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November 30, 2017

Daily Oregraph: 時は飛ぶ

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 気の早い正月用の餅が店先に並ぶ季節になった。さてあと何年この餅を見ることができるだろうか……てなことを考えるようになるとは、つい最近まで夢にも思わなかった。

 今朝 H.G. ウェルズの短編集を読み終えた。SFの古典として知られる例の『タイムマシン』を初めとする21編の作品が収められているのだが、どれも面白く読めた。なにしろ理工系出身の作家だけに、地球の自転がいきなり止まったらどうなるかということまで教えてくれる(あまりの恐ろしさに、ぼくはボーッとしてしまった(笑))。

 『タイムマシン』を読むのは二度目だが、やはり傑作の名に恥じぬ作品だと思う。あえて難点を指摘すると、第一に、緻密な頭脳を持つ用意周到な主人公があまりにも無防備な状態で未来へ乗り込んだのはやや不自然であること、第二に、退化して半ば野獣化した地下人たちに地下の複雑な機械設備がどうして維持できたのか疑問であること。

 しかしそれらはささいな欠点であって、飽きさせず一気に読ませる手腕はさすがである。地球の終末間近の風景を描写した文章などは、豊かな想像力をいかんなく発揮し、たいへん壮大で美しい。

 さてタイムマシンが最初に到着したのは、Eight Hundred and Two Thousand Seven Hundred and One A.D. の世界である。ええと、802千と701だから、802,701年か……う~む、ややこしい。

 ややこしいから、「weblio 英語例文」のサイトでは「紀元802千2701年」などという奇妙なミスをやらかしているが、正しくは八十万二千七百一年である。数字表現に関しては日本語のほうが明快だと思う。

 ウェルズによると、八十万二千七百一年のイギリス地上人はパンも肉も食べず、果物だけで生きているのだそうな。とすれば、その頃には日本地上人も米はもちろん餅も魚も食わないにちがいないけれど、わが民族が果食に耐えられるかどうか……

 小説を真に受けてどうするんだ、というご指摘はごもっともである。よろしい、その頃の日本では正月の餅を売っていないかどうか、このぼくが確かめにいってまいりましょう。

 1895年の小説に登場する機械が21世紀に存在しないわけがありませぬ。タイムマシンをご用意願いましょう。

【追記】 たった今発見したのだが、「weblio 英語例文」では『タイムマシン』から別の例文も引用されており、そちらのほうは「80万2千701年」と正しく和訳されている。いずれにしても、ややこしいからケアレスミスを誘うことはまちがいないと思う。

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November 27, 2017

Daily Oregraph: 裏庭画報 おぢいさんは山へ

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 柴刈りに行ったのではねえ。枯草を刈りに行っんだと。

 -あれま、今の時期にこんなに緑があるとは……

 まわりはみんな枯れてカサカサしとるのに、畑の上だけはフカフカした雑草が広がっとるもんだから、爺さんびっくりしよった。

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 -ほんにええ天気じゃなあ。

 小一時間も枯草を取りよったころには昼飯時分になっとったから、冷や飯の残りを茶漬けにして食うべえかと思うて、谷川に沿うた道を下っておると、

 -はあて、あれはなんじゃい?

 足を止めて見れば、上流からでかい西瓜ほどもある桃がドンブラコドンブラコいうて流れて来よる。

 枯草の時期に桃が流れてくるとは解せん話じゃけんど、性悪のお代官が涼しい顔をして道を説く世の中じゃから、なにが起こっても不思議はなかろう。

 -ひゃあ、えれえもんじゃわい。

 そういうて拾い上げた桃を両手でかかえ、爺様はふもとの家へ戻ったんじゃと。

 庭に桃を置いて、縁側で煙管をスパスパやっておると、隣家の欲張り婆さんが垣根の向こうに顔を出しよった。

 -爺さん、おるか?

