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June 29, 2019

Daily Oregraph: 裏庭画報 ヤマブキショウマ

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 たしか去年まではみかけなかったはずのヤマブキショウマが咲いていた。どこからやって来たのか、謎である。

 「北海道から九州にいたる山地や高山に自生」するというのだが(小学館『万有百科大事典』による)、わが家は山地でも高山でもない。道東一帯は低温だから、平地でも多くの高山植物が見られるのである。

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 これはおまけ。チンゲンサイの花である。素人目にもアブラナ科の花とわかり、たしか小松菜の花もこんなだったと記憶している。

 今年は気温が上がらなかったので、葉が十分に成長する前に花をつけたようだ。しょうがないから、小ぶりなまま収穫し、晩のおかずにして食べてしまった。

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June 26, 2019

Daily Oregraph: 楠を見る男

 最近は部屋にこもることが多いので、なかなか写真が撮れない。上手下手に関係なく、絵のない絵日記はありえないから、それは非常に困る。絵が欲しいのは絵日記や絵本だけではない。ディケンズの小説のように、挿絵あればこそ時代の風俗もわかるし、おもしろさも倍増する。もっと挿絵入りの小説本があっていいと思う。

 さて、絵は自分で描かねばならないという法律はない。画料を支払って専門家に頼むという方法もあるけれど、そんな余裕はないぜ、という自己責任で貧乏になった諸君もきっといるだろう。

 しかし人間万事金次第という連中には想像もつかぬだろうが、一文にならなくとも絵を提供してくれる人はたしかにいるんだから、世の中けっして捨てたものではない。

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 堂々たる楠の勇姿に圧倒された当社大阪通信員が写真を送ってくれた。無給だというのに、実にありがたいことである。いずれ大阪へ遊びに行ったら一杯おごるから、期待しないで待っていてくれ。

 おい、たまには街を撮ったらどうだい、と提案しても、彼がスマホのレンズを向けるのは、たいてい植物である。どうも植物から生命力をもらっているふしがある。光合成ならぬ緑合成人間なんだろう。

 写真はどこかの公園で撮ったもののようだ。いいね。こんな場所を散歩して、歩き疲れたら立呑み屋で一杯なんてのも悪くない。いつになったら実現するか知れないけれど……

 あ、暑苦しい夏には絶対行かないからね(笑)。

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June 22, 2019

Daily Oregraph: 大阪の赤い花

-銀杏(イチョウ)に赤い花が咲くって知っていたかい?

 大阪通信員からそんなメールが届いた。知りまへん。我不知道。Je ne sais pas. 第一釧路にイチョウの木なんてないのである。調べてみたら、雄花は黄色、雌花は緑らしい。

 しかし写真がないから「赤い花」といわれても見当がつかない。そこで写真を撮って送ってくれと催促したら、おれのスマホじゃズームで撮れないんだ、という。すまん、無給だからズームレンズ付きデジカメは買えないよなあ……

 それでも撮ってくれたから、まあごらんあれ。

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 問題の部分がちょっとわかりにくいから、

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トリミングしてみると、たしかに赤い花が見える。なるほどこれはめずらしいにちがいない。

 おい、これはきっといいことがあるぜ。赤い花だからね、なにかパッと華やかな出来事が待っているはずだ。ゆめ疑うことなかれ。

【7月28日追記】この赤い花について、撮影者本人より、「実はつる性の植物の赤い花であって、銀杏の花ではないことがわかった」という連絡があった。つまりかんちがい。暑さにやられたのだろうからご容赦のほど。

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June 21, 2019

Daily Oregraph: 相生坂下のミヤマニガウリ

 昨日妖怪に出会ってから運が向いてきたらしい。

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 ゴールデンバットのような葉っぱは、ご存じ(かどうかは知らないが)ミヤマニガウリである。ミヤマニガウリは春採湖畔に行けば、いやというほどたくさんある。ありすぎるほど繁茂しているのだが、ふしぎなことに、なぜかほかではみかけない。温根内でも見たことがない。

 だから一昨年相生坂(西側)の下でこいつを発見したときは、ほんとうにビックリした。世紀の発見ではないかと思ったくらいである(笑)。ただしほんの二株ばかりにすぎず、春採湖畔の大勢力に比べると、まるで本隊にはぐれた兵隊である。どうしてこんな場所までやって来たのだろうか?

