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October 31, 2017

Daily Oregraph: 中央埠頭から

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 ひさびさの港湾パトロール。

 中央埠頭の倉庫解体についてはすでにお伝えしたが、本日たまたま通りかかったら、工事のフェンスが撤去されていたので一枚パチリ。

 こうして見ると、景色が一変したことにあらためて驚かされる。跡地がどうなるのか、なにか変化があったらご報告したい。

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 ついでといってはなんだが、中央埠頭といえばこの廃屋を忘れることはできない。

 たしかぼくが港で働きはじめたときはすでに廃屋だったと記憶しているから、相当古い建物である。釧路遺産くらいの格はあると思う。

 いまだに倒壊せずに残っているのは鉄骨造りだからであろうが、ここ数年のうちに、ずいぶんトタン板がはがれてしまった。

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 しょうもない写真だが、これも記録のため。中央埠頭から見た北埠頭東側岸壁である。

 この岸壁は通称「北裏」……といっても、現在では業界でも若い方にはなじみがないかもしれない。

 東港はなやかなりし頃は、北裏でも木材の荷役が行われていた。本船のサイドで丸太を筏に組んで貯木場へ運ぶ、いわゆる水面落としという方式である。

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 この写真は2005年3月28日に中央埠頭で撮影したもの。

 独特の風情ある筏組みも今では見ることができず、直接岸壁に荷揚げする方式に変ってしまった。それとともに紅顔の美少年も白髪の翁と化したのだから(笑)、まさに感無量である。 

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October 28, 2017

Daily Oregraph: 相生坂から

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 またしても夕日。つまりネタがないのである。

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 おや、月の女王はずいぶんお太りになったようだ。

 ……これでは愛想がなさすぎるから、最新の反省堂新明解英和辞典でも開いてみよう(この辞書、ウソと本当が混じっているから、鵜呑みにしてはいけない)。

 make a clean breast (of) 1. (~を)丁寧に説明する 2. (~を)すっかり白状する

 -悪人が大手を振ってお天道様の下でゴルフをしているようでは、国家の品格とやらが疑われましょう。おめえさんも観念してお縄につきなせえ。すっかり吐いちまえば、胸もすっきりするにちげえありません。

 -親分、かまうことはねえ。さっさとふん縛っちまいましょう。

 -バカ、おれは自首を勧めているのさ。お上にもお慈悲はあらあね。島流しですむかもしれねえよ。

 大変ためになる辞書だから(笑)、いずれまた利用することにしよう。

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October 26, 2017

Daily Oregraph: 太陽のめぐみ

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 本日の最高気温 15.0度。しかし天気はよし、風は弱し、体感的には18度といってもおかしくはなく、歩いているうちにうっすら汗がにじんできた。

 太陽とは実にありがたい存在である。暖かい光を浴びていると、お天道様あっての人間だなあとつくづく思う。

 おじいさんが縁側でひなたぼっこをしながら煙管で一服しているとなりでは、ネコが体をまるめてウトウト昼寝している。浜のほうからは、昆布を干す匂いがふわりと漂ってくる。

 おじいさんには大して学問はない。東大にもハーバードにもまるで関わりはないし、おまけに頭もハゲている。もちろんそう豊かではないから、贅沢とは無縁である。

 しかしおじいさんはいい顔をしている。ときどき空を見上げては、まぶしさに目を細めているが、庭先に孫が歓声を上げながら駈け込んでくると、うれしそうに顔をくしゃくしゃにして微笑する。

 おじいさんこそ太陽のめぐみをもっともよく知る人である。

 ……と、松竹大船調の想像をしながらの散歩であった。おじいさん役はもちろん笠智衆(笑)。

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October 25, 2017

Daily Oregraph: 三日月といえば……

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 なあんだ、また夕日か……とおっしゃるかも知れないけれど、別にねらったわけじゃない。なんとなくこんな時間になってしまったのである。

 世の中夕日ファンばかりでないことは十分承知している。月だってあるわけだが、中には夕日も満月も月並みだというへそ曲がりもいらっしゃるであろう。

 当社はそんな少数派の味方であることを誇りにしている。

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 額に輝く三日月は天下御免の向こう傷、直参旗本早乙女主水介、人呼んで旗本退屈男。諸刃流正眼崩し、みごと受けて見せるか……

