になるのである。せっかく受付も一段落したというのに、目の前のお皿の上のあぶり餅にうっかり手を出したら、ずうずうしい田舎者よといってバカにされはしまいかと、心配でたまらないのだ。

 しかし阿寒大神さん、腐ってはいけませぬ。山の格からいえば、あなたは中級以上、堂々とお茶を飲みながら、あぶり餅を召し上がっていればいいのです。

 ぼくも日本人のはしくれだから、山を信仰する気持はなんとなくわかる。山の麓に定住して集落を作れば、世界中どこにでも神社を建てて、キリマンジャロ大神だのマッターホルン大神だのを祀るにちがいないと思う。

 もちろん18世紀に入隊したとしても、二等兵であったとしても、神様は神様である。ご利益がないはずはない。

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 ほらごらんなさい。釧路ではたまにしか見かけない、日傘をさした女性が通りかかったではないか(笑)。ご神徳である。

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May 30, 2020

Daily Oregraph: Don't stay home.

 本日の最高気温は24.8度。天気は上々だし、釧路標準では立派な夏である。この陽気に一日中部屋に立てこもっているとしたら、筋金入りの引きこもりにちがいない。わざわざ人混みに出かける必要はないけれど、たまには外の空気を吸わなくちゃ。

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 相生坂の東側を下ってすぐにある裏通りの入口。おお、いっぺんに夏が来た。まるで緑の勢いがちがう。白妙の衣でも干してあればいうことはないのだが、そいつは大和の国にお任せしておこう。

 明日の予報も快晴である。なんでもいいから写真を一枚撮れば、今月のブログは皆勤賞だ。日傘をさした女性が通りかかるといいんだけどなあ……

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May 29, 2020

Daily Oregraph: 2014年 京都の雨傘

 たまにはカメラの話題でも……といっても、高級カメラの話じゃない。昔でいえばライカを買って毎日磨くような趣味はないし、なにを使っても下手は下手、分相応の普及品をぶら下げて歩くのが、日本の下級ジジイのあるべき姿だと信じているのである。

 別に昔の写真を持ち出してごまかそうというわけではないが、ふと思い立って雨の写真を探してみた。予想どおり非常に少ない。傘がきらいな男なので、用事か約束でもなければ雨降りの日にはめったに外出しないから、まあ当然といえば当然である。

 退屈だろうから3点だけ。いずれもコントラストを思い切って強めに調整してみた。まずい出来だけれど、こうして見直すと、十年前からだんだん一眼レフ離れしていった様子がわかっておもしろい。

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 まず2010年2月15日。東京である。RICOH CX2 使用。たしか永田町付近だったと思う。ちょっとピンぼけだけど、ポケットにカメラを入れてあるから、傘をさしたおねえさんを写せるわけだ。この時もぼくは傘をさしていない。しかし傘をさした人、特におねえさんを撮るのは好きなのであります。

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 これも同日夜。これは新橋だね。やはりCX2。今どきの高級カメラはずいぶん夜に強いらしいが、ぼくなんかはこれだけ写れば十分だ。

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 こちらは2014年10月22日、京都。OLYMPUS TG-820 使用。こいつは現場用として買った防水・防塵カメラで、見た目も冴えないし、だれもほめなかったけれど(笑)、オリンパスの隠れた名機であった(後継機よりもいい)。バスの窓越しに撮った一枚だが、このしっとりとして渋い色調をごらんいただきたい。京都にぴったりのカメラだったと思う。

 経験上この種のコンパクトデジカメの寿命は大体5年程度で、CX2 も TG-820 もすでに故障してしまったから、現在は別の機種を使っている。古いデジタル一眼レフも持ってはいるけれど、めったに使っていない。古くたって頑丈だから完動するし、画質は圧倒的にいいんだけど、あまりにもじゃまくさく、野暮ったいから、持ち出す気にはなれないのである。カメラ界の戦艦大和だよね。

 もはや旅行はコンデジで決まりである。それも高級品はいらない。最近ではスマホの写真でも画質は十分だと思うけれど、ぼくはあの撮影スタイルがどうしても気に入らないのである。しかしそれはジジイが保守的なせいであって、スマホでもどんどん撮ったほうがいい。

 雨の日でも部屋にこもっていないで、雨傘を撮りに出かけようかな。

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May 28, 2020

Daily Oregraph: 夏の気配

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 釧路川の河畔をちょっとだけ散歩してきた。

 本日の最高気温16.6度。この気温で夏の気配を感じるとは大げさなようだけれど、北国の人間は繊細にして敏感だから、感じるのである。

 やっぱりちがいは雲だろうね。これは冬の雲でも春の雲でもない。いくら気温が足りなくても、もう初夏なんだろう。そういうことにしておこうじゃないか。

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May 27, 2020

Daily Oregraph: 無題

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 本日は雨模様。ネタがなにもないので、魚を見てむりやり…… タイトルを考える元気もない(笑)。

 アイルランドのコメディアン、スパイク・ミリガン(Spike Milligan 1918-2002)という人の子ども向け戯詩の一節なのだが、もちろん翻訳なんぞできやしない。こちらもむりやりなんだから、ケチをつけてもらっては困る。

 なんとこの詩のタイトルは Contagion(接触伝染[病])だから、偶然拾ったとはいえビックリである。写真にはニシンは見あたらないが、

  The Herring is a lucky fish
  From all disease inured.
  Should he be ill when caught at sea;
  Immediately―he's cured!

