Daily Oregraph: サンマ怪談
今年初めて一心太助から買った生のサンマ。
またしても不漁らしいのですが、去年よりは安いようでございます。そうでなくても買物税のおかげで小銭が足りず、サンマがあまり高くては投げ銭にも不自由しますから、親分の商売にも差し支えがあろうというもの。豊漁を願いたいものでございます。
やはり生のサンマは目に力があるようでして、
-うわあ、目が怖いですねえ、親分。
-うむ、「おめえ、おいらを食うつもりか」といってるようだな。たしかに恨みがましい目をしていやがる。
-夜中に化けて出るかもしれませんぜ。
-馬鹿野郎、サンマなんぞが化けたって怖いものか。
幽霊には足がないと申しますが、サンマにはもともと足はありません。八五郎、しばらく考えておりましたが、
-サンマが化けると尾ヒレがない、なんてね。
-ちッ、おめえの馬鹿にも磨きがかかってきたようだな。いいから、さっさと七輪の火を起こさねえか。
やがて八五郎が団扇をバタバタやりますと、七輪からはサンマを焼く青い煙が江戸の空へもうもうと立ちのぼるのでした。
最近めぼしい事件がないので、すっかり体をもてあました二人は、どうやらサンマを肴に一杯やるつもりのようでございます。
Comments
もうさんまですか。
そんな季節になったんですねえ。
こちら、暑い日が続いていますが、ふと見上げた空の色にさんまの季節の近づいていることを知ることが出来ます。
とはいえ、あくまで「近づいている」であって、我々庶民の世の中では「さんまの季節」ではありません。
Posted by: 三友亭主人 | August 18, 2017 22:47
>三友亭さん
いやあ、うまかったです。やはり冷凍物とは一味もふた味もちがいますね。
Posted by: 薄氷堂 | August 19, 2017 19:55