 ところがこのはぐれミヤマニガウリ、去年は何度同じ場所を通っても見当たらなかったのである。目を皿のようにして探してもみつからない。あわれ、死に絶えたのだろうと思った。

 そして今日、場所は覚えているから、もしやと思って目をやると、探すまでもなく同じ場所に葉っぱがあるではないか。おお、無事であったか。

 こいつが花を咲かせるか、実をつけるか、今年はときどき観察するつもりである。

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June 20, 2019

Daily Oregraph: 妖怪と詩人と

 いつものコースを散歩した。一応コンパクト・デジカメは首からぶらさげているのだが、最近ではめったに写真を撮ることはない。どこにレンズを向けても定点撮影になってしまいそうな気がするのである。

 もちろん狐狸妖怪のたぐいでも出現すれば話は別だ。実際狐ならこのへんにもいる。しかしキタキツネじゃありきたりでつまらない。からかさ小僧、大入道、ぬりかべなんて連中が目の前に現れることはないだろうから、まあいいさ、今日はひたすら歩くことにしようと思っていたら、

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正直いって、これにはギョッとした。たかがプラスチックの人形にすぎないのだが、妙に落ち着かない気分がする。紙にマルを書いて点々を打ち、横棒一本引いただけでも人の顔に見えることを考えると、こいつはまさしく人間そのものだ。しかもぱっちり目を開いているから、からかさ小僧の何倍も気味が悪い。

 う~む、意外にも妖怪に出会ってしまったらしいな。

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 知人(しりと)の浜に、めずらしく人影を発見した。妖怪ではない。最初は近くの漁師さんかと思ったが、そうではなかった。

 啄木だ。現代の石川啄木にちがいない。啄木はじっと海を見ていた。お顔の判別できぬ距離だからよかろうと、詩人のお姿を勝手に撮影させていただいた。

 本日は思わぬ収穫があったというべきだろう。

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June 17, 2019

Daily Oregraph: Money Talks (最終回)

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 「話せばわかる」とはよくいわれることばである。暴力をふるわなければ警察は出動しないのだから、労働者側はあくまでも平和的に交渉すべきだ……当然そういう意見も出てくるだろう。穏当な意見である。実際に、

 ストの参加者たちは、リーダーや新聞の助言に従って、平和的に闘いを進めていた。目立った暴力沙汰は起こらなかったのである。(第44章 以下同様)

 しかし一日ごとに運行される電車の数は増え、会社側からはストは無力だとする声明が次々と発せられる。これに怒った労働者たちは、結局平和的なやりかたをつづけていては会社を利するだけで、いずれすべての電車が運行されれば、自分たちは見捨てられると考え、ついにスト4日目には実力行動に打って出る。

 突然彼らは燃え上がった。一週間というもの激動と緊張とがつづいた。電車は襲撃され、乗務員たちは襲われ、警官は組みつかれ、レールは引きはがされ、銃声が轟き、とうとう路上では乱闘や暴動が頻発し、町はミリシアに包囲されるに至った。

 とまあ、大変な事態になったわけだが、そんなこととはつゆ知らず、電車の運転技術を仕込まれていたにわか運転手は、いよいよ電車を出発させることになった。電車には護衛の警官二名が同乗する。

 あぶなっかしい運転で街角を曲がると、ひとりの少年が「スキャブ! (Scab!)」と罵声を浴びせる。スキャブというのは、スト不参加者やストによって生じた欠員を埋める労働者のことをいう。ようするに「スト破り」という意味だが、語感としては「ブタ野郎」あたりが近いんじゃないかと思う。

 次の角では六人ほどの男達がヤジを浴びせる。さらに三四丁ほど進むと、線路に置き石があって電車を止めると、スト参加者やそのシンパの集団が説得をはじめる。

 「あんた、電車を降りなよ」と一人がもの柔らかにいった。「あんただって人様のおまんまを取り上げたかないだろう?」

 そこに同乗の警官が割って入って、言い合いがはじまり、ちょっとした騒ぎになる。

 「どかんか!」と警官は叫んで、警棒を振り回した。「脳天に一発くらわすぞ。どけ!」

 そしてほんとうに一発食わすと、だれかが警官に拳固をお見舞いする。幸い大事には至らず、置き石を片づけていると、群衆からは「貧乏人から仕事を奪うスキャブ野郎め!」などと、さまざまな罵声が浴びせられる。