 こういう月を見ると、自動的に市川右太衛門を思い出すのは歳のせいというものだろう(笑)。

 悪人どもをバッタバッタとなぎ倒す退屈男は小気味よかったけれど、しょせんは幕府の犬、お上のご威光をふりかざすところは水戸の爺様と同じである。その点では居合い斬りの座頭市や、ニヒリスト眠狂四郎のほうが反権力的で、はるかにカッコよかった。

 ……おっと、話がとんでもない方向へそれてしまった。夕日を拝み、月をめでるつもりだったのに。

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October 24, 2017

Daily Oregraph: 青空の南大通

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 やっと青空が戻ってきた。今日は散歩のコースを変更して、南大通方面を歩くことにした。

 まずは港を一望してから相生坂を下る。

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 風もなくおだやかな一日であった。昨日の台風のせいだろうか、かなり葉の落ちた街路樹は真っ赤である。

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 わが裏庭のナナカマドはほとんど丸坊主になってしまったが、この木はみごとに紅葉している。ナナカマドもバカにしたものではない。ちょいと見直した。

 昨日はあちこちでかなりの雪が降ったという。街が枯木だらけになる日も近い。

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October 22, 2017

Daily Oregraph: 古い写真から-北埠頭直線部

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 天気が悪い。朝のうちに投票はすませたが、とても写真を撮るような気分にはなれなかったので、またしても古い写真から。これは1975年の3月に撮影したものである。

 今では想像もつかないと思うが、かつては北埠頭直線部で石油の揚荷をしていた。この付近にあったいくつかの油槽所は、その後西港石油基地へ引っ越したのである。今もこの岸壁でつづけられているのは、セメント船の荷役くらいのものだろう。

 北埠頭直線部などといってもピンとこないかもしれないが、かつて(西港に移転するまで)近海郵船のフェリーターミナルのあった場所だといえば、ご記憶の方もおいでだろうと思う。

 それでもわからんとおっしゃる方のために地図を用意した(2008/2009 釧路港要覧より)。

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 赤い矢印と直線で示したのが「直線部」である。この地図はなぜか南北が逆転しているので、上が真南を指すことにご注意あれ。

 1970年代にはほとんど港を撮ったことがない。今にして思えば、もっと撮っておくべきであった。

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October 19, 2017

Daily Oregraph: 夕日と競争

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 今日の散歩は予定より遅れて16時15分に出発。またしても夕日を追いかけることになった。このところすっかり夕日シリーズになってしまったようだ。

 まぶしくてすぐには気づかなかったが、人がいたのでびっくりした。とにかくこのコースで人を見かけることはめったにないのである。

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 その約3分後。まさにつるべ落とし、恐ろしいスピードで沈んでいく。

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 さらに3分後。落語の「死神」の最後、命の蠟燭が消えゆく場面を思い出す。

 ほうら、消えるよ……消えるよ。

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 主人公が死んでしまうのは縁起が悪いから(笑)、おまけの一枚。本日の昼食である。

 くしろ-OBさんご贔屓の某店の塩ラーメン。どうです、食べたくなったでしょう。

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October 18, 2017

Daily Oregraph: 紅葉

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 本日の最高気温は 11.4度だが、日が射しているから寒くはない。散歩日和である。いつもとはちがうコースを歩いてみた。

 町中でみかける木々がずいぶん紅くなってきた。青空に紅葉がよく映える。この分だと山は真っ赤だろう。

 上庶路のダムあたりの紅葉はさぞみごとだろうと思うけれど、最近は車で出かけるのが、すっかりおっくうになった。あそこは気持のいい場所だから、だれか運転してくれるなら(笑)、行ってもいいのだが……

 まあいいさ、歩け、歩け。

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October 17, 2017

Daily Oregraph: 夕日を浴びて

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 本日の散歩は15時55分出発。

 南の空はごくあたりまえに見えるけれど……

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目を西に転ずると、強烈な西日が射している。まぶしくて目がくらむほどである。

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 木製デリックにガラスの浮き玉がぶら下がっていた。たしか一昨日はなかったと思う。

