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November 04, 2016

Daily Oregraph: 20世紀はむずかしい

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 本日の生存証明写真は、知人から米町へ上る坂の途中から見た、石炭列車の終点付近。

 夕方までにかなり弱まったのとはいえ、冷たい風が容赦なく吹きつける。そろそろ手袋を用意しなくてはならないようだ。

 一昨日『アイヴァンホー』をやっと読み終えた。途中浮気をしたせいで時間がかかったのである。

 主人公はもちろんアイヴァンホー(Ivanhoe)なのだが、正確にはアイヴァンホーの領主ウィルフレッド(Wilfred)。紀州の殿様を紀州様と呼ぶようなものだろう。獅子心王リチャード一世(Richard the Lionheart)の寵臣である。

 真田十勇士みたいなロビン・フッド(Robin Hood)一味も活躍するし、柳生石舟斎のような団長に率いられるテンプル騎士団も登場し、波瀾万丈のチャンバラ小説といえないこともない。やや大仰な表現やメロドラマみたいな場面もあるけれど、作者ウォルター・スコット(Walter Scott)は教養の高い人物なので、全体にたいへん格調が高い。

 面倒くさいから(笑)あらすじは省略するが、被征服民であるサクソン人とノルマン人との対立を縦軸に、ユダヤ人差別の問題や、リチャード一世の弟ながら王位簒奪をもくろむジョンの暗躍などがからまって、物語は展開する。

 ノルマン人はサクソン人を豚とさげすみ、ノルマン人、サクソン人の双方ともユダヤ人を犬とののしる、という構造なのだが、実はこの小説の陰の主人公は絶世の美女であるユダヤ人レベッカ嬢(Rebecca)なのだから驚く。ただ美人であるだけでなく、頭脳明晰にして医術に長じ、しかも博愛の精神に富み、窮地に陥っても絶対にへこたれないという、非の打ち所がない女性として描かれている。

 それならアイヴァンホーはレベッカと結婚するかというと、結局はサクソン王家の血筋である美女ロウィーナ(Rowena)と一緒になるわけで、この結末には当時の読者もおおいに不満を抱いたらしい。

 この小説をネタにすればいくらでも記事になるけれど、残り時間の少ない身としては先へ進まなくてはいけないから、このへんにしておこう。岩波文庫に翻訳があるそうなので、お暇な方はぜひ。

 さて昨日からはスタインベック(John Steinbeck)の『怒りの葡萄』(The Grapes of Wrath)に取りかかった。舞台がいきなり20世紀のアメリカに移ったため、頭の中は大混乱(笑)、文章のわかりにくさといったらない。

 お勉強にもなるだろうから(?)一例を挙げると、"be tractored out"なんて表現がある。ふつうの辞書を引いたって出てこないけれど、これは大農場主がトラクターを導入したため、不要になった小作人が追い出されることをいう。

 そのトラクターがキャタピラー(Caterpillar)社製だから、略して"cat"だとはお釈迦様でもすぐにはわかるまい。ネコ一匹ではなく、「キャット一台("one cat")で十家族が追ん出される」というんだから、1819年に書かれた小説よりもむずかしく(笑)、時間がかかってしかたがない。やれやれ。

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Comments

そちらはもう冬の兆しが訪れているようですね(少なくともこちらの基準でいえば)。

私は・・・7~8世紀でも充分に難しくちんぷんかんぷんなのですが、それから1300年・・・・世の中、だいぶ難しくなってきているのですね。

Posted by: 三友亭主人 | November 04, 2016 at 22:34

>三友亭さん

 朝から雪です。少し積もるかもしれません。ほんとに寒くなりましたよ。

 さて古典ともなれば、大勢の学者さんが寄ってたかって(失礼)重箱の隅をつついていますから、データが蓄積されています。

 ですから難語の意味はもちろん、ここは聖書のどこそこを見ろとか、これは誰それの作品の引用だから参照せよ、などとおおいに参考になります。

 現に『アイヴァンホー』の巻末には、原作者自身の注のほかに、編者の丁寧な注が完備しています(特にラテン語なんぞは注がなければお手上げ(笑))。

 ところが『怒りの葡萄』には注釈がゼロ。トラクターはサ変活用するし(?)、cat はネコじゃないし、読み手の想像力と根気が試されます。

 まあ、ボケ防止の役には立つかも……?

Posted by: 薄氷堂 | November 05, 2016 at 08:50

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