 置き石を片づけ終って電車を発車させようと、

 二人の警官が運転手のとなりに乗り込み、車掌がベルを鳴らすと、ドスンドスンと音を立てて電車の窓や乗降口から大小の石が飛び込んできた。石のひとつはぎりぎりのところでハーストウッド(運転手)の頭をかすめた。もうひとつの石は背後の窓を粉々に割った。

 こんなことが一日中つづくのだからたまらない。さらに描写はつづき、一気に読ませるところなのだが、途中そっくり省略して、車庫に戻る寸前では群衆が押し寄せ、運転手は引きずり降ろされ、警官との間でなぐる蹴るの乱闘になる。かくして大混乱のうちにこの日は暮れる。

 さてもうお気づきのとおり、ストを打つのも貧乏人なら、スト破りして電車を動かすのも貧乏人、そしてストを鎮圧する現場の警官も(貧乏人とはいえないとしても)しょせんは安月給取りにすぎない。

 「貧乏は自己責任だ」などといって涼しい顔をしている連中は、けっして現場に姿を現わしはしない。現場では、三者とも目の前のわかりやすい相手を敵とみなして互いに傷つけ合っているわけだ。つまり損をするのは貧乏人ばかりである。

 しょせん昔の小説中の話じゃないか、というのはあたらないだろう。現在では貧乏が底上げされたというだけで、基本的にはたいして変っていないのだから、よく現実を見たほうがいい。さまざまな手を用いて、生活保護受給者をののしらせ、けっして贅沢などしていない大多数の年金受給者を憎ませ、堅気に暮している在日朝鮮・韓国人たちのありもしない在日特権を非難させようとする。つまり貧乏人を分断することで得をするのは誰なのか、お互いよく考えたほうがいいんじゃないかと思う。

 おっと、いつの間にかドライサー先生の調子が伝染してしまったらしいけれど、ちょっと立ち止まって、「あれはほんとうかしら?」と、なにごとも一度は疑ってみる人がひとりでも増えてくれるとうれしいのだが……

【付記】本日の写真は、(たぶん)運動会の練習風景。記事の内容とはまったく調和しないけど、不協和音にも味がある(?)。

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June 15, 2019

Daily Oregraph: Money Talks (3)

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 実はこの小説、ストのドキュメンタリではないので仕方がないけれど、結末がどうなったかまでは書いていない。それを承知でお読みいただきたいと思う。

 さてストライキが始まると、会社側も黙ってはいない。電車を運行させようとするのだが、これは一種のいくさなのだから、それは当然だろう。しかし人員がいなくては電車は走らないので、会社側はまずこう通告する。

 職場放棄した諸君のうちには心ならずもストに参加した者もいるだろうから、いついつまでに申し出て当方の条件を呑めば復職を認め、身分も保証する。しかしこれに応じない者は解雇し、その欠員を新たに採用して補充するから承知のこと。

、その一方では新聞広告を出して、運転手経験のある人材を募集するのだが、おいそれと必要数の経験者がみつかるわけはない。実際には素人をごく短期間で訓練し、にわか運転手に仕立て上げて電車を走らせるという無茶な芸当をする。

 前回も書いたように、貧乏人にも等級があって、広告に応募するのは職がなくて食いつめた連中、つまりほとんどが下級貧乏人である。どうかすると内心ではストライキに同情していたりして、好んでスト破りしようとは考えてもいないのだが、文無しだからそんなことをいう余裕などないというわけだ。

 ここから先はぼくの感想をまじえていることをお断りしたうえで……

 会社側には資金がある。当然宣伝力もある。秩序の名の下に、警察も味方してくれる。やがてはミリシア(militia 民間人による武装組織)も動員される。つまり最終的にはお国が面倒をみてくれるということだ(ここは大事なポイントだろう)。

 一方のストライキ側は、消耗戦になれば資金が枯渇する。もしマスコミがデマや大本営発表を大量に垂れ流せば、資金不足の彼らは宣伝力においても圧倒的に不利である。市民の支持や協力が得られなければ、たちまち孤立する。負ければ首になって一家が路頭に迷う。警察やミリシアが相手では戦力的にとても勝ち目はない。なにしろ秩序の本家である国を敵に回すのだから絶体絶命である。それを承知の上でストに入ったのはよくよくのことだと考えなければならない。

