Daily Oregraph: 定期航路復帰
ほんとうに久々の定期航路である。このコースは日当り抜群だから、線路脇の雪も消え、安心して歩けるようになった。
砂利の上は少々歩きにくいけれど、足の裏をマッサージしていると思えばいい。これだけ石が転がっていれば、どこかのツボにはヒットするだろう。
レールは半ピカ状態。どんどん石炭を掘っていただきたいものである。かつては散歩すればたいてい列車に出くわしたのだが、最近はとんと目にしなくなった。採炭量が増えたって、ぼく自身が得をするわけじゃないけれど、この古いなじみの鉄道が廃線になっては困るのである。
知人の浜にはまだ雪が残っている。多少は景色の単調さを救っているかもしれないが、もう雪はいらない。
廃屋にも等級というものがある。知人の路地の廃屋は、兵隊の位でいえば、骨と皮だけになった瀕死の老将軍というところだろうか。すでにピサの斜塔ほどに傾いているから、いつ倒壊してもおかしくはない。
-閣下、ご気分はいかがでありますか?
-なあに、ちと疲れてはおるが、まだまだ。
-お薬であります。どうぞ。
-おお、当番兵、気が利くではないか。かたじけない。
飯盒のフタになみなみとついだ米焼酎をうまそうにゴクゴクと飲む姿は、塹壕の兵隊たちの感動を誘ったが、やがて満足そうな微笑を浮かべつつ、老将軍は崩れるように倒れ、息を引き取ったのであった。
-おい、みんな泣くんじゃない。喇叭だ。閣下のために喇叭を吹け。
となればまことに結構だけれど、おのれの保身のみをはかろうとする連中がのさばる世の中では、それほど部下に慕われるほどの将軍はざらにはいまい。
……なんてね、いつもいっているように、散歩中はろくなことを考えていないのである。
Comments
古い建物ですね。「横綱印のわた」。まだ北海道にこのワタ屋さんは残っているのでしょうか。西日本では聞かない名前です。
もう50~60年程度、ああやって人目に触れてきたのでしょう。
最近は10年がとても早く、40年、50年前なんてつい最近のことじゃないかと思えてきました。してみると悪政の数年なんて一瞬の間かも。この1~2週間で投げ出しがまた見られるかもしれません。
Posted by: トニー | February 26, 2017 21:59
>トニーさん
「横綱印わた」はもう会社がないようです。
実はこの看板、すぐ左隣にもう一枚あったのですが、いつの間にか脱落してしまいました。
> 悪政の数年なんて一瞬の間かも
そして次の悪政が始まるのです(笑)。泥棒と利権政治家は浜の真砂かも……
Posted by: 薄氷堂 | February 27, 2017 21:56