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August 20, 2016

Daily Oregraph: チャレンジャーとチャンピオン

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 『アイヴァンホー(Ivanhoe)』の舞台設定は、日本でいえば鎌倉時代。だから単語も古い意味で使われていることが多い。

 今日は馬上槍試合(ティルティング tilting)について、ちょっとだけ。これは鎧に身を固めた騎士が馬にまたがり、一対一で激突するというもので、このようにガチンコでぶつかり合うことがショック(shock)本来の意味。

 さてこの小説に登場するティルティングの大会(トーナメント tournament)のあらましはこうである。

 競技は柵で囲まれた競技場(これをリスツ lists というが、この list は本来「境界」の意味)で行われ、観客席がそれを取り巻く。会場の南北両端入口の外には選手控えがある。

 南側には主催者側の騎士五人がそれぞれ天幕を構えて、その前に紋章入りの盾を置く。北側にしつらえた囲いに控える一般参加の騎士は、一人ずつ五つの天幕の前の盾から一つを選び、それを槍でつつくことによって相手を決める。なお槍のどちら端でつつくかによって、真剣勝負か模擬戦かどうかを宣言することになっている。

 両者槍をまっすぐに構え、馬を走らせて激突し、槍の当てどころを誤ったり落馬したりすると負けになる。一騎打ちの敗者は、痛い思いをした上に、甲冑一式と乗馬を勝者に取り上げられるのだからたまらない。

 大会初日は一騎打ち(この日の優勝者にミス大会指名権が与えられる)、二日目は同数の二組に分れて戦い、全員の戦いぶりを見て主催者がもっとも優秀な一人を選び、ミス大会が賞品を授与する。三日目は競技を行わず、牛いじめ(ブル・ベイティング bull-baiting。犬をしかけて牛をいじめる)など人気の各種アトラクションが開催される。

 大体のところはおわかりいただけたと思うが、ぼくも実際に見物したわけではないから(笑)、細かいところは質問されても困る。娯楽の少ない時代ゆえ、おびただしい数の見物が集まったらしい。

 さて本題に入ろう。

 原文では主催者側の五人の騎士がチャレンジャー(challenger)、かれらに挑む参加者側がチャンピオン(champion)とされている。おや? ぼくらの感覚からすれば、反対じゃないかと思うのがふつうだが、なにしろ鎌倉時代の話だから、ちょっと考えてみよう。

 チャレンジャーというと、「先生に一手御指南いただきたい」という諸国武者修行中の蓬髪ヒゲもじゃの剣術使いを連想するけれど、もし「おれが相手になるから、勝てるものならかかってこい」という達人がいたとすれば、それもまた挑戦の一種だから、やはりチャレンジャーである。

 次にチャンピオンだが、この単語のもともとの意味は「戦士、勇士」(OEDの第一義は "A fighting man, a combatant; a stout fighter, a man of valour. ")だから、なるほどと納得できると思う。

 というわけで、めずらしくタメになる記事を書いたけれど、受験勉強の参考にはなるまいと思う。結局のところ、なんの役にも立たぬブログなのでありました。

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