 とまあ、緊迫した情勢になったわけだが、ストの結末がわからないのはいかにもじれったい。それなら歴史の勉強をすればいい……ことは承知しているけれど、う~ん、今度はアメリカ近現代史かいな(笑)。

 ろくに知りもせずにえらそうな顔をしてこれ以上書くわけにはいかないから、次回(最終回)は、スト破り要員のにわか運転手が電車を走らせる場面をざっと見ることにしたい。

【付記】今日は写真を撮っていないので、苦しまぎれに2002年の9月に撮った嵐電の写真を加工して掲載した。鳴滝のあたりだと思う。なおあたりまえのことながら、記事中のストライキと京福さんとは何の関係もないから念のため。

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June 13, 2019

Daily Oregraph: 裏庭画報 小松菜収穫

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 ちょっとした仕事が二つほど入ったので、ブログをさぼっていた。どうせ毎日遊んでいるんだろうと思われてはシャクだから、ここに明記しておく。

 本日は小松菜の初収穫。種をまいたのが五月四日だから、ずいぶん日数がかかっている。いかに釧路の気温が低いかおわかりいただけるだろう。もう少し待てばもっと大きくなるけれど、このくらいのサイズのほうがうまいと思う。

 すでに虫食いの穴がポツポツ見えるけれど、来月からは虫の活動が活発になるから、もっとすごいことになる。雑草もはびこりはじめた。たとえ猫の額ほどの地面でも、自然を相手にするのはしんどいものだ。

 ニューヨークのストライキのつづきは、まだ手を着けていない。原作は迫真の描写で一気に読ませるのだが、かなりのページ数だし、メモを取っていないから(小説を読むのにメモを取らないのがふつうだとは思うが……)、うまくまとめるのがむずかしい。ちょっと考えてからにしたい。

【業務連絡】

 11日に英単語帳がやっと16,000項目を越えました。どこまでつづくぬかるみぞ(笑)。

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June 09, 2019

Daily Oregraph: Money Talks (2)

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 町工場の女工さんの時給が300円という試算は、いくらなんでもひどすぎる……とは、ぼくも思う。しかも住宅手当はもちろん、交通費も支給されないのである。実家から通うか、共同で間借りでもしないないかぎり、とてもまともな生活はできないだろうし、まさか……といいたいところだが、いま労働問題の文献を読む余裕はないから、もう少しその前提のまま進めよう。

 さて当時ニューヨークの路面電車乗務員(運転手と車掌)の賃金は一日2ドルであったらしい。ところがトリッパー(tripper)という、いまでいう「非正規」雇用の労働者を、会社は雇いはじめた。ワントリップいくら、つまり乗務回数に応じて賃金が支払われるからトリッパーである。

 彼らはラッシュアワーの時間帯にのみ乗務し、それが過ぎると仕事はない。報酬はワントリップあたりわずか25セント。

 天気がよくても悪くても、朝には車庫に来て、仕事をもらえるまで待機しなくてはいけない。そうして待たされても、もらえる仕事は一日平均2乗務である。つまり50セントもらって3時間ちょっと仕事をする。待機時間はカウントされない。(第43章)

 なんと一日たったの50セントだから、一週6日働いたとしても週給3ドルに過ぎない。これではとても食べていけないから、たいていはあとの半日なにか別の半端仕事をしていたのだろう(しかしラッシュアワーが朝夕の二回であることを考えると、それも疑問である)。

 まったくひどい待遇だが、このトリッパーの出現によって、正規職員の生活がおびやかされる事態になった。労働時間は一日10時間から12時間、はては14時間にもなったという。

 このままでは、遠からずして一日2ドルの正規の仕事はほとんどなくなることを恐れた彼らは、トリッパーシステムを廃止して、労働時間を一日10時間に戻し、賃金を25セントアップすることを要求してストに突入した。

 一日10時間も働いて2ドルの賃金とすれば、土曜半ドンなしでまるまる6日勤務するとしても週給12ドル。1ドル2,700円説を適用すれば32,400円、一ヶ月あたり約13万円になる。たとえ1ドルにもっと価値があったとしても、ぎりぎり生活するのがやっとの低賃金であったことはまちがいないだろう。

 正規乗務員が怒るのももっともな話だ。しかも彼らの生活を脅かすトリッパーが、どうやって生きていたのか不思議なほどの超低賃金であったことには唖然とするしかない。つまり問題なのは、貧乏人と超貧乏人との間の格差であり、貧乏人が分断されたことである。

 最近の日本国の情けないありさまを知るわれわれにとって、120年前のこの小説の世界はけっして他人事ではないと思うのだが、いかがであろうか?

