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February 26, 2018

Daily Oregraph: 二月の幽霊話

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 ここを歩くのはほんとうにひさしぶりである。

 確定申告をすませて(たいした稼ぎもないのに……)ホッと一息ついたので、散歩に出ようという気になったのだが、風はまだ冷たく、とても足取り軽くとはまいらない。彩りというものが一切ないから、ひたすら足元を見ながら、肩をすぼめてトボトボ歩くしかないのである。

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 例の廃屋はいっそう傾きを増したように見える。

 明日をも知れぬわが身と重なり、気になってしかたがないのである。長生き必ずしも幸福とは限らないのだから、いっそのこと早く自壊して楽になって欲しいと思わぬこともない。

 それにしてもこうまで荒れ果ててしまっては、幽霊だって逃げ出すにちがいない。

 そもそも廃屋や墓場を幽霊の住処と思いこむのは大まちがいである。幽霊が人間のなれの果てである以上、寒風吹き込むむさ苦しいあばら家や、ジメジメした土の中などに住みたがるわけがない。

 幽霊となって出てくるくらいだから現世に未練のあることは明らかで、清潔かつ快適な冷暖房完備の住居のほうを好むに決まっているではないか。各種アルコールがあれば申し分ない。

 デタラメをいうな! とお怒りの方もいらっしゃるだろうが、死んだあとのことはだれにもわかりようがないのだから、なんとでもいえるのである。だから死んでみたら、案外薄氷堂説が正しいと証明されるかもしれない。そのときはぜひ報告していただきたい。お待ちしている(笑)。

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 廃屋前の空地をウロウロするキタキツネ。

 どこかで盗み食いをしているのか、だれかが餌を与えてるのか、そうやせ衰えているようには見えない。 しかし相変らず挙動はコソコソとしているし、冬の敗残兵という格である。

 待てよ、おれだって似たようなものか……

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February 22, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 2月22日

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 昨夜は仕事が無事終ったので一人酒盛り。オンザロックの氷は近くのコンビニで……そこは抜かりない(笑)。

 スーパーの棚に初めて見るウィスキーがあったので、どんなものかと思って買い求めたのだが……鳥取のウィスキー侮るべからず。なかなか結構なお味でスイスイのどを通過する。

 どんな味かと聞かれても困る。説明するよりも飲ませてあげたほうが手っ取り早いけれど、今晩には空になるから、来てもムダだよ。

 十勝で鳥取県のウィスキーを味わうというのも乙なるかな。ホテルの部屋で一人というのはわびしく、できれば一緒に飲む相手が欲しいところであった。

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 一夜明けて、部屋の窓から朝日を拝む。朝日がめでたいのは、なにも元旦にはかぎらない。太陽教徒としては、海に昇るお天道さまはことにありがたいのである。

 午前中に無事釧路へ帰着。しばらくは平凡なる日常がつづくことになりそうだ。

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February 21, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 2月21日

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 本日は写真を撮らなかったので、昨夜の船上セキュリティ・チェックポイント。写真で寒さを伝えるのはむずかしいものだ。

 さきほど無事仕事を終了した。あ、本日はタイミングが合わず、ランチの続編はなしね(笑)。

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February 20, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 2月20日

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 上々の天気であったが、夕方やや強い雪が降り出したのには驚いた。どうなることかと思ったら、やがてけろりと止んだので一安心。

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 デッキ上の偶然芸術。ちょいとモンドリアン風である。仕事中にも美を追究する姿勢を買っていただきたい(笑)。

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 本日のランチ。

 右がビーフの煮込み。左はちょっととろみのついたチキン、タケノコ、キノコのスープ。どちらもきわめて美味であった。あっぱれ。

 まずいものを食わされたって、航海中は外食できないのだから、こういう腕のいいコックさんに当たった乗組員はハッピーであろう。ぼくももちろんハッピー。

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February 19, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 2月19日

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 雪の積もったデッキは、とにかく滑る。転倒して打ち所が悪ければ大けがをしかねない。

 足元の悪いときは滑りにくい緑のペンキを塗った通路を歩けというのだが、雪や氷があればいっしょ、盛大に滑る。

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 せっせと雪かきして無事全線開通したけれど、夜になったら昼間融けた雪や氷が緑地帯(?)のあちこちに流れこみ、やっぱり滑るのである。名づけてグリーン・アイスバーン。

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 本日のランチ。魚のスープは一見ギョッとするかもしれないが、ちょいとピリ辛のいい味つけであった。真ん中の黒い物体はポークである。骨つきかと思ったが、そうではなかった。これも見かけは今ひとつだし、肉は固かったけれど、うまかったよ。

