Daily Oregraph: 旧弥生中 8月5日
チリチリンという風鈴の音を肴に、親分はひとり冷酒をあおっているのですが、ちょいと元気がないように見受けられます。
-おや、親分、浮かない顔をしてるじゃありませんか。どうしなすった?
-おう、八か。いやな、今月は毎日報告を出せというお上からのお達しなんだが、さっぱり書くことがねえんだ。どうも弱ったなあ。
-なあんだ、そんなことですかい。ほら、あれがあるじゃありませんか。
-あれたあなんだ?
-ほら、あれですよ。
-あッ、なるほど、あれかい。あれなら毎日だってネタになりそうだ。でかしたぞ、八。
というわけで、親分がやって来たのは旧弥生中学校解体工事現場です。お断りしておきますが、さんざん瓦版屋に不正を叩かれて、ご大老の安倍様が腹を召され、建設中の獣医学部校舎を取り壊しているところではございません。
-ふうん、もう左半分を壊しちまったのか。
酒が回って顔を赤くした親分は、腕組みをしながらしきりに感心しております。
-しかし毎日同じネタというわけにもいくめえしなあ……
そうつぶやきながら、親分が中学校前の通りから西の方角をながめますと、八月の太陽はようやく傾きはじめたようでございます。
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