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January 30, 2020

Daily Oregraph: センチな気分

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 -いやあ、親分、また降りましたねえ。

 -おお八、いいところに来た。おめえ、雪をかきな。

 -ちぇっ、道理で家を出るときいやな感じがしたんだ。

 -まあ、そういうない。あとで一杯飲ませてやるさ。どれどれ、おれは雪の深さを測ってみよう。

 -どうでしたい?

 -そうさな、18センチから23センチってとこかな。

 -ねえ親分、江戸時代にメートル法はありませんや。NHKの大河ドラマでさえ、センチとはいわねえ。

 -いや、そうとも限らねえさ。メートル法てえのは案外古いから、西洋かぶれが使っていたとしてもおかしくはねえ。ごたごた抜かすやつがいたら、「尺もメートルもあたりまえに使われていた」と閣議決定しちまえばいいんだ。

 -へへへ、そいつは乱暴、いや、クールでセクシーなアイディアですね。

 -馬鹿な野郎だ、まったく。だからおめえは大学校まで出て、岡っ引きの手下なんぞをしているのだ。無駄口叩かねえで、さっさと雪かきしろい。

 さてかわいそうなのは八公で、結局この雪かきには半日以上もかかったのでした。なぜかと申しますと、これがただの雪ではない。湿った重い雪だからたまりません。たちまち腕がだるくなるのであります。

 八公が道具を片づけて座敷に上がりますと、長火鉢にかけた鉄瓶からはさかんに湯気が立ちのぼり、燗酒のいい匂いがぷんと漂ってまいりました。渋い顔をしていた八も鼻をひくつかせ、とたんに機嫌を直したのでございます。

 やがて二人は酒盛りを始めましたが、相変らずの曇り空。明日の朝もまた雪が降るといううわさでございます。やれやれ……

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January 25, 2020

Daily Oregraph: タラ鍋の日

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 昨日日中の気温が上がったからだろう、港町岸壁の水面の氷はかなりゆるんでいた。

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 そうはいっても冬は冬。鍋のうまい季節である。

 ひさしぶりにスーパーの店頭に真鱈が並んでいた。しかも安い! サイズは並だけれど、持てばずしりと重い。これはもう鍋にして食うしかないだろう。

 食いましたとも。うまかったですとも。下級国民にもこういうよき日はある。

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January 20, 2020

Daily Oregraph: 19 cm deep

 この冬初の「本格的な」雪が朝から午後まで降りつづいたので、昼前に玄関前だけ、夕方に残りの雪かきをした。

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 これは車の屋根に積った雪。目見当で20センチと予想したが、実測19センチであった。もちろんこの程度ではとても大雪とはいえないけれど、雪かきはちと面倒。一尺まで降らなかったのは幸いであった。

