Daily Oregraph: 定例散歩 10月15日
-あんた、白髪が増えたねえ。
-お互いさまだよ。
おだやかな陽気に誘われて、いつものコースを散歩した。ほとんど風はないし、歩いているうちにうっすら汗がにじんでくる。
知人の浜にさしかかると、打ち寄せられた昆布の匂いがいつもより強く漂ってきた。浜へ降りようかとも思ったが、流木に腰かけてウトウトと居眠りしそうだから、やめておいた。だれに叱られるわけでもなし、居眠りしたっていいんだけど……
おやおや、どなたかが市役所に通報したらしい。この種の苦情は面と向っていいにくいから、無理もないか。
実はぼくもキツネに餌をやっている現場を目撃している。キツネの一家がうろついているからには、きっと毎日餌にありつけるんだろうと思ったとおりであった。
キツネというのはいつも困ったような、いまにも泣きそうな顔をしているから、哀れを誘うのだろう。だから餌をやりたくなる気持もわからないではない。悪気がないこともわかる。しかし狭い町内がキツネだらけになるのは、保健衛生上からもいささか問題である。
野生動物に餌を与えるのがよくないのは、キツネにかぎった話ではない。ダブルスタンダードは問題大ありだから、少しずつ農業に被害を与えはじめているタンチョウヅルの保護もそろそろ考えどきだと思う。
見た目のよいタンチョウは、観光の金づるだからといって特別扱いされるのだろう。しかしキタキツネに餌をやれば叱られるのに、タンチョウに餌を与えれば美談になるというのは、ぼくにはどうも納得できないのである。
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