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October 13, 2017

Daily Oregraph: 黒猫の話

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 -おい、ネコ。退屈だから、おれになにか話を聞かせてくれ。

 -いきなり失礼なジジイだなあ。おら、おもしろい話なんて知らねえけど……そうだなあ、今日客船でやってきたエゲレスのネコから聞いた話でもしてやろうか。

 -そりゃよさそうだなあ。あとでキャットフードでもおごるから頼むぜ。

 -エゲレスの阿呆村の話だってさ。まあ聞きなよ……


 あるとき阿呆村の男が十二人、魚を捕りに行ったげな。水に入ったものもおれば、入らんものもおった。帰り際に一人がいうた。

 「今日はずいぶん水をこいだども、一人も溺れず無事だとええがのう」

 「ほんなら確かめてみべえか。みなで十二人じゃったな」と、それぞれ数えてみたが、だれも自分を勘定に入れんもんだから、十一人にしかならん。

 そこで「なんと、一人溺れよったわい」と互いに言い合いおった。みんなで川に戻り、溺れた男をあちこち探しては嘆いておった。

 王様のご家来が馬に乗って通りかかり、おぬしらなにを探しとるんじゃ、なんで悲しんどるんじゃ、とお訊きじゃ。「へえ、今日は十二人して川に魚捕りに来たんでがすが、一人溺れよりましてごぜえます」

 「なんと、何人いるか数えてみせい」とご家来がいうんで、一人が数えてみたら、自分を入れんから十一人。「ふうん」とご家来はいうた。「わしが十二人目をみつけたら、おぬしら何をくれるな?」

 「へえ、わしらの有り金をそっくり」

 「金をわしによこせ」というて、ご家来は最初の男の肩をどつきおった。どつかれた男がうめくと、「一人目じゃ」というて、順々にうめき声を上げるまでどつくと、最後の男にビシリと一発くらわせて、「ほうら十二人目じゃ」というたげな。

 「ほんにありがてえことで」と一同、「旦那のおかげで仲間がみつかりやした」


 -ふうん、ヘンテコな話だなあ。だけどこれほどの阿呆は日本にはいまいよ。

 -いるさ、いくらでもいる。だから政権がいつまでも交替しないじゃないか。ところで爺さん、キャットフードを忘れないでくれよ。

【付記】

 この昔話にはひとつ重大な疑問がある。朝十二人で出かけたとき、だれが人数を確認したのだろうか(笑)。

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