 雪の戸や押せば開(ひら)くと寐てゝいふ  一茶

 押せば開くうちはいいのだが、雪が積ってくると、だんだん開きにくくなってくるのである。雪深い地方だと、ごろ寝しているうちに戸が開かなくなってしまうのではないか。

 一茶先生、どんな顔をして雪かきしたことやら。

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January 18, 2020

Daily Oregraph: 1月18日 港町氷見物

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 用事があって外出したついでに生存証明写真を一枚。

 港町岸壁は、この前来たときとはちがって、風もなくおだやかであった。水面の氷は少し緩んでいるようだ。遠くに雌阿寒岳が見える(見えない方は心眼でご覧いただきたい)。

 もう何ヶ月も色気のない文章を読みつづけているせいか、頭がすっかり実学モードに切り替わってしまい、味気ないことといったらない。

 今の仕事に取りかかる直前までは、こんな小説を読んでいた(中途半端なところから入るが……)。

 こいつは本物の高級時計だ。がっちり銀のケースに収まってるから、遅くまで飲んだ帰りに、こいつでドアをノックしてかみさんや家の者を叩き起こしたってかまわない。ノッカーなんぞは郵便配達に取っとけばいいんだ。そしてディナーの皿が6枚。赤ん坊がむずかったら、シンバル代りに鳴らしてやるといい。おっと待った! おまけをひとつくれてやろう。麺棒だ。赤ん坊の歯が生えかかったら、そいつを口にぐいと突っこんで歯茎をいっぺんこすってやれば、くすぐられたみたいに大笑いして、歯が倍も出てくるぞ。待った! あんたの面が気にくわないから、もうひとつおまけだ。だってお前が損をしなけりゃおれは買わんぞという顔をしているぜ。それにな、今夜は金を稼ぐより損したい気分なんだ。鏡をくれてやるから、値をつけないんなら、そいつでそのまずい面を見てるがいい。これでどうだ? さあ! 1ポンドだって? いや、あんたそんなに持っちゃいない。10シリングだって? 無理だね、あんた掛売りにだってもっと借りがあるだろう。それじゃどうしてやるか教えてやろう。馬車の踏台に一切合財積んでやる、そうら! カミソリに火のし、フライパンに高級時計、ディナーの皿に麺棒、それに鏡だ。4シリングで全部持ってけ。そしたら手間賃に6ペンスくれてやらあ!(ディケンズ『ドクター・マリゴールドの処方箋』より)

 訳がいいかげんなところはご容赦いただきたい。要するにイギリス版寅さんのお話なのだが、ホロリとさせるところも同じである。おっと、こんなことに時間を費やしているヒマはなかったのだ(笑)。

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January 12, 2020

Daily Oregraph: 裏庭画報 霧氷

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 11時30分。外へ出たら深い霧がかかっていて驚いた。しかもこの時間なのに、近所のお宅の庭に樹氷が見られたのには二度びっくりした。

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 裏庭へ行ってみると、枯草まで氷で飾られていた。樹氷というより霧氷といったほうがいいのかもしれない。

 もう少し早い時間だったら、気温が低いから氷はもっと美しかったにちがいない。やはり部屋にこもっていてはダメだ。

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January 09, 2020

Daily Oregraph: 積雪数センチ

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 積雪2~3センチというところだろうか。たとえ3センチでも雪かきはせねばならないが、やっと風邪が治ったばかりだから、雪が少ないのは大助かりである。

 一応仕事には復帰したけれど、風邪の後遺症であろうか、まだ少しボーッとしている。文法用語でいえば受動態である(笑)。そんな次第で、ネタもなにもありはしない。

 しかしそれではあまりにも愛想がないから、三日前に見た夢の話でもしよう。

 わが家の近所とおぼしき古い木造の一軒家に、なぜか高橋和巳が一人住まいしているのである。彼は白いワイシャツに黒っぽいズボンという格好で、泣きも笑いも怒りもせずに、黙ってくたびれたソファに座っている。まばたきもせずに、暗い瞳でどこかわからぬ一点を見つめているのである。

 若い男女から年寄りまで、さまざまな人々が、あまり明るくない電灯のついた部屋に出入りしている。みな互いにボソボソと小声で話し合っているのだが、だれも高橋和巳に話しかけようとはしない。どういう集まりなのか見当もつかないし、ぼくも話しかけるきっかけがないからボンヤリしていると、やがてだれかがいった。

 -おや、高橋さんはどこへ行った?

 なるほどいつの間にか彼の姿は消えていた。ぼくはハッと気がついた。さきほどからなにかおかしいと思っていたわけが、いっぺんにわかったのである。高橋さんはとっくの昔に亡くなっていたのだ。

 彼の幽霊がなぜ不熱心な読者の夢に、しかもはじめて現れたのか、もちろん深いわけなどあるはずもないのだが、妙に気になるのである。お迎えが近いのかもしれない。

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January 03, 2020

Daily Oregraph: 新年雑感

 年末から風邪にやられた。熱はないのだが、体がだるい。なにかしようとしても、たちまちその気が失せる。ノンシャラーンならまだいい。その一歩手前なのである。

 あれが食いたい、これを飲みたいという欲望がきれいさっぱり消滅して、彼岸に一歩近づいたような心持ちになる。それが元日でちょうど一週間、やっと回復しはじめたけれど、だるさはまだしぶとく残っており、本日もなお本調子に戻ったとはいいにくい。

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 しかしどうにも気が腐るから、気分転換のために、車で港町岸壁までやって来た。水面には薄氷が張って、一見穏やかな景色である。

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 だが釧路の冬は甘くはなかった。病み上がりの体に、強烈な西風が容赦なく吹きつけ、さっさと帰れ、おとなしく寝ていろ、と叱りつけるんだからたまらない。負け戦はするなという孫子の兵法に従って、車に逃げこんだことは申し上げるまでもない。

 年の初めからこんな調子では先が思いやられるけれど、悪いあとにはいいことが来るはずだから、しぶとく春の到来を待つことにしよう。 

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