Daily Oregraph: おれが歩けば……
臨港鉄道の線路が姿を消したと思ったら、今度は近所の銭湯が取り壊された。これまた長いつきあいだから、ちょっとショックである。
こちらは2000年8月13日に撮影した写真。角の薬屋さんは銭湯よりもだいぶ前に姿を消している。
これが本日の夕方撮影したもの。なんとなく別の町に来たような感じさえする。
長年同じようなコースを歩いているうちに変わるのは景色だけではない。音もまたそうだ。
たとえば次の角を曲がると、やかましく吠える犬がいるとしよう。犬の姿は見えないけれど、ぼくが通りかかると必ず吠える。犬の分際で無礼なやつだが、毎度吠えられると、「おれが歩けば犬が吠える」という一種の法則のようにも思えてくる。そろそろ吠えるぞと身構えたとたんにワンワンとくるのである。
それがある日ぴたりとやむんだから、諸行無常である。ふつう人間様のほうが犬より寿命が長いから、それも当然かも知れないが、ハハア、あいつとうとうあの世へ行ったか、と思う。
気分がせいせいしないといえばウソになるけれど、ワンワンいう声が聞こえなければ聞こえないで、しばらくの間妙な気分になるものだ。法則に従って吠えてくれなくては困る、と思うのである。
線路も消える。銭湯も消える。犬も吠えなくなる。ああ、残ったのはおれだけか……
Comments
諸行無常・・・ですなあ。
そんなこの世の条理を知ってか知らずか、己の立場にしがみついているこの国の代表もいますが・・・その代わりにこの国が・・・
Posted by: 三友亭主人 | September 05, 2019 22:15
>三友亭さん
ああ、酒がまずくなりますから、例のお方の話はなしにしましょう(笑)。ほんと、縁起でもないですよ。
ああいう愚かな連中は、久延彦さんのご神力をもって成敗していただきたいものです。
Posted by: 薄氷堂 | September 07, 2019 00:03