Daily Oregraph: 霧の日
すさまじい音を立てて海が鳴っている。風もないのに波が立ち、地獄の釜のように煮えくり返っているのは、はるか彼方の台風のせいだろうか。
近年はずいぶん霧が少なくなったように感じる。しかし釧路の夏といえば、霧がなくてははじまらない。
昔はいかにも厭世的な霧笛の音が空に響き渡り、日頃は威勢のいいお兄さんも、憂いを含んだハムレットみたいな顔をして、to be to be、いやトボトボと歩いていたものだ。
万物を押し黙らせる威力のあったその霧笛も、信号所が廃止されて以来ぱったりと聞こえなくなった。
しかし霧笛が鳴らなくとも、霧には人を寡黙にする力がある。霧の向こうに希望は見えないからだ。
いや、待てよ。そうともかぎるまい。
この先の踏切に近づけば、妙齢の美人がたったひとりで海をながめているかもしれないではないか。そうしたら、彼女の横顔をこっそり見てやろう。
……う~む、やっぱりそんな幸運には巡り会えなかったよ(笑)。
Comments
釧路という異国♪というキャッチコピーを最近知りました。
ずっと前は、「挽歌の町 釧路」でしたか⁉︎
霧笛は、もう聞かれませんね。
おやすみなさい^ ^
Posted by: holly | July 29, 2018 23:51
>hollyさん
残念ながら『挽歌』のおねえさんみたいな女性には出会えませんでした(笑)。
ぼくが子どもの頃の霧笛は、廃止前のただ「ボー」と鳴るものとはちがって、悲痛なうめき声みたいな、なんとも形容しがたい陰気な音でした。
あれを聞いて元気の出る人なんていないから(笑)、よく「活力に乏しい」と評される釧路人気質は霧笛によって作られたんじゃないか、というのがぼくの考えです。
霧笛も廃止され、霧もめっきり減ったようですから、少しずつ釧路人にも活力がよみがえるかな?
Posted by: 薄氷堂 | July 30, 2018 09:09
初コメいたします。m(__)m
私も釧路に住んでいたことがありますが,
写真の線路は臨港鉄道の知人の石炭桟橋近辺でしょうか?
Posted by: かっつー | August 02, 2018 22:17
>かっつーさん
よくご存じですね。釧路市民でも知らない方が多いんじゃないかと思います。
左側のレールの先が石炭桟橋です。今も石炭列車は走っていますよ。なお右側のレールはは使われていないようです。
このあたり、まだ昭和の面影が残る貴重な場所です。
この線路沿いを散歩してすでに半世紀以上。ぼくも人間国宝に近づいてきました(笑)。
Posted by: 薄氷堂 | August 02, 2018 23:08