Daily Oregraph: ノンシャラーンな12月
冬の強烈な太陽が反射して、海がギラギラ光っている。まぶしくて目がくらむほどである。それなのに手袋がそろそろ恋しくなる気温なのだから、だんだん散歩がおっくうになる。
あいかわらずデスクワークがつづく。しかしいくらがんばっても、人間の集中力などたかが知れているから、しまいにはいやになってくる。そこで一日のしめくくりはウィスキー・オン・ザ・ロックス。正気を保つ妙薬である。
そんなときエラ・フィッツジェラルドの歌っていた Smoking, drinking, never thinking of tomorrow という歌詞をよく思い出す。たしか never thinking OF tomorrow と、of をずいぶん強調して歌っていたように記憶しているので、ときどき真似をして「never thinking オブ tomorrow」と、素っ頓狂な声を出して口ずさむことがある。
このすぐあとはノンシャラーン(nonchalant 英語では最後の t も発音)とつづくのだが、これフランス語だね。年代物の仏和辞典を引くと、「呑気な、放逸な、無頓着な、無関心の、懶惰な、いい加減な、だらしのない」(新仏和中辞典 白水社)だそうである。「懶惰」か……ふと太宰治を連想してしまったけれど、話の収拾がつかなくなるからやめておこう(笑)。
禁煙主義者が幅を利かせるこのご時世に、ぷかぷかタバコを吹かしながら酒を飲むんだから、なるほどノンシャラーンにちがいない。それに酒場の請求書なんぞシュレッダーにかけちまえばいいんだから、ノンシャラーン。だれになんといわれようとも、問題ないと勝手に認識し、わしゃ知らーんで、ノンシャラーン。
ノンシャラーンも徹すればたいしたものだと思うが、某首相のようにノンシャラーンな悪人になるのはなかなかむずかしい。善良なる市民がいくら修行したって、ああはなれまい。
真面目にも徹し切れず、ノンシャラーンにもなり切れない。モヤモヤした気分のまま、とうとう12月を迎えてしまった。失われた時間はノーリターン。
Comments
「ノンシャラーン」?
無学な私のこととて思わず「?」なので、本文を読み始める前にちょいとググってみると、最初に目に入ったのは室蘭にあるらしいレストラン。はて、薄氷堂さんは室蘭においでか・・・と思いきや・・・
ノンシャラーン・・・いい言葉ですなあ。
Posted by: 三友亭主人 | December 07, 2019 07:35
>三友亭さん
こういう名前のお店はあちこちにありそうな気がしますよ。
大阪で「レゾンデートル」というお店をみつけてビックリしたんですけど、そのすぐ隣に「ノンシャラーン」を開店するといいかも。
さてでたらめに書いたんですけど、「わしゃ知らーん」というのは、案外原義に近いみたいです(笑)。某首相よりも某官房長官にピッタリ?
Posted by: 薄氷堂 | December 07, 2019 23:04