  ニシンは幸せものだ
  どんな病気も怖くない
  体壊して網にかかれば
  身欠きにされて腐らない

 もちろん cured は治癒と塩蔵・乾燥・燻製などの保存処理をかけているのだが、連中も身欠きニシンに似たようなものを食べているらしい。酒の肴にでもするのかなあ?

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May 26, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 桜散る

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 わが家のエゾヤマザクラはすっかり散ってしまい、小松菜の肥やしになりそうだ。

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 ユキヤナギは満開である。まったく枝の手入れをしていないので、美的見地からはやや問題がある。しかしどうせ世の中混沌としているのだから、これもまたよし。

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 庭の隅っこにあって、花の付きもあまりよくないので、つい忘れがちになるユスラウメだが、こうして見るとなかなかの美人である。ただしこいつの実がなったところをまだ一度も見ていない。果実酒にしたらうまいらしいのだが……

 今朝はのんびり花を観賞したわけではなく、倒壊寸前の板塀の板が一部外れたので応急処置を施した。そろそろ修繕も難しくなってきたから作り直す必要があるけれど、ああ、先立つものが……

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May 25, 2020

Daily Oregraph: 散歩占い

 どういうわけか、今月はこれまで一日も休まず記事を書いているから、義務感めいたものが生まれてきた。しかしもちろんネタはない。

 まさかろくにわかりもしないベルヌーイ効果(!)について知ったかぶりを書くわけにもいかないし、せいぜい間の抜けたお散歩写真を載せてお茶を濁すしかないようだ。

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 最初はこれ(笑)。このあたりにはかつて何軒かの家があったけれど、今や残るは一軒のみ。ここだけではない。あちこちに空地が目立つようになった。もちろんときどき新築工事も見かけるが、とても空地の増える勢いにはかなわないようだ。

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 ここは空家になって「売地」の看板が立っている。空地一歩手前の空家もまた少なくないのである。家を取り壊すにも大金がかかるから、ますます放置される空家が増える。半世紀後にはどうなっているのだろうか? えらいこっちゃ。

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 17時35分。ずいぶん日が長くなってきた。

 そういえば、お母さんといっしょに歩く子どもの姿を、最近あまり見かけなくなった。空地は増える。子どもは減る。ぼくの散歩占いによれば、日本の近未来はあまり明るくはなさそうだ。

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May 24, 2020

Daily Oregraph: 舟見坂から

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 舟見坂から。まだ桜が咲いている。

 ひどいピンぼけ(ぶれボケ?)写真だが、最近のデジカメだとこういうのは撮れそうでなかなか撮れないから(笑)、ボツにはしなかった。ちょいとアナログ風味もあるようだ。今日の天気、今日の気分には合っているような気もする。

 映画の画面をいじるのもちょっと飽きてきたけれど、画像で遊ぶのは案外おもしろいものだということがわかった。自分で撮った写真を自分で細工する分にはなんの遠慮もいらないから、そのうち試してみたいと思っている。

 今日の最高気温は12.5度だからまずまずだったが、昨日はたしか7度。小松菜がなかなか生長しないのもあたりまえだ。野菜を育てて生活の足しにしようと思っているんだから、もう少し暖かくなってくれなくては困る。

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May 23, 2020

Daily Oregraph: 街角

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 昨日撮影した北大通十字街付近。たしかに人通りは少なかったけれど、それはいつものことだから、新型コロナはほとんど無関係だと思う。

 釧路市内では目立ったちがいは現われていないけれど、今回の新型コロナ禍によって、日頃隠されていたり見て見ないふりをしていたことが次々と明らかになった。

 例のアベノマスクは論外として(第一まだ手元に届いていない(笑))、率先して検査を進める立場にあるはずの厚労省が、事もあろうに検査を抑制しつづけたり、補償金を出すふりをして実は露骨な出し惜しみしておきながら商売の自粛を求めたり、万事いやいややっていることが見え見えで、なにひとつ迅速に事が運んでいない。そんな体たらくで「国防」なんてできるのかいな。

 連日うんざりするニュースばかりだが、困窮する学生への給付金については、「文部科学省が外国人留学生に限って成績上位3割程度のみとする要件を設け」たというから、またまたビックリ。これは最近巷に目立つ外国人排斥の風潮とも呼応するもので、よくもそんなケチで恥ずかしいことができるものだと思う。文科省は二度と「道徳」を口にするなといいたい。