 かつてカニ族ということばが流行した頃、北海道を旅する貧乏青年たちがよくこのガラス玉をリュックに飾っていたものである。

 若くして亡くなったぼくの友人もそうだった。浮き玉のどこに値打ちがあるのかさっぱりわからなかったからそういうと、照れくさそうな顔をしていたことを思い出す。

 思えばずいぶん意地の悪いことをいったものだ。人の好みはさまざまなのだから、ダイヤのネックレスで飾ろうと、浮き玉をぶら下げようといいじゃないか。すまん。どうか化けて出ないでくれ。

 どうしてそんなことを思い出したものか。たぶん夕日のマジックであろう。

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October 15, 2017

Daily Oregraph: 2001年10月26日ロータリー

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 2001年10月26日に撮影したロータリーと幣舞橋……ネタがないときは昔の写真に頼ることにしている(笑)。これはフィルムカメラで撮ったもので、一見してネガフィルムであることがわかる。

 すぐ気がつくのは、ホテルラビスタ釧路川がまだないこと。ロータリーの真ん中の木も見あたらない。この位置からだと、ほかに大きな変化は見られないようだ。

 ……とまあ、この調子で古い写真を利用すれば、何年でもお茶を濁すことができるけれど、そうそうこの手を使うわけにはまいらない。明日からはまた修行に励む所存である。

【業務連絡】

 英単語帳が12,000項目に達しました。無人島生活のお供としておすすめです。

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October 14, 2017

Daily Oregraph: 日没散歩

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 まずはぼくが最後に撮影した旧弥生中校舎(10月8日)と、本日ほぼ同じアングルから撮影した写真をごらんいただきたい。

 きれいさっぱりなくなってしまった。昔ここに中学校があってな……などと語るジジイが死んでしまえば、消えた古代遺跡も同然、土台を撤去するそうだから、あと数百年もすれば学校の正確な位置をめぐって考古学会で大いにもめるんじゃないかと思う。

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 そんなバカなことを考えながら、久々の定点撮影。

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 散歩中に日没を拝むのはめったにないことだが、今日は仲間がいた。カモメの分際で、人間様といっしょに夕日見物とは生意気な。

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 ぼくは夕日よりも日没直後の空のほうが好きだ。微妙な色合いがなんともいえないのである。

 しかし帰りが暗くなるから、そろそろもっと早い時間に家を出なくてはいけないようだ。もう冬はそう遠くはない。いやだなあ。

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October 13, 2017

Daily Oregraph: 黒猫の話

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 -おい、ネコ。退屈だから、おれになにか話を聞かせてくれ。

 -いきなり失礼なジジイだなあ。おら、おもしろい話なんて知らねえけど……そうだなあ、今日客船でやってきたエゲレスのネコから聞いた話でもしてやろうか。

 -そりゃよさそうだなあ。あとでキャットフードでもおごるから頼むぜ。

 -エゲレスの阿呆村の話だってさ。まあ聞きなよ……


 あるとき阿呆村の男が十二人、魚を捕りに行ったげな。水に入ったものもおれば、入らんものもおった。帰り際に一人がいうた。

 「今日はずいぶん水をこいだども、一人も溺れず無事だとええがのう」

 「ほんなら確かめてみべえか。みなで十二人じゃったな」と、それぞれ数えてみたが、だれも自分を勘定に入れんもんだから、十一人にしかならん。

 そこで「なんと、一人溺れよったわい」と互いに言い合いおった。みんなで川に戻り、溺れた男をあちこち探しては嘆いておった。

 王様のご家来が馬に乗って通りかかり、おぬしらなにを探しとるんじゃ、なんで悲しんどるんじゃ、とお訊きじゃ。「へえ、今日は十二人して川に魚捕りに来たんでがすが、一人溺れよりましてごぜえます」

 「なんと、何人いるか数えてみせい」とご家来がいうんで、一人が数えてみたら、自分を入れんから十一人。「ふうん」とご家来はいうた。「わしが十二人目をみつけたら、おぬしら何をくれるな?」

 「へえ、わしらの有り金をそっくり」

 「金をわしによこせ」というて、ご家来は最初の男の肩をどつきおった。どつかれた男がうめくと、「一人目じゃ」というて、順々にうめき声を上げるまでどつくと、最後の男にビシリと一発くらわせて、「ほうら十二人目じゃ」というたげな。

