Daily Oregraph: 裏庭画報 枯草無念流
笹がかろうじて色あせた緑を保っているほかは、すべてが枯れてしまった。ドライフラワーというより、植物の骨格標本みたいなものである。
この連中、見たところ脳味噌が空っぽになって無念無想、風がカサカサ音を立てて通り過ぎるばかりだから、なるほど冬を越すには好都合にちがいない。達人の境地ともいえよう。
しかしこちとらボケはじめたとはいえ、灰色の脳細胞はまだ細々と活動をつづけているから、冬の寒さはこたえるし、悪の栄える浮世が腹立たしくてならない。無念無想の境地に達するには、死を待たねばならぬようだ。南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。

今日もナナカマドの枝を数本払った。もちろん後始末は大変だけれど、単純な片づけ作業にもいいところはある。ノコギリでギコギコやっている間は俗世間を忘れて、やや無念無想に近い状態が実現するからである。
その楽しみはやっぱり来年の春までおあずけにしておこう……
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