Daily Oregraph: ドリトル先生は月へ、ロビンソンは海へ
写真は南新埠頭。今日の記事とはなんの関係もない(笑)。
さて毎度のことだが、どうでもいい話を。
ドリトル先生は、モスラみたいな蛾の背中に乗って、無事月に到着した。先生はこの冒険を成功させるために、苦労して昆虫語を勉強したのである。
ご存じのとおり、昆虫の成虫は寿命がたいへん短い。それなのに人間との会話が成立するだけの言語能力や一般常識(?)を備えているというのはふしぎだが、作者は技術者だけにちゃんと答を用意している。
つまり先祖伝来蓄積された記憶を成虫になるまでの間に自然と身につけるというのだが、このあたり『ドグラマグラ』の「胎児の夢」を連想させるところがある。人間もそれ式に学習できると便利だけれど、そうは問屋が卸さない。
言語だってスピードラーニング式になんの苦労もなく習得できるものではなく、滑稽ないいまちがいを繰り返しては訂正され、一人前になるには何年もの学習が必要なことは、幼児を見ればよくわかる。
だからドリトル先生も動物語をマスターするまでには相当苦労したはずで、朝から晩まで吠えたり唸ったりさえずったり、とてもまともな人間のすることではないから、精神病院に押しこめられてもおかしくはないところだ。実際本文中に、先生は「人から crook(ペテン師)呼ばわりされる」と書かれている。
それでも動物と会話したいというあなたに朗報がある。聞耳頭巾を手に入れるというような無茶な話ではなく、われらが南方熊楠先生によると、欧州の古話には「蛇を食えば鳥語を解する」とあるらしい。鳥語が聞き取れれば、犬猫語もやがてマスターできるにちがいない。
なんでも食わせるゲテモノ屋があると聞いたこともあるし、漱石の『猫』には、たしか迷亭君が山家で蛇飯を食う話があるから、東南アジアまで出かけなくとも、日本国内で食えないことはないだろう。どうかお試しあれ。
ドリトル先生が地球を去ったので、お次は『ロビンソン・クルーソー』を読むことにした。昔々こども向けの翻訳を読んで以来である。ぼくはまだ蛇を食っていないから、読むのに時間がかかるのはしかたがあるまい。
これ、案外おもしろい。まだ読みはじめたばかりだが、大時化に襲われた船の描写が真に迫っている。とうとうメインマストまで切り倒してしまったところ。さてこれからどうなりまするや。
写真は出港する巡視船「えりも」。大時化などとはとんでもない、ご安航を祈る。
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