 「ほんにありがてえことで」と一同、「旦那のおかげで仲間がみつかりやした」


 -ふうん、ヘンテコな話だなあ。だけどこれほどの阿呆は日本にはいまいよ。

 -いるさ、いくらでもいる。だから政権がいつまでも交替しないじゃないか。ところで爺さん、キャットフードを忘れないでくれよ。

【付記】

 この昔話にはひとつ重大な疑問がある。朝十二人で出かけたとき、だれが人数を確認したのだろうか(笑)。

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October 12, 2017

Daily Oregraph: 旧弥生中 10月12日

 ここ数日天気が悪く、今日もときどきボソボソと小雨が降った。当然散歩に出かける気分ではなかったけれど、旧弥生中学校の解体工事が気になってしかたがない。

 夕方には雨がやんだので、暗くなる前に出かけてみると……

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いやな予感が的中した。すでに校舎は影もかたちもなくなっていたのである。

 顔なじみになった警備員さんによると、まだ土台が残っている。土台を撤去したあと埋め戻しするから、工事はあと一ヶ月ほどかかるだろうとのこと。

 校舎最期の姿を記録しようと思っていたのに、油断があった。たかが雨ごときで取材をサボるとは、ジャーナリスト失格である。深刻に反省しなければならない。

 というわけで、次にご報告するときは「工事後の旧弥生中跡地」というタイトルになるだろう。読者よ、赦し給え。

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October 08, 2017

Daily Oregraph: カモメのほうがマシ

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 本日の最高気温 19.4度。生暖かい感じである。

 例によって例のごとく、夕方の散歩に出ると、微風にしては波が高かった。

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 我ながらよくもまあ飽きずに同じコースを歩くものだと思うけれど、継続は力なり、比叡山千日回峰の千分の一くらいのご利益はあるかもしれない。

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 知人の浜に群れるカモメ。今日はなぜこんなに多く集まっているのか、連中の考えることはさっぱりわからない。

 わからないけれど、政治家よりはマシか。アダム・スミス先生もよほど政治家がお嫌いだったらしく、

 
'that insidious and crafty animal, vulgarly called a statesman or politician'

 (俗に政治家と呼ばれる、あの狡猾陰険なるけだもの)

などとお書きになっている(『国富論』第4巻第2章)。動物だよ、人じゃない(笑)。

 近々選挙があるそうだけど、お互い人間を名乗るなら、カモメに笑われぬよう、悪代官と越後屋の一味にだけは一票を投じないようにしたいものである。

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October 07, 2017

Daily Oregraph: 落花生

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 相模原のAさんが、畑で採れ立ての落花生を送ってくださった。プーンと土の匂いがする。

 塩茹でにして食べるんだというから、フニャフニャの豆がうまいものかどうか、半信半疑で試してみたら……うまい! はじめて味わったが、カリカリのバターピーナッツとはまた別のうまさである。

 「柔らかいから歯の悪い人でも食べられるよ」というお言葉どおり、これなら爺さん婆さんでもいける。酒のつまみにもなる(笑)。

 落花生は秋の季語なので、駄句をひとつ。

   曇天やもぐもぐと食ふ落花生  薄氷堂

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October 05, 2017

Daily Oregraph: 旧弥生中 10月5日

 十月に入ったとたん、朝晩めっきり寒くなってきた……などといっている場合ではない。旧弥生中学校はどうなっただろうか?

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 前回の記事から十日、工事はかなり進んでいた。警備員さんのお話では、もうすぐ終るよ、とのこと。

 これからは一週間おきではなく、頻繁にチェックする必要がありそうだ。

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 裏側はこんな具合。

 乗りかかった船、最後までご報告するつもりである。

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October 04, 2017

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 10月3日

 8月以来破竹の進撃(?)をつづけてきた当ブログだが、昨日は休載のやむなきに至った。それにはちゃんとわけがある。

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  10月3日朝。雨である。

 対岸の貨物船は木材の揚荷だから、おかまいなしに荷役をしているが、こっちはもちろんダメ。しかし10時半近くになって雨は止み、やがて作業がはじまった。

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 朝の遅れによって作業終了も夜に持ち越しとなったため、もう一泊することになったのだが、主なホテル・旅館はどこも満室。やっとみつけた民宿が、個人的には大ヒットであった。