 なあにおるのは知っとったんじゃ。欲張りじゃから、爺さんの桃に目をつけよったとみえるわい。

 -おお、婆様か。

 爺様はこの婆さんが苦手でな、近在で高等女学校出たのはわしだけじゃちゅうて威張りくさって、いつも無学な爺様をバカにするんじゃもの。

 -爺さん、おめえまだタバコをやめねえのけ。体に害があるちゅうて、帝大の先生もいうておろうが。おめえは学がねえから「副流煙」なんて知るめえが、えらい迷惑なこっちゃ。

 「ふん、婆様の家まで煙が届くもんか、余計なお世話じゃわい」とは思うたけんど、なにせ婆さんは高女出だもんだから、口ではとてもかなわねえ。

 爺様が苦笑いしとると、たった今桃に気がついたふりをしおって、

 -あんれまあ、えらくでけえ桃じゃのう。おめえにはとても食い切れまいよ。おまけに血糖値が上がりよるでな。

と桃を持ち上げ、しげしげとながめるんじゃ。

 このまま婆さんに居座られては迷惑じゃから、厄介払いしようと思うた爺様、

 -それ、あんたにやるで、持っていったらどうじゃ。

 藁しべ一本捨てたことのない欲深な婆さんじゃから、これを聞いてニコニコ顔、

 -ほうか、そんならもろてやるわい。ええか、おめえ、もうタバコなんぞやめるんじゃぞ。

 そういうてな、桃を大事そうに抱えてさっさと帰っちまったんだと。

 そこで爺様はホッとして、「婆めこれから桃をたらふく食うんじゃろな」と思いながら、タバコをもう一服すると、台所へ飯を食いに行きよった。

 さて板の間で茶漬けをザブザブかっこんでおると、婆さんの家のほうから、とんでもない悲鳴が聞こえてきよった。

 びっくりして爺様が外へ出てみるとな、血相変えた婆さんが「助けてくれえ」ちゅうて家を飛び出し、もつれた足で畑のほうへ駆けていきおった。 
 
 はあてなあ、桃の中からなにが出てきよったんじゃろか。そりゃあ爺様にもわからん、わしにもわからんわい。とっぴんぱらり。 

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November 25, 2017

Daily Oregraph: 大町カモメ通り

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 夕方は寒いから昼前に家を出て、今日は相生坂を下る。天気はいいけれど、本日の最高気温は2.9度。西風が冷たい。

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 南大通のコンビニで買物をして、一本裏手の道へ回ると、そこは大町。

 へえ、こんな看板があるとは、うかつにも今日まで気がつかなかった。洲崎通りというのが正式な名称なのかどうかは知らないけれど、かつてこのあたりに洲崎町という地名があったことは知っている。といっても、啄木がほろ酔いで歩いていた頃の話である。

 いや、カモメ通りがいいだろう……ぼくは勝手にそう決めた。看板に敬意を表したのである。

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 カモメ通りを過ぎてしばらく歩くと、港町岸壁付近に出る。

 この小屋(物置?)はずいぶん以前にも撮影してご紹介した記憶があるけれど、カモメ通り→寝入りかねたるカモメ→芭蕉のおじさんという連想の流れによって、ぼくの目にはいつの間にかトタン張りの芭蕉庵に見えるのであった。

 -おっと、親分、そいつはなんぼなんでも無理というもんだ。ボロ家にもほどというものがありますぜ。

 -だからおめえの目は節穴だというのだ。案外世を忍ぶ俳人が住んでいるかも知れねえじゃないか。

 -冗談じゃねえ。こないだ見回ったときは、一升徳利抱えた汚ねえ親爺が土間にひっくり返っていびきをかいてましたぜ。

 -だからよ、中途半端に呑んだんじゃ「いとど寝られぬ」から、憂さ晴らしに大酒食らったにちげえねえ。俳諧の名人にだってつれえことはあるものさ。

 -へえ、あの親爺が名人ねえ……

 -そうよ。人は見かけによらぬものだ。第一あそこならカモメの鳴き声も始終聞こえるし、「かもめかな」の句ができたって不思議はねえ。そろそろ夜の雪も降るころだから、おめえ今夜あたりひとっ走りして見てくるがいい。

 八五郎、まだ納得のゆかぬ顔をしております。親分が勝手に名づけた港町芭蕉庵、はたして史跡に認定されますや否や?