 ……とまあ、腹の立つことばかりだが、街角でお兄さんの自転車をみかけてハッとした。いきなり田舎道に吹く、草の匂いをたっぷり含んだ風を感じたのだ。どうしてといわれても困るが、しばらく忘れていた古い記憶をくすぐられたことは確かである。やはり歩けばいいことはあるらしい。

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May 22, 2020

Daily Oregraph: 映画狂時代 転落

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 材料(チャップリンの「サーカス」1928年)の関係上、これもアメリカの余人をもって代えがたい人気軽業師のお話。

 危ない綱、いや橋を渡るのがギャンブラーの生きがいなんだろうけど、やはり気をつけなくちゃいけないよ。落下して大怪我したって、この一座の親方は知らん顔なのだから。

 -おれが選んだわけじゃねえ。おまえが勝手に居座ったのだ。文句があるなら弁護士でも雇うがいいさ。

 そういう親方だって当然責任を追及されるだろうから、えらい女性弁護士なら身近にいそうだし、 早めに依頼したほうがいいかもしれない。

 なお実は軽業師と親方がぐるになって、土壇場で一芝居打ったのだという有力な説もあるけれど、ここではそこまで深読みはしないでおこう。

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May 21, 2020

Daily Oregraph: なつかしの人間ブルドーザー

 いきなり方向転換……したわけではないけれど、これまでに撮った写真のファイルから動画ファイルを検索・抽出してまとめてみたら、面白いものがみつかったのでご紹介したい。

 ぼくはめったに動画は撮らない。性に合わないというより、まるでセンスもなければ才能もないからである。しかし動画には記録的価値が確かにあるので、これを機にたまには撮ってみようかとも思う。

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 チリ硝石は危険物だから、これを撮影した当時は艙内でユンボやブルドーザーを使用することは許可されていなかった。そこで活躍したのが、通称「人間ブルドーザー」である(2008年7月8日 Canon A710で撮影)。なんとも非効率な話だが、まあ仕方がなかったわけだ。

 現在チリ硝石はフレコンで輸送されているので、人間ブルドーザーの必要はなくなった。この涙ぐましい作業(笑)をあらためて見直すと、まことに感慨深いものがある。

 さて動画はファイルサイズが大きいので、昔のデジカメで撮った低解像度の短いものでも約 100 MB、あっという間にスペースがなくなってしまうから、やむなく YouTube にアップロードした。初めてなのでさっぱり要領がわからなかったけれど、たぶんOKだろう。とても宣伝できるような代物ではないが、うんとひまなお方は、こちらをクリックしてごらんあれ。

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May 20, 2020

Daily Oregraph: 映画狂時代 資金の行方

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 誤解しないでいただきたいが、これはアメリカのお話である(笑)。しかしどこの国でも似たような事件が起こるものだ。

 -ふ~む、じゃあ誰かがその資金の中抜きをしたというのかね?

 -鋭い、ワトソン君。今日の君は冴えているね。しかしぼくは政治には興味がない。この件は検察に任せておこうじゃないか。

 いよいよ題材は古くなり、なんとこれはチャップリンの Police(1916年)より。ずいぶん古いけれど画質は大変良好で、前回の「オズの魔法使い」(1939年)の仕上がりを見てもわかるが、当時これほどの勢いがあった国といくさをしても勝ち目がないことは、孫子の兵法を引き合いに出すまでもなく、ちょっと考えれば理解できたはずである。

 さて今ごろ気づいたけれど、チャップリン映画は画像の宝庫である。これからはときどき利用させていただくとしよう。

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May 19, 2020

Daily Oregraph: 映画番外編 魔法で復活

 戦争中むやみに人を非国民呼ばわりした連中と同じ卑劣な自警団がうろつく昨今、あまりにも世間がギスギスしており、みなさまもやり切れない思いをされていることであろう。

 そこで本日はほのぼのとしたファンタジー(?)を選んでみた。1939年の作品だから苦情は来ない。

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 叩けばデンデンと音がするブリキの木こりにしては、目のつけどころはなかなかのものだ。ファイルは一つや二つじゃない、あちこちのパソコンの中に保存されているのは確実である。

 どこの世界に恐ろしい人数の名簿を一から作り直すバカがいるものか。今どき小学生でもつかぬようなウソをつくところが、ブリキ製の悲しさ。

 いずれにせよ、来年の花見は中止だろうから、わざわざオズへ行く必要はないと思いますよ、奥さん。

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May 18, 2020

Daily Oregraph: 新コロナの乱

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 ご存じ新京極である(2014年9月30日撮影)。なかなかの賑わいだが、つい数ヶ月前まではもっと多くの観光客であふれ返っていたらしい。

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 そしてこちらが5月16日の新京極三条下ルで、画面を拡大して数えてみたら、歩行者はたった9人のみだから驚く。京都通信員にいわせれば「応仁の乱以来の惨状」であって、例の緊急事態とやらが解除になったとしても、観光客、とりわけ外国人観光客は当分戻らないだろうから、商店街にとっては大打撃にちがいない。

