Daily Oregraph: 霧の中
本日の最高気温 22.3度。釧路にしてはなかなかの暑さである。夕方からは霧がかかり、歩くと体が少しべたつく。
例の廃屋の前を通ると、遠くがまったく見えない。ちょっとした浅茅が原のようである。この景色を前にして、不意に赤尾の『豆単』のことを思い出した(笑)。
最近は本屋でさっぱりみかけないけれど、栞に印刷された「人間は忘れる動物だから、忘れる以上に覚えることである」という意味の名文句をご記憶の方も多いと思う(でもね、それができたら苦労はしませんよ、赤尾先生)。
連想の流れは単純である。捨てられた家から abandon という単語を思い浮かべ、それが『豆単』を引っぱり出したのである。たいていの生徒が abandon までやって挫折するというのは、よく出来た冗談であった。
abandon だけは覚えて捨てにけり
あれから半世紀、頭の中はこの廃屋同様がらんどうになってしまった。昔のことも霧がかかってボンヤリしはじめてきた。
つまらぬ単語を思い出してしまったものである。
Comments
豆単の「abandon」は有名な話ですね。
私達の頃はさらに単語数が絞られた試験に出る英単語などというものがあり・・・私などは全部で2000弱の意単語しか乗せられていないその単語帳のようなほんの最初の見開きのみを覚えた程度で・・・・単語数にすればほんの10個ほどで挫折しえしまいました。
Posted by: 三友亭主人 | September 07, 2017 22:57
>三友亭さん
おや、三友亭さんも豆単世代でしたか。
先ほど amazon で検索してみたら、まだ入手可能なんですね。驚きました。
収録語数 3,800 だそうです。この種の暗記物には根強い批判もあるけれど、存在価値がないわけではありません。
ほんとうは文章とともに単語を覚えるべきだけれど、日本の中学~高校初年程度で読む英文の量などたかが知れており、基本単語すべてに出会うのは困難だからです。
しかし暗記というのはつらいから(笑)、豆単の 3,800 すべてを覚えるのは至難のわざですよね。
Posted by: 薄氷堂 | September 08, 2017 07:39
私も豆単を使っておりましたね。
ただ暗記には使わず辞典を引く前の確認をするのが専らでした。何も無い状態で覚えろっていうのがど無理な話で(笑)。
私がやってたのは一つの言葉をキーワードにして、それから連想する言葉をつなげていく覚え方です。その言葉は日本語でも英語でも良くて、日本語の場合は当然英訳してノートに書いていきます。そこで出た単語を豆単と照会して、済んだ奴にはマーカーで線を引くと。
20ばかり並べたら次のキーワードに移る訳ですが、これが結構面白くてハマりましたね。
その割に英語の成績が飛び抜けて上位と言うほどでも無かったので、効果のほどは解りません(笑)
Posted by: Nori | September 08, 2017 10:05
>Noriさん
> 何も無い状態で覚えろっていうのがど無理な話で
おっしゃるとおりですね。単語が意味を持つのは「場」にあればこそ、特に動詞は文脈の中ではじめて意味が確定します。だから単語だけ独立して覚えろというのは無理な注文だと思います。
しかし豆単には、「これを征服したらすばらしい世界が待っている」という無邪気な夢がありました(笑)。なつかしいですね。
Posted by: 薄氷堂 | September 08, 2017 19:55