薄氷堂 Smoking Room

　この時間に幣舞橋を渡るからには、ははあ、あいつ相手がみつかったので一杯やるつもりだな……とまあ、このマイナーなブログの読者諸氏ならそう推理されることだろう。

　しかしそれでは当り前すぎておもしろくない(笑)。本日のテーマは節制なのである。

 
　ひょっこり釧路に現れた旧友Ｔ君の注文はこれ。釧路育ちだけに、「スパカツ」とただ一言、椅子に座りがけにオーダーした呼吸はみごとであった。

 
　ぼくはこちら。どこのお店のなにといわなくても、釧路人にはわかるのだからすごい。

　いつもなら二人とも一杯どころか何杯でもグイグイ飲むのだが、Ｔ君は現在酒を飲めぬ気の毒な境遇にあるから、ぼくもビールをぐっと我慢したのである。

　このあと喫茶店に入って歓談数刻。アルコールが入らなくとも話は弾むのだから、それもまたよし。

 
　飲み屋に向かう人々の群れを冷ややかに見て(笑)、

 
おねえさんたちの誘惑には目もくれず、

 
しかしこの看板にはおおいに感心した。本日の広告大賞だな。

　「うちの母さん」はちょっと色気ありすぎであって、思わずふらふらと暖簾をくぐりそうになったが、我慢、我慢。今日は節制の日なのだ。機会があったらお邪魔することにしよう。

 「告　発泡酒じゃないよ」という文句がまた泣かせる。庶民がまがいもののビールを飲まざるをえないという、世界的にも貧乏くさく恥ずかしい国にした、政治家や高級官僚たちはこのセリフを噛みしめるがいい。

　さてすべての誘惑に打ち勝ち、徒歩で帰宅したぼくは、もちろんウィスキーを飲みながらこれを書いている。

　そういえばＴ君も別れ際にいっていた。

　－もうすぐ体調もよくなるから、次に会ったときは飲もうぜ。

　そうだよ、そうこなくちゃ。節制なんてつまらない(笑)。