 ろくな補償もないまま自粛しても地獄、そうかといって開店しても客が少ないから地獄、下手をするとコロナで死ぬか店を閉めて死ぬかという有様だから、まるで方丈記の世界である。

 そのどさくさに紛れてごり押ししようとした検察庁法改正案がひとまず見送られたのはなによりであったが、あまりにもひどすぎる話である。こんな途方もない法案が国会に出されるとは、未開の野蛮国といわれても仕方がないだろう。

 これまでボーッとしてチコちゃんに叱られていた多くの人々に政権の正体を知らしめたのは、新型コロナの唯一の功績かもしれないが、とにかく犠牲が大きすぎる。目前に迫る金融バブルの崩壊と相まって、近い将来世界は一変するのではないかという予感がする。末世である。

 かくなる上は、移動式の家を大八車に積んで山に入り、仏様におすがりするしか道はないのだろうか。

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May 17, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 一人花見

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 エゾヤマザクラが満開である。この木はずいぶん弱ってきたのだが、去年よりは花の付きがいい。

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 開花の遅れたチシマザクラも満開。実にめでたい。まさに花開く万国の春である。

 午前中は雲が多く、ときどき日の射す程度だったけれど、午後からは青空が広がったので、午後まで待てばよかったかもしれないが、予定どおり正午近くに一人花見。功績のある方々をご招待したかったのだが、時節柄控えることにしたのである。

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 ウィスキーをちょっとだけ……というのは、片手で一眼レフを構える以上、なみなみと注いではこぼれてしまうからである。

 いや、ほんとにこれだけだよ(笑)。正気を疑われそうだから、カッポレは踊らなかった。

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May 16, 2020

Daily Oregraph: 映画番外編 大立ち回り

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 番外編である。材料がなかなか見つからぬから、うんと古いところを探してみた。サイレント映画「雄呂血」(1925年)の一場面なのだが、どうしてどうして、この映画はなかなかの傑作である。主人公の抵抗すさまじく、よく役者の体力がもったものだと感心する。

 黒川といえば、ぼくなどは時代劇俳優故黒川弥太郎さんをすぐに思い出す。きりっとして品のある、いい役者さんであった。清廉潔白のお役人などがはまり役であったと思う。だから、この黒川さんが駆けつけたら、「もはや逃れられぬ、観念せい」というに決まっている。

 -ちがう、その黒川ではない。おれの黒川を呼べ。

 だからさ、どこの黒川さんなんだよ? ぼくにはちっともわからないけど、あなたはご存じですか?

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May 15, 2020

Daily Oregraph: 鳩の神社

 観光客がいないのを幸いに、あちこちほっつき歩いている京都通信員だが、本日は三宅八幡宮へお参りしたそうな。

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 なんと狛犬の代りに鳩とは異色である。護王神社のイノシシもめずらしいけれど、鳩とは意外である。

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 アップにしたのがこちら。こんな巨大な鳩にははじめてお目にかかった。

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 鳩の餌は一皿わずか50円だから、おひまな方はぜひ ……といっても、当分行けないそうにないのは残念千万である。

 さて三宅八幡宮の写真から、いっぺんに昔の記憶がよみがえったので、たまには思い出話でもしてみようか。

 ぼくは一時期岩倉に部屋を借りていたから、この神社に行ったことはないけれど、三宅八幡という地名はよく覚えている。まだ鞍馬線を京福の電車が走っていた頃の話である。このあたりは当時は田舎も田舎、岩倉の駅前からして水田だらけ、下宿までの畦道の途中には小さなよろず屋が一軒だけという、「え~、うそ~」というような土地であった。

 夜になれば全方向からカエルの合唱が聞こえてくる。便所へ行けばカエルが跳ねている。窓を開ければヤモリがどたりと頭に落ちてくる。友人は天皇の写真をかけてある部屋の天井から落ちてきたムカデに咬まれる。

 それでも電車の便がいいからだろう、学生はかなりいたように思う。間借りしていた農家には、近くにある同志社高校の生徒もいた。こいつはチャッカリ屋で、大学生の知恵を借りて英語の教科書のアンチョコを作っては小遣い稼ぎをしていた。

 余分な金など一銭もなかったぼくは、よく先輩たちにご馳走になった。ご馳走といっても、もちろん料亭でドンチャン騒ぎをするわけではなく、たまたまアルバイトで稼いだ先輩の部屋で宴会をするのである。修学院離宮にも連れていっていただいたし、わずかの期間ではあったが、京都産業大学の方々にはずいぶんお世話なったから、いまだに京産大に対する敬意は失っていない。

 また当時京大工学部の6回生だった某さんには、特に親切にしていただいた。お部屋に何度かおじゃましたが、本棚には工学書が一冊もなく、仏教書が数冊だけというのには驚いた。「本はな、たくさんはいらんのや」というのである。

 たしか彼は大学を中退されたはずである。「おれは土方をして金を貯めたら、彼女と一緒になってドライブインでもやろうかと思っている」とおっしゃっていたが、お元気でお過ごしだろうか? あるとき「今度実家に帰ったら、高校時代におれの焼いた茶碗を持って来て、君にやる」というので楽しみにしていたのだが、ついにその茶碗をいただく機会を逃してしまった。風貌が高橋和巳によく似た方であった。

