Daily Oregraph: 猫と話す
散歩の途中でみかけた猫。一癖ありそうな面がまえである。
-おい、なんて名前だい?
-吾輩は猫である。名前はまだない。
-猫のくせに、あじなことをいうね。
-猫のくせにとは失敬な。バカにしちゃいけない。
-だって猫にはものの値打ちがわからぬから、猫に小判というじゃないか。
-ふん、政治家に道徳、首相に憲法というのはどうだ。
-おっと、一本取られたね。しかし君たちは手癖が悪くて油断がならないから、猫に鰹節ともいうぜ。
-政治家に利権。
-う~ん、返すのが早いね、どうも。ずいぶん政治家にうらみがあるようだけど、猫には関係あるまいに。
-関係おおありさ。日本中獣医だらけにして猫を根こそぎ去勢しようとたくらんでいるからだよ。外面はいいのに車の中で秘書に罵声を浴びせるヒステリー女もいたし、ひょっとしたら皮をはいで猫かぶりに使うつもりじゃないか。
-ハハハ、そりゃ考えすぎだ。あの連中は小判には目がないけど、猫なんて眼中にないさ。
-ちぇっ、猫にも劣るくせに生意気な。おや、サイレンが鳴ってるね。もう五時はとっくに過ぎたのに、ありゃ、なんだい?
-国民保護サイレンだってさ。あのサイレンを鳴らせば、ミサイルから保護されるらしい。音波でミサイルをそらすのかしら。
-おいおい、悪い冗談はよしてくれたまえ。君たちは脳味噌が腐ってるんじゃないか、まったく。阿呆の相手はしていられないな。さあ、帰った、帰った。ぼくは寝るとするよ。
というわけで、猫に軽蔑されて、すごすごと帰宅した次第である。すごいですね、ニッポン。
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