 せっかくだから、次回は路面電車ストライキの様子について、少しだけ詳しく見ていこう。

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June 07, 2019

Daily Oregraph: Money Talks (1)

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 アメリカ自然主義(ナチュラリズム)文学の祖セオドア・ドライサー(Theodore Dreiser)の処女作は、1900年出版の『シスター・キャリー(Sister Carrie)』である。シスターといっても修道女ではなく家族内での愛称で、なんといったらいいか、花子さんを「花子ねえ(ちゃん)」と呼ぶようなものらしい。

 お説教くさいナレーションの目立つドラマみたいなところがやや難点だけれど、一種独特の迫力があって、なかなか読ませる小説である(岩波文庫に翻訳あり)。本筋は本筋として、この作品はまた「お金をめぐる小説」でもある。

 一々記録していないから詳細は省くとして、たとえば田舎町からシカゴに出てきたキャリーが女工としてはじめてもらった週給は4.5ドルである。4.5ドル? さて現在の日本円に換算してどれだけの価値があったのか……というのが大いに気になるところだ。

 土曜日(たぶん半ドン)に給料をもらったのだから、平日勤務09時~17時として、一週40.5時間(キャリーの働いた町工場では昼休みは30分のみ)。時間当たり11.1セントという計算になる。当時最低賃金法などなかったはずだから、相当に低賃金だったと推定して、時給300円とすれば、週給12,150円である。ところがこの計算だと1ドル=2,700円にもなる。いくらなんでもそれは高すぎのようだし、ほんとうだろうか? (当時の労働条件については調べていないので、おおざっぱな話であることをご承知おきいただきたい)

 ほかに手がかりになりそうなのは、高級ではないがこじゃれたレストランで「サーロインステーキのキノコ添え」が1.25ドル。ちょっと判断がむずかしいけれど、女にいいところを見せようとして注文するとしたら、3,375円というのはありそうな価格のような気がする。

 途中省略して、物語最後の方にはドヤ街最低の安宿一泊12セントとある。上の比率で計算すると、一泊なんと324円! たしか大阪の簡易宿泊所で一泊500円というのがあるらしい。ニューヨークのバウアリー地区に当時それよりも安い宿泊所があったと仮定すれば、ぼくのあてずっぽうも案外デタラメとはいえないようだ。まず1ドル2,500円を下ることはないだろうし、3,000円くらいだった可能性さえあると思う。

 キャリーはその後女優への道を歩み、週給十数ドルからスタートし、やがて持ち前の美貌と才能を発揮して週給150ドル以上(やはり上の比率で計算すると40万円以上)へと出世する。

 だから君もキャリーのようにがんばればいいのだ、などと竹中平蔵氏みたいなことをいってはいけない。そんな粗雑な神経では、自然主義小説のパイオニアになれるはずがないのだから(笑)。

 今日のところは週給4.5ドルでは、とても1.25ドルのサーロインステーキは口に入らないという事実を噛みしめるにとどめ、次回はこの小説からもうひとつだけ、ニューヨーク市路面電車労働者のストについてご紹介したいと思う(しまった、メモを取っておけばよかった!)。

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June 02, 2019

Daily Oregraph: 裏庭画報 コンロンソウ

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 とうとう六月か。今年もコンロンソウの季節がやって来た。

 毎年同じような写真を撮っているから、よほどネタがないのだろうと思うのは素人の浅はかさというものだ(笑)。これはね、挨拶ですよ。ひさしぶりに友人に出会ったら、

 -よう、元気そうだな。

と声をかけるのがふつうだろう。

 ただしこの友人がひどく無口で、返事をしてくれないのは残念である。

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