 当時岩倉でお会いしたみなさんはずいぶん年老いたはずだし、カエルやヤモリの数も激減したにちがいないけれど、三宅八幡宮の石の鳩は、見たところ当時のままらしい。

 そんなことを考えながら、しんみりと一人で飲む酒も悪くはない。

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May 14, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 ベストシーズン到来

 仕事は昨日一山越したのだが、すぐにまた一山と、ブルックナーの交響曲のように延々とつづく。今度は閉所からの安全な脱出法である。しかしどうしても気が乗らないので、今日は「仕事を自粛」することにした(笑)。

 日が射したりかげったり忙しい空模様だが、気温はまずまず、植物観察にはうってつけだろうと判断して、いざ裏庭へ。

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 エゾヤマザクラはずいぶん咲きそろってきたが、たぶん満開は二、三日後だろう。しかし天気予報によれば土日は天気がよろしくない。かといって、明日はちと早すぎるから、花見は日曜日あたりに雨天決行としようか。

 花見といったって、どうせ一人、ショットグラスでスコッチを一杯だけにするつもりだ。カッポレには合わないけれど、BGM は Straight, No Chaser、セロニアス・モンクで文句はあるまい。

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 こちらは色白のチシマザクラ(ここは足場が悪いので妙なアングルになってしまった)。こいつはやっと咲きはじめたばかりで、ほとんどがツボミである。

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 ニリンソウ。こちらもまだ大半がツボミだから、見ごろは来週になるだろう。

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 ユキヤナギもやっと開花しはじめた。大阪とは約2ヶ月の時差がある。

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 オオバナノエンレイソウは満開である。この花は、一般住宅の庭ではめったに見かけないはずである。

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 小松菜の芽が出そろったけれど、どうも発芽率がよろしくない。よく見ると、あちこちに犬か猫の足跡らしい凹みがある。ひょっとしたらキツネかもしれない。貧乏人の畑を荒らして困らせるとは、財務省の官僚みたいな連中である。いずれ現行犯逮捕してやるから、そのつもりでいてくれ。

 金のない自称上級国民にとっては、これからしばらくが一年でもっともいい時期である。

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May 13, 2020

Daily Oregraph: カジカ総理大臣閣下

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 カジカは北海道弁でいうところの「みったくない」魚なのだが、いやいや、よく見ればそうではないぞ。

 魚類中の哲人ともいうべき堂々の貫禄がある。どんなことがあっても信頼を裏切らぬという、まことに頼もしい面構えである。日本国の首相はこの魚に勤めてもらいたいものだと思う。

 -ばかいえ、魚に総理大臣が勤まるものか。

 そうだろうか? ぼくはアベノヒトヨタケよりもカジカのほうがずっとましだと信じている。トランプがいくらわめこうとも、水槽の中からこの眼でギョロリとにらみつける(笑)……ところをご想像いただきたい。

 ようやくその真価が人間どもにもわかったとみえて、結構なお値段である。とても気軽に買えやしないのが悲しいところだ。

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May 12, 2020

Daily Oregraph: 一切れの海

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 日本史の汚点として永久保存するつもりの(笑)アベノマスクはまだ届かないし、容疑者が検察を抱き込もうとしているし(前代未聞の信じられない話である。こちらは世界史の汚点だろう)、気分がムシャクシャするから、海を見に行こう。

 まっすぐ知人の浜へ行くつもりだったが、ひどく遠回りになるので、たくぼく線(旧米町線)の終点までやって来た。ここはもと石炭列車の踏切があった場所である。

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 ああ、予想どおり、こちら側にも立入禁止の看板が立っていた。ぼくの定航散歩コースだったのだが、「ここは遊歩道ではありません」といわれては通るわけにはいかない。

 で、浜へ降りようにも黄色い「私有地進入禁止」の立札が立っているし、にっちもさっちもいかない。次回は知人へ直行するしかあるまい。

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 しかたがないので、海を一切れだけ切り取って帰ってきた。味気ないことである。しかし潮風を胸一杯吸い込んだから、まあ、いいか。

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May 11, 2020

Daily Oregraph: 開花宣言

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 意外にも早く開花したエゾヤマザクラ。気象台の開花予想どおりである。これとは別の枝にもちらほら花が見えたから、開花宣言してもいいだろうと思う。

 今週末は花の下で一杯やろうと思う。一人花見でもいいのだが、なあに、どうせ自粛したって補償金は一文も出ないのだから(笑)、open to everyone、遠慮なくいらっしゃい。ご一緒にカッポレでも踊ろうではないか。

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 ついでに開花したのがオオバナノエンレイソウである。こいつも毎年律儀に咲いてくれる。いちいち申請しなくても花を咲かせるのが、植物のいいところだ。

