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June 09, 2019

Daily Oregraph: Money Talks (2)

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 町工場の女工さんの時給が300円という試算は、いくらなんでもひどすぎる……とは、ぼくも思う。しかも住宅手当はもちろん、交通費も支給されないのである。実家から通うか、共同で間借りでもしないないかぎり、とてもまともな生活はできないだろうし、まさか……といいたいところだが、いま労働問題の文献を読む余裕はないから、もう少しその前提のまま進めよう。

 さて当時ニューヨークの路面電車乗務員(運転手と車掌)の賃金は一日2ドルであったらしい。ところがトリッパー(tripper)という、いまでいう「非正規」雇用の労働者を、会社は雇いはじめた。ワントリップいくら、つまり乗務回数に応じて賃金が支払われるからトリッパーである。

 彼らはラッシュアワーの時間帯にのみ乗務し、それが過ぎると仕事はない。報酬はワントリップあたりわずか25セント。

 天気がよくても悪くても、朝には車庫に来て、仕事をもらえるまで待機しなくてはいけない。そうして待たされても、もらえる仕事は一日平均2乗務である。つまり50セントもらって3時間ちょっと仕事をする。待機時間はカウントされない。(第43章)

 なんと一日たったの50セントだから、一週6日働いたとしても週給3ドルに過ぎない。これではとても食べていけないから、たいていはあとの半日なにか別の半端仕事をしていたのだろう(しかしラッシュアワーが朝夕の二回であることを考えると、それも疑問である)。

 まったくひどい待遇だが、このトリッパーの出現によって、正規職員の生活がおびやかされる事態になった。労働時間は一日10時間から12時間、はては14時間にもなったという。

 このままでは、遠からずして一日2ドルの正規の仕事はほとんどなくなることを恐れた彼らは、トリッパーシステムを廃止して、労働時間を一日10時間に戻し、賃金を25セントアップすることを要求してストに突入した。

 一日10時間も働いて2ドルの賃金とすれば、土曜半ドンなしでまるまる6日勤務するとしても週給12ドル。1ドル2,700円説を適用すれば32,400円、一ヶ月あたり約13万円になる。たとえ1ドルにもっと価値があったとしても、ぎりぎり生活するのがやっとの低賃金であったことはまちがいないだろう。

 正規乗務員が怒るのももっともな話だ。しかも彼らの生活を脅かすトリッパーが、どうやって生きていたのか不思議なほどの超低賃金であったことには唖然とするしかない。つまり問題なのは、貧乏人と超貧乏人との間の格差であり、貧乏人が分断されたことである。

 最近の日本国の情けないありさまを知るわれわれにとって、120年前のこの小説の世界はけっして他人事ではないと思うのだが、いかがであろうか?

 せっかくだから、次回は路面電車ストライキの様子について、少しだけ詳しく見ていこう。

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