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November 24, 2017

Daily Oregraph: いとゞ寝られぬ

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 いったん枯れた花がもう一度枯れて、水気がまったく失せてしまった。触れたとたんにバラバラになりそうである。

 夏の間猛威をふるった丈の長い雑草が、ばさりと脱ぎ捨てた鬘のように、あっちにもこっちにもまとまって横たわっている。雪に埋もれる前に片づけたほうがよさそうだ。また余計な仕事が増えてしまったらしい。

 さて元起和尚からもらった酒を、芭蕉は曾良といっしょに一杯やったにちがいないなどと無責任なことを書いた手前、『芭蕉俳句集』(岩波文庫)をもう一頁めくってみたら、「
きみ火をたけ」につづいてあったのが、同じく貞享三年の句、

      深川雪夜

   酒のめばいとゞ寝られぬ夜の雪


である。

 えっ、ほんとかよ。これはどう見たって一人酒の句である。酒の相手がいて話がはずんでいるときの句とはとても思われない。

 念のため調べてみたところ、「閑居の箴」には、

 物をもいはず、ひとり酒のみて心にとひ心にかたる。庵の戸おしあけて、雪をながめ、又は盃をとりて、筆をそめ筆をすつ。

とあるから、まちがいない。無学なくせに余計な想像をするから、こんな恥をかくのだ(笑)。

 芭蕉このとき四十三歳、なにを考えていたのかは知るよしもない。しかし雪の夜におじさんが一人酒、しかも(たぶん)肴もなしに冷酒を飲んでいたとすれば、軽みもおかしみもあったものではなく、「一人住まいの寂寥感」(山本健吉氏)ではすまない深刻味が漂っているように思う。

 例によって勝手な想像だが、たぶん内縁の妻とされる寿貞の暮し向きや、二人の間にできたといわれる子どもたちの将来、さらには自分の境遇などが、おじさんの胸中に去来していたのではないだろうか。なにしろ四十三歳だからなあ。

 みなさんは芭蕉を俳聖などといって崇めるけれど、彼も人の子、だれもが抱える苦労や悩みがなかったはずはない。しかも世知辛き世を俳諧一本で渡ろうなどというのは、はっきりいって堅気の道ではない。妻子をまともに養えるのか、愚かなやつよと陰で笑う者もいたと考えるのがふつうだろう。

 風雅だの俳諧だのといっても、人間霞を食って生きていけるはずはなく、他人の援助にすがる身の上だから、ときには高級幇間めいたこともせざるをえなかっただろう。

 そんなことを考えながら酒を飲んでも心地よく酔えるはずがない。しかもますます目が冴えたところに、庵の戸を押し開けて雪をながめたんだから、部屋の中にはどっと冷気が流れ込んで、そりゃあ寝られないに決まっている。

 先生、地獄のような孤独感に襲われたはずだが、下五の「夜の雪」が魔法のような働きをして、同じ雪降る夜空の下、あちこちで一人わびしい酒を飲む、たとえばあなたやぼく(?)のような人の姿がぼうっと浮かび上がってくるのである。

 またしてもいいかげんな想像をしてしまった。どうせ無学者のほら話、笑っておゆるしくだされたい。

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November 21, 2017

Daily Oregraph: 旧弥生中 11月21日

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 まだ「立入禁止」の単管バリケードがいくつか残っているので外側から撮影したけれど、土地の埋め戻しも終っているし、警備員さんの姿もない。解体工事は完了したといってよさそうだ。

 この荒涼たる景色は今の季節にふさわしいかもしれない。

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 校舎跡地のすぐ向いにある廃屋。入居者募集の貼り紙は残っているけれど、長く人が住んでいないから、見るたびに荒廃していくのがわかる。

 ふと思ったのは、この建物もかつてはマンションを名乗っていたのだろうかということ。マンションとは大邸宅だからアパートに名づけるのはおかしい、という説もあるが、一概にそうともいえない。この英語のもともとの意味は「人の住む場所」だからである。マンション、いいじゃないか(笑)。

