Daily Oregraph: 橋を渡って
一夜にして悟りを開くのはお釈迦さまくらいなもので、凡人はいくら反省したってたいして変化があるものではない。せいぜい散歩のコースを変えるのが関の山である。
ひさしぶりに幣舞橋を歩いて渡ると……おお、このカモメをごらんあれ。釧路のカモメがでかいことは以前にもお話ししたけれど、実際おねえさんの顔よりも大きいのである。
でかいのは図体だけではなく、ときどき脱糞して芸術作品を汚すこともあるのだから態度もまたでかい。困ったやつである。
うわさには聞いていたけれど、旧くしろデパートが取り壊されて、景色は一変していた。
方向は逆だが、この写真は2002年4月27日に撮影したもの。この一ブロックがそっくり消滅したのである。これからどうなるのか注目したい。
なお写真右手、丘の上に見える白い塔は、たしか釧路気象台の施設だったと思うが、気象台も今は合同庁舎に移転している。14年も立てばずいぶん変るものだ。
このあとは歓楽街のあたりを行ったり来たり、でたらめなコースで歩き回った。それはそれでおもしろいのだが、人影の少ないのはちょっとさびしい。大都会の雑踏が恋しくなるのはこういうときである。
知らぬ間にこんなお店ができていた。入口の上にでんと飾られているブタがおもしろい。
横文字で Porker というお店なのだが、食用に太らせた若いブタ、あるいは一般に食用ブタのことをいう。で、そのブタの顔がポーカー・フェイス……これはウソだから信用しないように。
全国的に定員に満たない私立大学が増えているらしいけれど、こちらの大学は健在であった。
この一角はほとんど変っていなかった。何度来ても、ついみとれてしまう(笑)。
こういう景色にモダニズムを感じるぼくは、センスが半世紀以上ずれているのかもしれない。
ほかにもいくつか写真を撮ったのだが、軽蔑されそうだから(笑)割愛するとして、しめくくりはいつものマネキンのおねえさん。
おねえさんの服装に季節感がよく表れているので、町にくるたびに拝見しているのだ。ちゃんと冬支度をしているので一安心(それにつけても気の毒なのは、幣舞橋の裸体像である)。
……とまあ、こんな呑気な駄文を書いていると、おまえちっとも改心していないじゃないか、とお叱りを受けそうだが、けっしてそうではない。
ある別の作業(いずれふれるつもりだが)と並行して、少しずつ読んでいる『怒りの葡萄』もやっとエンジンがかかりはじめ、今日はちょいとはかどった。
日銀の短観ではないが、ぼくの錆びついた頭脳もゆるやかな回復基調にあるのだ……てなことをいうと、ますます信用されないか(笑)。
Comments
「怒りの葡萄」いい作品ですね。スタインベック。今の日本人みんなが読めばいいのですが、当時の米国と違って、現在の日本は、食べ物もあるし、とりあえず裕福なのでピンと来ないかも。裕福の中の貧困も結構な社会問題ですが。それにしても幣舞橋のお姉さん、可哀想ですね。私が暖めてあげてもいいのですが。
Posted by: トニー | December 06, 2016 11:03
>トニーさん
『怒りの葡萄』は発表当時多くのアメリカ人にショックを与え、スタインベックは保守派からコミュニストだとして散々非難を浴びたそうです。
作品中にもふれているように、そういう非難は原因と結果を取り違えた議論ですね。左翼思想を持った結果として世の不正をあばくわけではなく、農民の悲惨を目の当たりにして、人間として当然の怒りを覚えるわけですから、右だ左だという単純な話じゃありません。
> 私が暖めてあげてもいいのですが。
え~、橋の上には四体の裸像があります。すべて暖めたころには、トニーさんは凍死しているかも……(笑)
Posted by: 薄氷堂 | December 06, 2016 18:13