 このほかに生野菜のサラダがたっぷり一皿。キュウリ、ニンジン、トマト、レタス、タマネギ。デザートはミカン。ごちそうさまでした。

 出張中はふだん昼飯にろくなものを食べないから、栄養が毛細血管の隅々にまで行き渡り、実にありがたかった。食事を共にすれば、人類はみな兄弟。排外主義に乗せられてはいけませんぞ。

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February 18, 2018

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 2月18日

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 写真は豊似川。前回通りかかったときとはちがって、河原はすっかり雪に覆われている。

 大雪にならず助かった。途中の道路状況は除雪がゆきとどき、なかなか良好、ふだんより少し時間がかかった程度で十勝港に到着した。

 かえって釧路市内の道路のほうが滑って危ない。スピードを殺していたにもかかわらず、ブレーキが効かずにズルズルと滑って、危うく追突しそうになり、まさに間一髪であった。だから市内を走るのに時間がかかったのである。

 気をつけていても、滑るときは滑る。お互いに気をつけるの自乗くらい用心しようではないか。

 おっと、今の時期「滑る」は禁句だったか……(笑)

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February 17, 2018

Daily Oregraph: 港町 on the rocks

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 港町岸壁前の水面が氷に覆われていた。

 さほど厚い氷ではないし、最近豊頃町で評判のいわゆるジュエリー・アイスではないけれど、これはこれでおもしろい。冬の釧路港らしい景色といえるだろう。

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 小型漁船でもこのくらいの氷だとバリバリ割りながら走れそうだが、スクリューは大丈夫だろうか……と、恵比須丸ファンのぼくとしてはちょっと心配である。

 朝は青空が出ていたけれど、昼前から雪。一時降りかたは激しくなったが、午後ふたたび空晴れ渡り、積雪ほんの数センチであった。

 今夜半から早朝にかけてまた雪になるらしいが、心配されていた大雪にはならぬようで、まずは一安心。明日は長距離ドライブの予定があるのだ。

 それにしても、ジジイに雪かきさせるなよ(笑)。頼むぜ、ほんと。

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February 14, 2018

Daily Oregraph: 街を歩いて

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 本日の生存証明写真は苦し紛れに撮った一枚。

 用事があってひさしぶりに町に出たので、ぶらぶらと歩いてみたけれど、真っ昼間の飲み屋街に人影はまばらであった。

 道銀ビルに出来たばかりの図書館へ行ってみようかとも思ったけれどやめにした。あまり気が進まないのである。

 ぼくにとってもっともなつかしいのは、昔のおんぼろ市立図書館だ。先代のそれではなく、そのもうひとつ前の建物である。胸をわくわくさせながらギシギシいう階段を上ると、古本屋みたいなホコリくさい匂いのする閲覧室があった。

 その文化の厚みを感じさせる匂いを嗅ぎながら推理小説なんぞを漁るのが、高校生のころのぼくの楽しみだったのである。

 なんでも新しければいいというものではない。ブランデーと図書館、ついでにいえば博物館も、古いほど値打ちがあると僕は思う(笑)。

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February 10, 2018

Daily Oregraph: あれもダメ、これもダメ

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 本日の船上セキュリティ・チェックポイント。

 なになに、「乗船は許可を要す。持ち物を検査することあり」というのはテロ対策として十分納得できる。「武器・発火装置・爆発物の持込み禁止」……これもごもっとも。

 しかし「携帯電話その他の電子機器は電源を切るか、定められた場所で使用すること」とはちときびしい。物騒な貨物を積んでいるわけでもないのに、一体なんの不都合があるというのだろう。

 おまけに「写真撮影禁止」……という注意は、先ほどこの写真をじっくり原寸大で見て気づいたのである。だからぼくは故意に無視したわけではないし、実際にはとがめられなかった。

 ここまでやかましいことをいう船はきわめて少数派に属すると思う。しかし勝手に写真を撮ると叱られる船もまれにないわけではない。船の上は外国だから、気をつけたほうがいいだろう。

 それにしても注意書きが細かい文字で書かれているのは困るなあ。掲示の位置にも工夫が必要だろう。ふつうこのような場所では、デスクの向うにいる人物にまず視線がいくから、注意書きの存在自体に気づかない可能性が大きいのである。

 中にはもっと細かい注意を箇条書きでびっしり並べた大看板を置いている船もある。全部読むのには、慣れた人でもまず5分、センター試験で落第点を取るような人だと15分以上かかっても読み切れず(笑)、しまいに泣きべそをかくかもしれないという代物である。