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 この葉っぱはギョウジャニンニクである。いったん食ってしまうと、二度と顔を出さない恐れがあるから、毎年放置している。こういう余裕のある人間のことを、ほんとうの上級国民というのだ。金はないけどさ(笑)。

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May 10, 2020

Daily Oregraph: お相手はカラスだけ

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 コンビニで煙草を買った帰り道に港町岸壁へ寄ってみたのだが、人影は見あたらないし殺風景だし天気は悪いし、とてもこの近辺を歩こうという気にはなれなかった。

 お相手はカラスの勘三郎だけである。こやつはまったく愛想がなく、人間様に敬意を払わぬばかりか、多少近寄っても逃げようとしないのである。しかしカラスとアベシャツには文句をいっても日本語が通じないのだから、さっさと車に戻ったことは申し上げるまでもない。

 部屋に戻ったらお仕事再開。え、なんじゃこれは。「ロール周期はメタセンター高さの平方根に反比例する」なんてこと、あなたご存じでしたか? ほんとうはもっと詳しくお教えしたいのだが(笑)、職業倫理上これまでとしておこう。

 さていくら引きこもりのプロとはいえ、こうも長引くとさすがに家にこもっているのがいやになってくる。京都の路地や大阪のゴチャゴチャした裏通りが恋しくなってくる。しかしそれも今年は到底無理だし、メタセンターがいくら高くなっても、平方根に比例したとしても、来年だってむずかしいだろう。

 なにか対策を考えねばなるまい。

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May 09, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 カタクリ

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 笹がひどくはびこっていたので、バッサバッサと切り倒していたら、いつもの場所にカタクリが一輪咲いていた。完全に隠れていたので見えなかったのである。

 カタクリが生き延びていてくれたのはうれしいが、乱暴に笹を始末したせいで、オシベがひとつダメージを受けてしまった。どうもすまないことをしたが、苦情は笹にいってもらいたい。

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 さてカタクリのあとに怪しいキノコというのもなんだが、これは「ヒトヨタケの生長」の図である(小川 真著『きのこの自然誌』1983年 築地書館より)。どうしてぼくがこれを見て驚きもし感心もしたのかというと、小川先生によれば、

 (ザラエノヒトヨタケは)完成したひだに胞子ができはじめると、かさが広がり、上にまき上がってとけだす。

 これは菌の酵素が自分自身の細胞をとかす作用で、自己消化と呼ばれている。かさのとけた黒い汁のなかにはいった胞子はしずくのように土の上にたれて、雨で流される。ザラエノヒトヨダケがとけだすと、生臭い匂いがするので、ハエがやってくる。胞子は黒くてねばねばしているので、ハエの体につきやすい。ごみからごみをわたり歩くハエに運ばれて、ザラエノヒトヨタケは広がることができる。(pp. 90-91)

 なんと、自らの酵素が自らを消化するとは! 落語の「頭山」を連想させる話で、昔々プログラミング言語 Pascal で「再帰」を教わり、あまりの不思議さに(笑)頭がボーッとしたときのことを思い出した。

 外部からの病原菌やウィルスではなく、おのれの酵素によっておのれが融け、あとに黒くて臭い汁を残す……これではまるでアベノヒトヨタケではないか。そのまま地上から消滅すればいいのに、「ごみからごみをわたり歩くハエに運ばれて」広がっていくとは困ったものである。

 まことに意外だったのは、このヒトヨタケ、名前どおり非常に短命なのだが、溶ける前なら食用になるという。しかも欧米では珍重されるらしい。しかしぼくにはまるで食欲が湧かないのである(笑)。

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May 08, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 食える花キバナノアマナ

 今日は比較的暖かかったけれど、それでも最高気温は14.9度。5月3日に小松菜と水菜の種をまいたが、この調子だといつ芽が出ることやら。

 天気予報によれば、釧路の桜開花予想は11日だというが、わが裏庭ではいつもずっと遅い。昨年はたしか15日だったと思う。たぶん日本一遅いのである。どれ、ちょっと偵察してみよう。

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 ほらね、やはり11日はちょっと無理のようだ。

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 これはキバナノアマナ(ユリ科)。けっして派手な花ではないが、鮮やかな黄色が目を引く。「アマナ(甘菜)」というだけあって、葉と鱗茎は食べられるらしい。考えてみれば、食べたら甘かったので甘菜と名づけたに決まっている。

 毒キノコや毒草のたぐいもそうだが、毒の有無は見かけではわからない。たとえばトリカブトの花などは料理に添えたらずいぶん映えるにちがいないけれど、パクリと食べたらえらいことになる。

 だからなんでも最初に口にした人はえらい。人類の大恩人であるといってもいい。しかしいくらナマコを食うほど勇敢でも、見るからに有毒な利権政治家や狡猾な官僚をかじって確かめてみようという物好きはいないだろう。

 -おい、八、そういうのをなんというか、おめえ知ってるかい?