 宿賃がべらぼうに安い。あまりの安さに耳を疑ったほどである。かつては食事を提供していたらしいけれど、現在は素泊りのみだという。それにしても安いのである。

 もちろん安いにはそれなりの理由はある。少々くたびれた部屋は質素そのもので、テレビとテーブルがちょこんと置いてあるだけ。手ぬぐい・バスタオル以外の、いわゆるアメニティなるものはない。エアコンは当然ないけれど、北海道だから石油ストーブの備えはある。

 寅さんが旅先で泊まるのはこういう部屋だろう。しかし掃除は行き届いているし、寝具も清潔。どうせ寝るだけだから、なんの不足もない。なつかしい昭和の雰囲気にひたることができたのは、ある意味では幸運であった。

 で、インターネットなのだが、もちろん昭和の宿にそんなしゃれた設備はないから(笑)、ブログ休載とあいなった次第。テレビはつまらないし、本を読む気にもなれず、どうにも時間のつぶしようがない。

 そんなときに頼りになるのは、いうまでもなくアルコールである。ウィスキーと水をほぼ等量に混合した液体の助けを借りて、さっさと就寝したことは申し上げるまでもない。

 真夜中に女の幽霊でも出ないかと密かに期待していたのだが(笑)、残念ながら、あの宿賃でそこまでのサービスを期待するのは無理な相談であった。

 7泊もすごした十勝港とは今朝おさらばし、ふたたび平凡なる日常に復帰。空白の一日のおかげでブログ強化月間も終りを告げたから、ずいぶん気が楽になった。

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October 02, 2017

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 10月1日 その2

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 晩成温泉に近づいて驚いた。駐車場がほとんど一杯なのである。

 いくら休日とはいえ、これほど多くの客が温泉に押し寄せるわけはないという謎はすぐに解けた。なにか催しがあるらしい。

 車を駐めて人だかりに近づいてみると、拡声器から「1メーター50!」などという声が聞こえてきた。

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 なんと「第一回 全日本 ライチ種とばし選手権」なのだそうである。全日本とはまた大きく出たものだが、第一回というからには、来年もまた大会があるのだろう。

 ちょっと見たかぎりでは、選手は小さなこどもたちのようであった。全国の(数少ない)読者諸君に告ぐ。来年はぜひこの地に来て大会を見物すべし(笑)。

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 これが晩成温泉。手拭い・バスタオル貸出し料金込みで入浴料500円だから、決して高くはないと思う。

 褐色のお湯はなめるとしょっぱい。お湯につかると、びっくりするくらい肌がツルツルになる。ウソじゃない。ジジイの肌が赤ん坊のようにスベスベになるのだ。毎日入浴したらどうなるか、想像するだけで胸がわくわくしてくる。

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 入浴後一休みしてからホロカヤントーまで散歩する。

 ぼくはこの道が気に入っている。下り坂とその向こうにギラギラ光る海。海辺で育った者の本能に直接訴えかける景色である。

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 おや、どうしたのだろう? いつも通る左手の道が車両進入禁止になっている。以前は車で沼のすぐ近くまで行けたのだ。

 もちろん砂浜づたいに歩いて行けるのだが、いい機会だから、右手の丘を越えて沼へ向かうことにした。

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 この沼がホロカヤントー。十勝の海岸沿いにいくつかある汽水湖のひとつである。

 ホロカヤントー沼と表記されることもあるが、「トー」は沼の意味らしいから、ホロカヤントーだけでいいらしい。

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 人の手が入って大々的に観光開発されるような場所ではない。特に絶景というわけでもない。ただただわびしい景色なのだが、ぼくはそこが気に入っている。

 ここで何時間もボーッとして過ごせるようになれれば、いっぱしの人間の仲間入りできそうだけれど、悲しいかな、ぼくはまだ修行が足りない。

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 帰りは砂浜沿いに歩いて、消えた道路を確かめることにした。