 よほどの閑人でもなければそんなものを読みはしまいし、向うだってろくに読まれないことは百も承知しているはずなのに、もし規則破りをみつけたら、

 -たわけ! ちゃんと注意書きを掲示しているのに、どうして読まなかったのだ。

と、お役人みたいなことをいうんだろう。

 海外に出かけてうっかり警告を無視し、思わぬ災難に遭わぬよう、お互い気をつけようという、本日は案外まじめなお話なのであった。

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February 07, 2018

Daily Oregraph: ツララの冷汗

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 北陸の大雪には驚いた。それを思えばとても文句はいえないけれど、この冬はまるでいやがらせをするかのように少しずつ雪が降る。

 今朝も雪の深さはほんの数センチ。雪かきなんぞしなくたってよさようなものだが、やっぱり気になるからスコップを手に外へ出た。われながら模範市民である。

 やがて太陽が顔を出し、いっぺんに暖かくなる……といっても、本日の最高気温は-3.7度だけれど、お天道様の威力は絶大だ。軒先の立派なツララも、昼頃になるとごらんのとおり、すっかりやせ細ってポタポタと冷汗を垂らしている。

 『北越雪譜』には「
屋根の損じたる処」より家内に雪水が漏り、

  
漏は次第にこほりて座敷の内にいくすぢも大なる氷柱を見る時あり

とあるが、現代の家ではさすがにそれはないから、「
是暖国の人に見せたく」ともお見せできないのは残念である(笑)。

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February 05, 2018

Daily Oregraph: 裏庭画報 雪の降りたるは

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 予報どおり雪は降りつづき、今朝もまた雪かきとあいなった。ご近所のおばさまもせっせとスコップをふるっている。

 ふと例の「冬はつとめて雪のふりたるはいふべきにもあらず」を連想し、ひょっとしたら彼女の前世は清少納言ではないかと思った(笑)。

 「香炉峰の雪は……」などと洒落たまねをしたばかりに、「あの子、生意気ね」と同僚から総スカンを食い、雪かきを押しつけられた清少納言は、モンペを着用してミツウマ印のゴム長靴をはき、ブツブツいいながら木鋤をふるうはめになる。

 -なんで秀才のあたしがこんなことしなくちゃならないのよ、まったく。

 庭の松の枝に積もった雪がバサリと落ちて彼女の首筋を直撃すると、遠くからクスクス笑う声が聞こえてきた。女のいじめは残酷である。

 日本文学科に喧嘩を売るわけではないが、「冬はつとめて……」の従来の解釈には問題があると思う。

 京都の冬は冷える。だれだって朝早く蒲団から出たがりはしない。「火など急ぎおこして、
炭持て渡るも」石炭や薪のストーブほど火力があるわけでなし、とても体は温まらない。いやだ、いやだ、冬の早朝はほんとうにいやだ。

 その上雪でも降ろうものなら、いっそう寒々しくて、気のめいることといったら、あらためていうまでもない。おまけに雪かきと来た日には泣きたくなる。


 これが常識に従ったぼくの解釈である。どうも文学の先生には唯美主義的な解釈をしたがる傾向があるからいけない(てなことをいえるのも、いまさら単位を取得する必要がないからなのだが……)。

 朝っぱらから古典に思いをはせつつ久々に裏庭へ回ってみると、これまでに降り積もった雪は25センチほどの深さだったから、やはり今年は少雪である。植物はしっかり生きて、春を待っている。

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February 04, 2018

Daily Oregraph: 雪かきブルース

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 大雪というわけではないけれど、ひさしぶりのまとまった雪である。予報によれば、一日中降りつづくらしい。

 明らかにボーダーラインを越しているから、午前中に雪かきを決行した。降りやんでからすればいいじゃないか、というのは素人の浅はかさで(笑)、それこそ倍返し、雪の重さに悲鳴を上げることになる。二度手間になってもいいからやるしかない。

 たいして積もっていないようでも一汗かいてしまった。かいてもかいても白い雪。出来そこないの山頭火みたいな気分である。

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February 02, 2018

Daily Oregraph: 二月の街

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 あっという間に二月が来た。

 長いことここは閉まったままなのだから、力まかせに戸をドンドン叩いてもムダである。キリンレモンやラッキー・ストライクが欲しければ、近くのコンビニへ行ったほうが話は早い。

 小さな硝子窓の向うに、半分居眠りをしている婆さんでもいれば、ちっとは愛想もあるのだが、今どきそんなタバコ屋はめったにみつからない。実につまらない世の中になったものである。

 というわけで、本日の生存証明写真には、カサカサとしてうるおいのない二月にぴったりの景色(?)を選んでみた。夢も希望もなくてまことに申し訳ない(笑)。

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