 すると、玄関に薬師様のお札を貼っていた八公、

 -ははは、食えないやつ、ですね。

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May 07, 2020

Daily Oregraph: 困ったときの……

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 当社無給京都通信員が「不明門(あけず)通松原上ル、平等寺因幡薬師堂で配布されてたコロナ退散の御札」の写真を送ってくれた。このお寺については以前記事を掲載したから、こちらをご覧いただければ幸いである。

 なんだ、不信心者のくせに神仏にすがるのか? といわれそうだが、この際だから、すがる(笑)。なにをやらせても後手に回り、しかもそれが意図的であって、国民を救おうという気持が微塵もない最低最悪の極悪政権に期待できぬ以上、神仏にすがるよりほかに道はあるだろうか?

 しかもドクター仏さんの異名をお持ちの(?)薬師さんである。妖怪アマビエごときの少なくとも一億倍は頼りになるであろう。住民票がどうの、国籍がどうのなどとケチなことをおっしゃらず、無条件で救ってくださるのが仏さまのありがたいところだ。

 お賽銭はいらないから、懐疑論者のあなたも、素直にこの画像を拝みなされ。

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May 06, 2020

Daily Oregraph: 絶望と希望

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 フェリーニの名作「道」の終り近く、泥酔して酒場を追い出されたザンパーノは、勢いに任せてドラム缶を持ち上げ、道路に放り投げる。

 寅さんとはちがって、時々ふらりと帰る先のない大道芸人といえども、もちろん生まれ故郷はあるはずだが、イタリアでは住民票はどうなっているのか、ぼくにはわからない。しかしお上の配る(といわれている)十萬円を、住所不定の男がすんなりもらえそうにないことは確かだろう。

 人を集めて芸を見せることができなくなったとすれば、その日暮らしの大道芸人は、一体どうやって生きていけばいいのだろうか?

 -なにい、敬意、感謝、絆だと? おれさまの生活スタイルを改めろ、だと? 寝言を抜かすんじゃねえ。その前におれが野垂れ死にしちまうじゃねえか。くそったれめ!

というわけで、(映画とはちがって)この後ザンパーノはもう一本ドラム缶を放り投げるのであった。

 そこへ通りかかった年配の神父さん、

 -君の気持はよくわかるけれど、ドラム缶を投げたって事態は改善されないのですから、今度の選挙にはぜひ投票して、君の意思を示すべきです。

 -ばかやろう、十萬円が届かねえおれのところに投票券なんぞ来るものか。

 そういって彼はもう一本のドラム缶をつかみはじめたので、神父さんはあわてて逃げ出しながらつぶやいた。

 -ああ、神よ。危険思想はここから生まれるのですね……

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 さて「戦艦ポチョムキン」で始まった今回のシリーズ、最後を飾るのは同じ作品のエンディングである。

 もちろんぼくたちは歴史を学んだから、水兵たちの喜びがいつまでも続くものでないことは十分承知している。体制が変れば変ったで、また新たに厄介な問題が発生するのだから、人間というやつはまことに困ったものだ。

 そうはいっても、この場面が感動的であることは否定できない。たとえ束の間の希望であっても、希望は希望である。

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May 05, 2020

Daily Oregraph: 踊る大本営

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 特別の名画というわけではないが、ジーン・ケリー主演のミュージカル映画「踊る大紐育(On the Town)」(1949年)より。きれいどころが三人という豪華版である。

 え、それにしちゃ男優陣がショボいって? ダメだよ、そんな失礼なこといっちゃ。みなさん上級国民なんだから。もっともお顔を拝見するかぎり、どこが上級なのかはわからないけどね。

 一部では「けしからんパヨク」という評判もあるらしいぼくだけど(笑)、これでも日本人のはしくれである以上、空気を読むのは得意である。「みんなががんばっている時なのだから、批判ばかりせずに協力しろ」という「絆」信仰の中坊諸君に配慮して……よろしい、お国のために一肌脱ごうではないか。

 見よ、この善意に満ちた画像を。ずいぶん手間がかかってるんだぜ(笑)。まん中のおばさまのお顔がやや大きすぎたから修正しようかとも思ったのだが、実際でかい顔をしておいでのようだから、そのままにしておいた(ほかのお二人の顔もでかくしておけばよかった)。

 「自粛しないと逮捕」とは、「ボランティアせんと承知しないぞ」と同様の非論理的発想だが、それゆえにこそ「ニッポンすごいぞ」なのである。そんな空気はあまり吸いたくないから、いつ届くのか知れぬ布マスクを心待ちにしている。本当はマスクの内側にゴミやカビではなく小判が入っているとうれしいのだが……

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May 04, 2020

Daily Oregraph: 晩春 or Late Payment

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 「どうして父親役が笠智衆じゃないんだ!」とお叱りを受けそうだが、まあ落ち着いて。記者会見の模様をお伝えしよう。

 -長官、この映画について政府はどうお考えでしょうか?

 -政府が文化芸術に口を出すのはいかがなものかと思いますが、特に父親役などはまさに適材適所、閣内でも非常に評判がよろしいですね。

 -ミスキャストという声もありますが、長官のご感想は?

 -君、しつこいですね。どこの会社? 東京新聞?

