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June 07, 2019

Daily Oregraph: Money Talks (1)

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 アメリカ自然主義(ナチュラリズム)文学の祖セオドア・ドライサー(Theodore Dreiser)の処女作は、1900年出版の『シスター・キャリー(Sister Carrie)』である。シスターといっても修道女ではなく家族内での愛称で、なんといったらいいか、花子さんを「花子ねえ(ちゃん)」と呼ぶようなものらしい。

 お説教くさいナレーションの目立つドラマみたいなところがやや難点だけれど、一種独特の迫力があって、なかなか読ませる小説である(岩波文庫に翻訳あり)。本筋は本筋として、この作品はまた「お金をめぐる小説」でもある。

 一々記録していないから詳細は省くとして、たとえば田舎町からシカゴに出てきたキャリーが女工としてはじめてもらった週給は4.5ドルである。4.5ドル? さて現在の日本円に換算してどれだけの価値があったのか……というのが大いに気になるところだ。

 土曜日(たぶん半ドン)に給料をもらったのだから、平日勤務09時~17時として、一週40.5時間(キャリーの働いた町工場では昼休みは30分のみ)。時間当たり11.1セントという計算になる。当時最低賃金法などなかったはずだから、相当に低賃金だったと推定して、時給300円とすれば、週給12,150円である。ところがこの計算だと1ドル=2,700円にもなる。いくらなんでもそれは高すぎのようだし、ほんとうだろうか? (当時の労働条件については調べていないので、おおざっぱな話であることをご承知おきいただきたい)

 ほかに手がかりになりそうなのは、高級ではないがこじゃれたレストランで「サーロインステーキのキノコ添え」が1.25ドル。ちょっと判断がむずかしいけれど、女にいいところを見せようとして注文するとしたら、3,375円というのはありそうな価格のような気がする。

 途中省略して、物語最後の方にはドヤ街最低の安宿一泊12セントとある。上の比率で計算すると、一泊なんと324円! たしか大阪の簡易宿泊所で一泊500円というのがあるらしい。ニューヨークのバウアリー地区に当時それよりも安い宿泊所があったと仮定すれば、ぼくのあてずっぽうも案外デタラメとはいえないようだ。まず1ドル2,500円を下ることはないだろうし、3,000円くらいだった可能性さえあると思う。

 キャリーはその後女優への道を歩み、週給十数ドルからスタートし、やがて持ち前の美貌と才能を発揮して週給150ドル以上(やはり上の比率で計算すると40万円以上)へと出世する。

 だから君もキャリーのようにがんばればいいのだ、などと竹中平蔵氏みたいなことをいってはいけない。そんな粗雑な神経では、自然主義小説のパイオニアになれるはずがないのだから(笑)。

 今日のところは週給4.5ドルでは、とても1.25ドルのサーロインステーキは口に入らないという事実を噛みしめるにとどめ、次回はこの小説からもうひとつだけ、ニューヨーク市路面電車労働者のストについてご紹介したいと思う(しまった、メモを取っておけばよかった!)。

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