 旧弥生中の坂を下って散歩していると、「コーポなんとか」というのがあった。コーポとはまたどこから引っぱってきたものかというと、たぶん cooperative apartment (【米】協同アパート)に由来するのだろう。

 しかしこれはアパートを所有する法人の株式を使用者が取得・保有し、持分に応じて部屋を占有する仕組みと辞書にあるから、まさに協同組合方式である。ふつうのアパートに使うのはちょっと変だ。それに略称は cooperative、略語は co-op なので、コーポは無理、コープが妥当である(あれれ、生協になってしまった)。

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 そういえばハイツなんてのもあるなあ…などと、どうでもいいことを考えながら、なおも歩いたのだが、だんだん寒さがこたえてきた。寒さのレベルが一週間前とは比較にならないのである。日が沈みかけるとさらに冷えこんでくる。

 これはいかん。校舎の跡地やら廃屋と化したアパートなど寒々しいものを見たせいもあって、いっそう体が冷えるのかもしれない。

 アパートでもマンションでもコーポでもハイツでもない、ガタのきたあばら家にさっさと逃げ帰ったことは申し上げるまでもない。

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November 20, 2017

Daily Oregraph: 冬に備える

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 玄関チャイムが鳴ったり鳴らなかったりすることに気づき、カバーを外してみると、ボロボロに腐食していた。

 さすがにこれは替えなあかん……

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 さっそくホームセンターへ行って新品を求め、レジに並ぶと、除雪用品が飛ぶように売れている。ほかのものには目もくれず、プラスチック製の雪はねスコップを手にする人が多いのである。

 雪なんてないじゃないか……とお思いかもしれないが、

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ごらんのとおり、昨日うっすらと積もった雪が日陰にはまだ少し残っている。みなさんあわててホームセンターへ走るのもむべなるかな。

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 波しぶきが崖の上にまで達している。ここ数日で風がいっぺんに冷たくなった。

 玄関チャイムも無事復活したし、冬への備えは万全だが。心配なのは、ボロボロに腐食した(?)足腰である。この冬の雪かきを想像するといやになる。こればっかりは、ホームセンターで買い替えるわけにはいかないしなあ……

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November 17, 2017

Daily Oregraph: かもめかな

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 今日は一度もシャッターを切っていないので、昨日の夕方港町で撮った写真でお茶を濁すことにしよう。

 例によって見るべきものはカモメしかないのだが、ふと芭蕉にカモメの句はあったかしらと気になったので調べてみると、

  
水寒く寝入かねたるかもめかな

という一句がみつかった。

 芭蕉先生わざわざカモメを見に水際へいったわけではない。「
元起和尚より酒をたまはりけるかへしにたてまつりける」という前書があり、例の「古池や」の成った貞享三年(1686年)、深川芭蕉庵での作である。

 寝入りかねたるかもめは寝酒でもやったのだろう、といいたいところだが、ちょっと待った。「水寒く」とあるから、季節は冬だろう。これから寝ようというからには、もう炉の火は消えているはず。わざわざまた火を起こして燗をつけるほど先生がマメなお人だとは考えにくい。

 とすれば独酌で冷酒をあおることになるが、それは宗匠にはふさわしからぬすさまじい光景である。したがって芭蕉翁が依存症でなかったとすれば、結局この夜は飲まなかったほうに賭けたい。

 例の「
きみ火をたけよき物見せむ雪まろげ」も同じく貞享三年の作だから、結局和尚からもらった酒は、雪の日に曾良と一緒に味わったにちがいない。曾良にしたって、雪だるまなんぞを見せられるよりは熱燗のほうがいいに決まっているので、喜んで火を焚いたはずである。

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 -ふん、おめえ、ずいぶんいいかげんなホラを吹くもんだなあ。

 生意気なカモメがそう申しておったと。はあ、どっとはらい。

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November 15, 2017

Daily Oregraph: またひとつ……

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 おや、いつの間に? 木造家屋がまたひとつ姿を消していた。