 記憶によれば、写真に見える小屋はもっと海寄りにあって、斜面と小屋との間に道路があった。どうやら(たぶん昨年の)台風によって、道路の地盤が崩壊したらしい。

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 小屋を過ぎると、見覚えのあるお地蔵さんがあった。風か波の仕業なのであろう、お堂が傾いている。このすぐ前にかつて道路があったのだ。

 けっしてめずらしいことではないにしても、道路消失、やはりショックであった。「地球にやさしく」するのは結構だが、地球はけっして人にやさしくはない……あらためてそんなことを考えながら、駐車場へ戻ったのであった。

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October 01, 2017

Daily Oregraph: 十勝港絵日記 10月1日

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 Time does fly. いつの間にか十月になってしまった。

 せっかくの休日だし十勝晴れだし、じっとしているのはもったいない。広尾町から約40キロ離れた晩成温泉でひとっ風呂浴びようと、はりきって出発した。

 途中古いなじみの木に挨拶。樹種はわからないけれど、よく目立つ木だから、富良野だったか美瑛だったかのマネをして、「なんとかの木」と命名して売り出せばいいと思う。

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 実は本日の目的はもう一つあった。

 晩成社の史跡を見物しようというのである。ずいぶん以前にも訪れようとしたけれど、場所がみつからず、それ以来気になっていたのだ。

 今日もすんなりみつかったわけではない。入口がわからないのだ。行けども行けどもみつからないから、あきらめかけてUターンし、しばらく走っていたら……あった、あった。

 わからないはずだ。看板が道路から少し引っこんでいるし、木陰にあるから見えにくいのである。手前にあるポールに標識を付けるべきだと思う。

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 晩成社史跡公園。車数台を駐めるスペースはあるが、ほかに人影は見当たらなかった。

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 案内板はいくつかあるが、わずらわしいだろうから、ひとつだけ掲載する(読みやすさに配慮して白黒に変換)。この一帯の地名である「晩成」の由来となった晩成社について要領よくまとめられている。

 失敗したとはいえ、さまざまの先駆的事業を試みた依田翁の姿には、宮澤賢治の『ポラーノの広場』の理想を連想させるものがあると思う。もとより事業がすぐに成功するとは考えていなかったから「晩成社」と名づけたのだろうが、実にえらい人物もいたものである。ほんとうに頭が下がる。

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 この凹みがサイロ跡。向う側に見えるのは、右から作業中に殉職した佐藤米吉の墓と、餌不足によって死なせてしまった牛を祭る祭牛之霊碑。木に隠れて見えないが、歌碑もある。

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 依田勉三が明治26年から大正4年まで住んだ旧居。隙間風だらけの木造家屋の寒さはぼくもよく知っているが、これは家屋というより物置に近い粗末な建物である。真冬の寒さには想像を絶するものがあっただろう。

 正面にも回ってみたけれど、この角度から見たほうが趣があると思う。近くには斜面を掘って作った室(むろ)も残っている。

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 この公園はごてごてと飾り立てていないので好感が持てるけれど、一体どこからどこまでが公園の敷地なのかさっぱりわからない。

 轍の残る道がずっと南へつづき、こっちへおいでと誘っているから、どれどれと向ってみた。

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 左右に枯れたオオイタドリのつづく道。歩いても歩いても道はつづく。一体どこまでつづくのか見当もつかない。

 少し風があるので、サラサラという葉ずれの音がひっきりなしに聞こえる。虫の音も聞こえる。蝶やトンボがさかんに飛んでいる。

 こんな道をたった一人で歩いていると、とかくに人の世は住みにくいかも知れないが、ちょっと恋しくもある。

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 道に沿って流れる生花苗(オイカマナイ)川を、タンチョウヅルがゆうゆうと歩いていた。

 歩いても歩いても道は終りそうにない。8分ほど歩いたところで少々心細くなり、引き返すことにした。

 ……などと書けば、あたかも人外境であるかのように聞こえるかも知れないが、

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近くには点在する農家の建物が見える。晩成社の苦闘がもたらした成果である。

 いいところに来たものだと思った。時間はたっぷりあったのだから、片道8分でやめにせず、三十分くらいは歩いてもよかったのだ。ただし(大勢で来るのはごめんだが)道連れが一人か二人は欲しいところである。

 首尾よく目的のひとつを果たしたので、気をよくして晩成温泉へ向う。長くなるので、つづきは次回。

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