 ……そんなことよりさ、さっさと十萬円配りなよ。原節子さんが泣いているじゃないか。お父さんが生きているうちには届くんだろうね?

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May 03, 2020

Daily Oregraph: 仁義なき戦い カサブランカ死闘篇

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 「仁義なき戦い」シリーズの真の主役は、金子信雄さん扮するところの山守組組長だろうとぼくは思っている。憎たらしいほどうまい(笑)、あっぱれの名優である。

 当然のことながら、YouTube にある「仁義なき戦い」の予告編から画像を頂戴しようと考えたのだが、映画の著作権は(たしか)公開から70年なので、やむをえず「カサブランカ」から拝借した。

 どうもこれではハンフリー・ボガートが気の毒ではないかという気がしないでもないが、どうか事情ご賢察の上、ご勘弁いただきたい。

 しかしセリフとしては山守組組長にぴったりではないか。自分で責任を取るような男ではないからだ。文太兄貴が「山守さん、弾はまだ残っとるがよ」という気持はよくわかるのである。

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May 02, 2020

Daily Oregraph: 第三の男

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 お花見ねえ……実はぼくもそれを心配しているんですよ、奥さん。でもね、こんな時期ですから、あまり出歩かず、ご自宅でじっとなさったほうがいいと思いますよ。ご主人も(たぶん)お疲れでしょうしね。

 ところで、左の男性は一体どなたであろうか? マスクをしているから顔が見えないけれど、ちょっと気になる謎の人物、それが第三の男というわけ(笑)。

 さて「戦艦ポチョムキン」、「市民ケーン」、そして「第三の男」と、往年の名画シリーズ、お次はどうしようか? う~む、困った。

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May 01, 2020

Daily Oregraph: 市民 Kane 事件

 以下はワトソン医学博士のノートからの引用である……

 ぼくの結婚以来すっかり疎遠になっていたホームズの部屋をひさびさに訪ねると、相変らずパイプ煙草の煙がもうもうと立ちこめていた。

 -君、いくらなんでも吸い過ぎじゃないか? なにしろ禁煙が正義のご時世だから、ぼくの書いた君の事件簿などは、煙草の場面が多いというので、いずれ発禁になるかもしれないぜ。

 -おお、ワトソン君か。ふむ、背広と靴をいっぺんに新調したところを見ると、ずいぶん仕事がうまくいっているようだね。

 -いま何か事件を手がけているのかね?

 するとホームズは、くわえていたパイプをテーブルに向けて、

 -その写真を見たまえ。

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 -だれだい、この人物は? Kaneだから、ケイン氏かね?

 -いつもながら物を知らないね、君は。日系人だからケインじゃない、カネ氏さ。先月不審死を遂げた、拝金教の教祖様だよ。それは集会の写真だ。

 -へえ…… で、どんな人物だったのかね?

 -その名のとおり金の匂いには敏感で、労働者からのピンハネや税金逃れが大の得意。モリアーティ教授なみに口がうまく、一言に三言を返し、ああいえばこういうという具合だから、まともな連中は閉口してみな離れていったのだが、だまされる信者は後を絶たなかった。あこぎな手口で儲けに儲けた金を、自宅に作り付けの巨大な金庫に貯めこんでいたんだ。

 -そんな男が死んだって、むしろ世のためだから、だれも困るまい。で、君にどんな依頼があったのだ?

 -カネ氏の死後、大金庫が破られて、まだ処分していない金がそっくり盗まれたのだ。むろん守銭奴の金がどうなろうと、ぼくの知ったことではないが、スコットランドヤードのレストレードが泣きついてきたのさ。

 -なるほど。でもよくそんな仕事を引き受けたものだね。

 -カネ氏の臨終のことば、それが謎なのだよ。それを聞いて俄然興味が湧いたというわけさ。

 -謎のことば、とは?

 -うむ、どうもはっきり聞き取れなかったらしいが、立ち会った看護婦の話によると、rosebud(バラのつぼみ)とつぶやいたらしい。

 -ロウズバッド? なんだい、それは?

 -それがわかれば苦労はないよ。レストレードは困り果てている。

 -でも君のことだから、もう見当はついているんじゃないか?

 しかしホームズは返事をせず、目を閉じて盛んに煙草の煙を吐き出すのみであった。

 ぼくもあきらめてパイプに火を点けた。いったんこうなってしまうと、ホームズは半日だろうが一日だろうが、そのまま口をきかないのである。

 さてこの盗難がその後ヨーロッパ中を震撼させる大事件に発展し、ホームズの獅子奮迅の活躍によって、大がかりな犯罪組織が一網打尽にされたことはすでに知られているとおりである。組織の首魁が南仏の田舎でバラを栽培している謎の東洋人であったこと、そして例によってレストレードが手柄を横取りしたことは申し上げるまでもない。

 ……不幸にもワトソン博士は原稿を書きかけたところで急逝し、捜査の詳細は今日に至るまで不明のままである。まことに残念というほかはない。

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