 当社の誇る資料室を探してみると……

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 2005年4月29日撮影。

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 こちらは2004年4月29日、すなわち上の写真の一年前に別の角度から撮影したもの。画面右端に見える通りは南大通である。

 このときすでに廃屋と化して数年以上は経過していたと思われるから、たぶん20世紀のうちに住居としての役目を終えたのだろう。

 屋根のかたちは知人の廃屋と同じで、北海道の木造家屋によく見られる(見られた?)いわゆる方形屋根である。

 市内には木造家屋がまだ少数ながら残っているけれど、今世紀のうちにはきっと全滅してしまうにちがいない……と、これまた前世紀の遺物であるジジイは感慨にふけるのであった。

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November 14, 2017

Daily Oregraph: 裏庭画報 ナナカマド始末記

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 に三日どころか十日以上も放っておいたナナカマドの枝を始末した。たいした量ではないように見えるかもしれないが、たっぷり一時間半以上はかかったのである。

 この束を背負い、本を読みながら道を歩けば、気分は二宮金次郎。どこぞの校庭にぼくの銅像が建つかもしれない、というのは時代錯誤の妄想に過ぎず、「まあ、あのお爺さん、気の毒に頭がちょっと……」といわれるのがオチだろう。残念。

 トマス・ハーディの傑作『日陰者ジュード』の主人公ジュードは、おばさんの家に厄介になりながら、(細かいところまでは忘れたけれど)たしか馬車でパンを配達していた。向学心に燃えていた彼は、馬車で移動する途中も本を開いて学問に励んだから、イギリス版二宮金次郎といっていいだろう。

 ジュードがその後とんとん拍子に出世したという話なら、そこいらに転がっている安手の自己啓発本とたいして変らぬが、本物の文学者の目はそれほど甘くはない。

 並の大学生も及ばぬほどラテン語が上達しても、貧しい下層階級に属する彼は念願だった大学入学を果たせず、結婚にも破れ、「世間」と闘って満身創痍になった挙句、悲惨な死を迎える。

 どうにも救いのない小説だが、世間に広く受け入れられている制度や道徳が、実は人を不幸にする不合理を含んでいるという事実を読者に突きつけたから、当時ハーディは保守派から囂々たる非難を浴びたのであった。彼が小説の筆を折った一因ともいわれている。

 修身はものごとの半面しか教えてくれない。この小説は、世の中の別の半面を教えてくれるという点で、文学の可能性のひとつを示したものだと思う。たぶん文科省推薦にはなるまいが……(笑)

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November 12, 2017

Daily Oregraph: 冬めく

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 本日の最高気温は 8.9度。少々風はあるけれど、ときどき日が射すから、もうちょっと気温は高そうに感じる。

 だから体感上はさほど寒くないのだが、秋か冬かと問われれば、迷わず冬と答えるだろう。空気に潤いがないのである。風が体を通り抜けるようにも思われる。万物が一切の飾りを取り払ってむき出しになったようにも見える。

 この感覚が「冬めく」というやつなのだろう。

   
口に袖あてゝゆく人冬めける  高濱虛子

 そういえば、ぼくもいつの間にか両手をポケットに突っこんで歩いていた。

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November 10, 2017

Daily Oregraph: 受信拒否の副作用

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 最近高校時代の級友からのメールが未着になるという出来事があった。二度送ったらしいのだが、二度ともぼくからの返信がなかったので不審に思ったらしく、スマホ専用の別メールアドレスから問合せがあったのである。

 すぐには原因は判明しなかったけれど、一日たってからハッと思い出した。ずいぶん昔の話になるが、迷惑メールの多さに悩まされ、相当数のメールアカウントを受信拒否設定したことがある。

 もしや、と思って確認したところ、やはり問題のメールアカウントは受信拒否設定に該当していた。彼は某無料メールアカウントを利用していたのである。

 もちろん無料サービス自体には問題ないけれど、それを悪用してむやみにアカウントを作成し、迷惑メールを送りつける不届者が多かった(今でもそうだろう)。それに業を煮やして、無料メールアカウントからのメッセージは「すべて」受信拒否する人もいたことを覚えている。

 ひとつひとつは面倒だから、たとえば @yahoo.it なら、それを一括受信拒否に設定すると、効果はてきめん、迷惑メールの数は激減した。しかし当然それには副作用もあって、すっかり忘れた頃に今回のような出来事が起こったわけである。

 さっそく問題の設定を解除したら、無事彼からのメールを受信することができた。現在では迷惑メール対策は当時よりもずいぶん楽になったから、一括排除する必要まではなさそうに思うが、浜の真砂はなんとやら、インターネットを悪用する輩は後を絶たないだろう。善良な市民が迷惑をこうむるのだから困ったものである。

 しかし道徳の教科書を検定するお役所が悪徳政治家の味方をする世の中なんだから(笑)、なにをいっても通用しない悪い連中に説教したってムダ。人間とはそんなものだと観念したほうがよさそうだ。

 エルキュール・ポアロなら "Human nature." とつぶやくところだろう。

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November 06, 2017

Daily Oregraph: ツルウメモドキ

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 本日の最高気温 13.8度。立冬を目前にして暖かい一日であった。

 コンビニで買物するために相生坂を下る。

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 今年になって初めて気づいたのだが、この坂にはツルウメモドキがずいぶん多い。

 黄色い外皮がはじけて現れるのは、仮種皮に包まれたタネなのだそうである。万物が枯れはじめる今の季節には、たいへん貴重な彩りだと思う。北海道から九州まで分布するというから適応力が強いのだろう。

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 坂を下りて南大通のお菓子屋さんの前を通りかかると、ウィンドウにツルウメモドキが飾られていた。

 ツルウメモドキ(または「つるもどき」)は秋の季語。つまり季語として使えるのは本日までである。

    
つるもどき叔母がひとりのよき住ひ  濱井那美

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November 04, 2017

Daily Oregraph: 冬近し

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 16時10分。ポケットからカメラを取り出し、スイッチを入れてレンズがじわっとせり出すまでに、夕日は雲の向こうに消えてしまった。あっという間である。

 空を染めた鮮やかな赤もほんの一瞬だけ。このあとみるみるうちに色あせていった。まさに微妙な時間帯である。

 本日の最高気温は8.9度。風はほとんどないのだが、歩いているうちに手がどんどん冷えてくる。そろそろ手袋を用意しなくてはいけないようだ。

 全国のジジイ諸君、もうじき立冬である。寒くなるからお体を大切に。

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November 03, 2017

Daily Oregraph: 伊賀越道中土産

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 -いやあ、最近ブログのネタがなくて弱ってます。

とぼくがこぼしたのを耳にしたスコップさん、ニッコリ笑って、

 -ハハハ、私にお任せあれ。

 というわけで、さすがは困ったときのスコップさん、先日出張された三重県のお土産をくださった。しかもお酒と肴のセットである。

 そういえば釧路ではみかけないカマキリの写真なんぞをブログに掲載されていたから、はてな? と首をひねっていたのだが、なるほどあれは三重県でお撮りになったものだったのである。

 大変忙しいお仕事だったはずなのに気をつかっていただき、まことにありがたく、感謝感激である。スコップさんのお宅に足を向けて寝るわけにはいかない。

 さっそく味見を……とは思うのだが、なんだかもったいない。どうしようかなあ(笑)。

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November 02, 2017

Daily Oregraph: 裏庭画報 枝払い

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 ナナカマドの枝を二本払った。このくらいのサイズになると、幹から離れて落ちるときにズシリという手応えを感じるものだ。

 ゴミとして処理するためには、適当なサイズに切りそろえて、紐でくくらなければならない。面倒くさいから、このまま二三日放っておくつもりである。

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 一昨年切り落とした枝からは、盛んに芽が出ている。生命力の強さには感服するけれど、なあに、こちらだって負けちゃいない。来年また枝払いするつもりである。

 ほんとうはそっくり切り倒したいところなのだが、とても全部は始末しきれない。困ったものである。

 何度でも繰り返して申し上げるが、戯れに木を植えるべからず。ジジイのいうことは素直に聞いたほうがよろしい(笑)。

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